“最強対決”序盤2戦は意外な凡戦に=上原&田沢、第3戦以降はさらなる消耗戦

杉浦大介

“悪夢の7回表”第2戦は痛恨の逆転負け

ブルペンが崩れまさかの逆転負けで1勝1敗となったレッドソックス、その中でも上原は9回イニングを完ぺきに抑えた 【写真は共同】

 レッドソックスにとって、まさに“悪夢の7回表”だった。
 1勝0敗で迎えた米国時間10月24日のワールドシリーズ第2戦も、7回まで2対1でカージナルスをリード。19回連続無失点を続けていた相手の先発マイケル・ワカを6回裏についに捉え、デビッド・オルティスの2点本塁打で逆転に成功した。
 本拠地フェンウェイパークは当然のように大爆発。最高潮のムードの中で、終盤はクレイグ・ブレスロー、田沢純一、上原浩治の救援トリオの力で逃げ切り、レッドソックスが2連勝を飾るかと思われたが……

「四球と悪送球で得点を与えてしまった。今季に私たちがやって来たベースボールではない形での3失点で、相手を助けてしまった」

 試合後にジョン・ファレル監督がそう振り返った通り、勝ちパターンで迎えた7回表、ここまで完璧な投球を続けていたブレスローが大誤算となった。
 1死1、2塁でマウンドに立つと、ダブルスチール、四球、犠牲フライ後に自ら送球エラーを犯して逆転を許し、その後にカルロス・ベルトランにも適時打を献上。打たれるのは仕方ないにしても、シーズン中の打率.238だったダニエル・デスカルソへの四球と慌てた上の失策は完全に余計だった。ここで同じく強力ブルペンを誇るカージナルスに2対4とリードされ、ボストンのお祭りムードが奇麗に霧散してしまったのは止むを得なかったろう。
 ブレスローの後に登場した田沢は打者1人を、上原は9回の1イニングをパーフェクトに抑えている。それだけに、この試合前まで今プレーオフでの7戦で失点ゼロと絶好調だったブレスローの自滅が悔やまれる。

 レッドソックス選手たちは「次に勝つだけ」と口を揃えたが、地元で“勝利のシナリオ”が崩れた上での敗戦が痛くないはずがない。シリーズを終えた後、“流れが変わった分岐点”として第2戦の7回表が語られることにならないと良いが……

歴史的名勝負に発展して行く可能性も

 ともあれ、これでシリーズは1勝1敗。「ミスが出た方が負けるという2試合だった」という上原の指摘通り、2013年ワールドシリーズ最初の2戦は凡プレーのオンパレードとなってしまった感もある。
 第1戦ではカージナルスの大黒柱アダム・ウェインライトが絶不調だった上に、守備陣も3エラーを含む考えられないミスを連発。激戦が続いた今プレーオフでは異色に思えるほど大味な流れで、8対1でレッドソックスが圧勝した。
 今夜の第2戦は引き締まった好試合ではあったが、前述通りに決勝点はエラーで記録されたもの。少なくともこれまでのところ、“最強対決”という戦前の触れ込み通りのハイレベルな内容になっているとは言い難い。1999年以来となる最高勝率チーム同士の最終決戦への前評判は高かっただけに、ファンから落胆のため息が漏れても仕方ないだろう。

 ただ、そうは言っても、シリーズが歴史的名勝負に発展して行く期待が消え失せたわけではない。
 レッドソックスの主砲デビッド・オルティスは2試合で打率.667、2本塁打、5打点と爆発し、元気印のダスティン・ペドロイアも通算3安打と上昇機運に乗っている。カージナルスの怪童ワカはオルティスの一発を除けば圧巻の投球で実力を証明し、抑えの切り札トレバー・ローゼンタールは第2戦では平均97.2マイルの速球でファンの度肝を抜いた。両軍の注目選手はそれぞれ存在感を誇示し、今後の展開に期待を持たせている。

 さらに、第1戦で脇腹を負傷したベルトランは以降の出場が危ぶまれ(結局は第2戦もプレーして2安打)、グローブに異物が付着した写真が出回ったジョン・レスターの不正投球疑惑もニュースになった(レスター本人はロージン以外の使用を否定し、MLBも問題なしの姿勢)。このようにフィールド外の話題が豊富なことも、ドラマチックな展開を予感させる要素と言って良いだろう。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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