王道の投手力・阪神vsゴロ率が武器の広島=データで見るセCSファーストS展望
投手力が勝敗を左右する可能性
セ・リーグCSファーストステージ、阪神vs.広島はともに投手陣に力があり、勝敗の鍵を握りそう。特に広島投手陣のゴロ率の高さが注目だ 【写真は共同】
阪神投手陣の強みは奪三振が多く、与四球が少ないことだ。データを見ると、チームの奪三振率(9イニングあたりの奪三振数)が7.21でリーグ2位、与四球率(9イニングあたりの与四球数)が2.78でリーグ1位。この2つは、野手の守備力など周りの環境に左右されないため、投手が失点を防ぐ上で非常に重要な要素とされている。奪三振率が高いメッセンジャー(8.39)や藤浪晋太郎(8.24)、与四球率が低い能見篤史(2.04)らを擁する阪神投手陣は、データから見ても優秀と言えるのだ。
広島投手陣の武器は“ゴロ率”
だが、広島投手陣には大きな“武器”が存在している。下記のデータを見てほしい。
【投手がゴロの打球を打たせた割合】(ゴロ打球数÷総打球数)
広島 51.2%
巨人 49.2%
阪神 48.1%
中日 47.1%
ヤクルト 45.0%
DeNA 43.6%
これは、各チームの投手陣が、相手打者にどれだけゴロを打たせたかを表したデータだ。結果的にアウトになったかヒットになったかは加味せず、あくまでその打球の種類(ゴロ・フライ・ライナー)のみを評価している。広島投手陣は、この数値がセ・リーグで最も高い。つまり、チームとして最も多くゴロを打たせている。では、ゴロを多く打たせることのメリットとは、何なのだろうか。
打球管理と打球処理の相乗効果
データで比較すると、フライ・ライナーと比べ、ゴロの方がアウトになる割合が高い(拡大してご覧ください) 【データ提供:データスタジアム株式会社】
つまり、投手にとってゴロを多く打たせることは、たとえ三振が奪えない中でも、失点のリスクを回避することにつながるのだ。「打たせて取る」、これが広島投手陣の“武器”である。
特に前田健太、バリントン、大竹寛、野村祐輔の先発4人はゴロを打たせる能力が高い。ゴロを打たせた割合の個人ランキング(規定投球回以上)では、何とセ・リーグのトップ5にこの4人全員がランクインするのだ。前田健以外はそれほど多く三振を取れる投手ではないが、ゴロを打たせることで、失点のリスクを回避していると考えられる。
また、投手がゴロを打たせることは、後ろを守る内野手の守備力が高いと、よりいっそう効果を発揮する。いわば、投手の打球管理(=ゴロを打たせること)と内野手の打球処理(=ゴロをアウトにすること)の相乗効果だ。近年ではパ・リーグの日本ハムがこれをうまく利用し、成功を収めてきた。
ただ、広島の内野陣と言えば、菊池涼介や堂林翔太らの失策の多さについ目がいってしまい、あまり守備がうまいイメージはないかもしれない。しかし、「ゴロの打球をどれだけアウトにしたか」という客観的なデータから見た場合、実は広島はリーグ平均73.9%よりも高い数値75.0%を残している。失策の多さは、打球を処理する機会の多さや、守備範囲の広さの裏返しと考えた方がいいだろう。
以上のように、広島は投手陣がゴロを多く打たせることで、失点を防いできたチームと言える。投手力の王道をいく阪神と、投手と野手の相乗効果で失点を防ぐ広島。CSファーストステージには、そんな構図も見え隠れしている。
<了>
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