波乱なし、箱根路決めた「戦略と準備」=元東海大エース・佐藤悠基が予選会を解説

構成:スポーツナビ

予選会と本戦、異なる3つのポイント

エース・村山(写真)が日本人トップの4位に入った城西大。予選通過も例年なら落選ラインの10位という結果だった 【写真は共同】

――その一方で、本戦も予選会もよく知っている城西大、上武大がそれぞれ10位、11位。例年なら落選している順位です。

 この2校は予選会のことをよく知っている監督さんが指導をされています。今回、振るわなかった要因は、やはり10人をしっかりそろえることができなかったことでしょう。上位の何人かはしっかり走れていたと思いますが、7番目以降の選手や、故障を抱えたまま走らせた選手が振るいませんでした。何か大きなアクシデントがあってこの順位ではなく、その前の準備の段階からこの順位は考えられたのかな、と。そういったチーム状況の中での予選会だったのではないかと思います。

――本戦出場87回を数える中央大も12位とぎりぎりの通過となりました。実力通りならもっと上位に入っていてもおかしくないですが?

 主力選手が夏に故障をして出遅れているという話を聞いたので、夏場にしっかりトレーニングができていなかったとか、万全なチーム状態ではなかったのかなと思います。


――佐藤選手自身も85回大会で予選会を経験されています。予選会と本戦の違いはどこにあるのでしょうか?

 予選会ではチームメートと一緒に集団で走れますが、本戦では周りも助けてくれないし一人で走らないといけないというのもあります。レースの流れとか、前も後ろも選手がいない中でたすきをもらう場合もありますので、そういった点では、予選会とはすごく異なってくると思います。
 特に本戦が予選会と違うのは、鍵となってくる区間があることです。具体的には、前半の要となる2区、それから5区が、流れを大きくつかむ鍵になります。その区間で出遅れてしまうとかなり痛いですね。
 また、エースがしっかりしているチームの方が、全員が横並びの力を持ったチームよりも、本戦では流れには乗りやすいと思います。

「箱根駅伝の先には大きな世界が広がっている」

――前回大会は、日本体育大が予選会から本戦での総合優勝を果たしました。今大会でも、予選会から本戦の上位に食い込む大学が出てくる可能性は?

 前回の日本体育大はなかなかレアなケースだと思います。例年で言うと、予選会をトップで通過したチームはシード圏内に入るか入らないかのラインにいるかな、と。うまくいけば5位、6位を取る力はあるのではないかと思います。
 本戦では、やはり駒澤大、東洋大が中心になってくると思います。選手の能力もみんな高いですし、優勝経験も豊富ですから。

――母校・東海大に期待したいことは?

 本戦に出るからにはシード権を目指すというのもあると思いますが、まずは自分たちの力をしっかり出し切れるように走ってもらいたいですね。今回のオーダーを見る限りは若いチームです。箱根駅伝の本戦でしか経験できないことを、個人個人の力の向上に役立ててもらって、何年後かにはしっかり優勝争いができるチームになってほしいなと思います。

――最後の質問です。昨年はロンドン五輪、今年はモスクワ世界陸上に出場されました。箱根駅伝が世界の舞台で戦う今のご自身に与えた影響とは何でしょうか?

 大学時代には箱根駅伝という大きなモチベーションがありました。箱根駅伝を目指すことによって自分の能力が向上してきたと思いますし、それが今につながっているのではないかと思います。
 選手一人一人の最終目標は違うとは思いますが、箱根駅伝が終着点ではなく、その先に大きな世界が広がっています。若い選手の皆さんには、箱根駅伝や大学駅伝をうまく利用して自分の能力を向上させて、もっと広い世界を見てほしいなと思います。

<了>

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