デニムアンドルビーに乗せる角居師の夢=秋華賞直前インタビュー

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秋華賞の前哨戦ローズSを制したデニムアンドルビー。オークス以来の実戦、過酷な重馬場にもかかわらず、最後方から差し切った 【netkeiba.com】

 過酷な重馬場をものともせず、秋初戦のローズステークス(GII)で勝利を飾ったデニムアンドルビー。混戦模様の3歳牝馬戦線において、完全に一歩抜け出した形だ。管理するのは、数多の名牝を世に送り出してきた角居勝彦調教師。これまでの戦績を冷静に振り返りつつ、秋華賞(GI)への勝算、そしてデニムアンドルビーに懸ける熱い思いを語る。(取材・文/不破由妃子)

秋華賞の前哨戦、重馬場で勝利

 水が浮くような重馬場で行われた、第31回ローズS。正午過ぎから降り出した雨は、レースが近づくにつれ、その激しさを増していった。レースは、菱田裕二騎手騎乗のピクシーホロウがハナを奪い、1000メートル通過58秒2という、馬場を考えればかなりのハイペースで展開された。そんな中、勝ったのは一番人気デニムアンドルビー。スタートで出遅れて、道中はポツンと最後方から。追い込み勢での決着になったとはいえ、道中で徐々にポジションを上げ、最後はきっちり半馬身、差し切ってみせた。

「内田(博幸)さんには『ある程度、いい位置につけていきましょうね』という指示を出して、彼もそのつもりでいてくれたんですけど、ゲートが開いた瞬間、まったく意味のない指示になってしまった(笑)。仕掛けられても進んでいかないということは、彼女なりの“ポジション”があるんだな、と思いましたけどね」

 と、柔和な笑顔を浮かべながら、前哨戦を振り返った角居。とはいえ、小柄な3歳牝馬にして、オークス以来の実戦が究極の重馬場。長く脚を使ったレースぶりを含め、その消耗度が気になるところだ。

「思いのほか、ダメージはないようでした。レース後の体を見ても萎んでいるところはありませんし、むしろ柔らかさが増しているような感じです。一番疲れたのは内田さんじゃないかな(笑)。なにしろ、1000メートルくらい追いっぱなしでしたからね。馬自身の状態は、決して順調とは言えなかった春に比べ、理想通りに調整できています」

2戦未勝利も……C・デムーロが絶賛

 角居が言う「順調とは言えなかった春」の根底には、そのローテーションがある。デニムアンドルビーがデビューしたのは、明け3歳の2月。初戦で勝利を飾っても、クラシックに間に合うかどうかのギリギリのラインだ。

「北海道にいるころは、常に『順調です』という報告を受けていたんですが、いざ入厩という段階になって、なかなか状態が上がってこなかったんですよね。確か、食いが細くなって馬が大きくならないとか……そんな状態だったと思います。それで思ったより時間がかかって、デビューもズレていって。でも、北海道にいるころから『能力はありそうだ』ということで、僕も楽しみにしていた一頭でした」

 実はデニムアンドルビー、当初はヒアズトゥユーという馬名だったという。しかし、金子真人オーナー(登録名は金子真人ホールディングス)は、直前になって馬名変更に踏み切った。

「とても親しくされているご友人から提案されたということで、“デニムアンドルビー”にしたいと。オーナーの期待度が、どんどん高まっているのを感じましたね」

 迎えた新馬戦は、中団追走から直線でグイグイ伸びるも、半馬身差届かずの2着。中2週で迎えた2戦目も、ゴール前で猛然と伸びたが、クビ差及ばずの2着に終わった。

「あれ? という感じでしたね。初戦も2戦目も、もっとビシッと決めてくれるのかと思っていましたから。今思えば、食いが細かったことで、軽め軽めの調整になってしまっていたことが影響したのかもしれませんね」

 3戦目の未勝利戦では、それまでの福永祐一に替わり、クリスチャン・デムーロが騎乗。後に聞いた話によると、調教にまたがった段階で、イタリアの若きリーディングジョッキーは「この馬、オークス勝てるよ」と、絶賛したという。

「そうそう、そんなこともありました。そのときは、『俺、この馬ずっと乗るから』って言ってましたね(笑)。僕自身、背中の感触や状態を確かめるためにまたがることはありますが、実際の調教で乗ることはないので、クリスチャンの評価を聞いて、“走り出したときの雰囲気が、よほどいいんだろうなあ”って思いましたね」

 能力の片鱗を見せていたとはいえ、その時点ではまだ未勝利。オークスは3着だったとはいえ、クリスチャンの慧眼には感服するばかりだ。

「僕自身は、あくまでも(クラシックには)間に合えば……という感じでしたね。やはり、馬の成長が伴うこと、それに故障しないことが大前提ですからね。でも、このころからどんどん飼い葉を食べるようになって、体も大きくなっていったので、調教で負荷をかけても大丈夫になったのは確かです」

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