カシージャスはレアルを退団するのか?=禁断のバルセロナ移籍の可能性を問う

移籍先はバルセロナが最有力?

代表でも正GKの座が揺らぐカシージャス(写真中央)。移籍先の候補としてライバルのバルセロナが上がっている 【Getty Images】

 定位置を失って半年以上が過ぎた現在、カシージャスは長らくキャプテンを務めてきたスペイン代表でも正GKの座を失いはじめている。しかもワールドカップ予選が終了した今、ブラジルでの本大会までに残されたプレーの場は数度の親善試合しかない。

 加えてクラブ内では少なくない幹部との関係が悪化し、ファンの中にも少数派ではあるがディエゴ・ロペスを支持する声が出てきている。こうした状況は9歳からレアル・マドリー一筋でプレーしてきた彼にとって初めての経験、ゆえに彼は早ければ12月にも他クラブへ移籍することを検討し始めたのである。

 カシージャスの移籍先はバルセロナかもしれない。そんなばかげた報道も、徐々に現実的な可能性として語られて始めている。もちろんレアル・マドリー生え抜きのキャリアとクラブへの愛情が“禁断の移籍”を妨げる大きな障害にはなるだろう。だが逆に言えば、それ以外にカシージャスのバルセロナ行きを否定すべき理由が見つからないのも確かだ。

 第一にバルセロナの守護神ビクトル・バルデスは契約満了を迎える今季終了後にクラブを去り、ASモナコかプレミアリーグのビッグクラブと契約することが確実視されている。つまりバルセロナは、バルデスと同レベルのGKの補強を急務としている。

 シャビ・エルナンデスやカルレス・プジョルらとの親しい仲も、カシージャスをバルセロナに近づける要素の1つだ。直接対決のたびに両チーム間の緊張が高まっていた数年前、カシージャスは2人に直接電話をかけ、和解を呼びかけた。戦略的にライバルとの対立関係を煽っていたモリーニョの逆鱗に触れたその行為により、彼はスペイン代表メンバーの人間関係にひびが入るのを防いだのである。

移籍が実現すればフィーゴ以来の衝撃に……

 またカシージャスのバルセロナ移籍は、ペレスに致命的なダメージを与えることも意味する。レアル・マドリーの象徴的存在を宿敵に譲るようなことがあれば、ペレスは自身が2000年の会長就任時にバルセロナからルイス・フィーゴを獲得した際の衝撃に匹敵する激しいバッシングを受けることになるはずだ。

 実際、『マルカ』がウェブサイトで行ったアンケートでは、45%にも及ぶ読者がカシージャスの移籍先をバルセロナを予想していた。それはすでに多くのファンがカシージャスのバルセロナ移籍とその後に味わうだろう感情を、現実に起こり得る恐怖として認識し始めていることを表している。

 こうした状況下で迎える現地時間26日のエル・クラシコ(伝統の一戦)は、前節に両チームの勝ち点差が縮まったことも含め、さまざまな意味で注目を集める一戦となるはずだ。

 カンプノウの観衆がどのような形でカシージャスを迎え入れるのかは分からない。はっきりしているのは、いまだベンチ生活に慣れる気配のない彼が再びベンチから不安そうに戦況を見つめるだろうことだけだ。

<了>

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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