王道の投手力・阪神vsゴロ率が武器の広島
データで見るセCSファーストS展望

投手力が勝敗を左右する可能性

セ・リーグCSファーストステージ、阪神vs.広島はともに投手陣に力があり、勝敗の鍵を握りそう。特に広島投手陣のゴロ率の高さが注目だ
セ・リーグCSファーストステージ、阪神vs.広島はともに投手陣に力があり、勝敗の鍵を握りそう。特に広島投手陣のゴロ率の高さが注目だ【写真は共同】

 あす12日から始まるクライマックスシリーズ(CS)・ファーストステージ。セ・リーグはレギュラーシーズン2位の阪神と、16年ぶりのAクラス入りを果たした同3位の広島が対戦する。今季レギュラーシーズンでの同対戦は、1試合あたりの両チーム合計得点が6.0点と、セ・リーグ全対戦カードの中で最も少なかった。どちらか一方のチームが8点以上取った試合は、全24回の対戦でわずか2回だけ。両チームとも投手陣の高いパフォーマンスが光るだけに、投手力が勝敗を左右する可能性がある。


 阪神投手陣の強みは奪三振が多く、与四球が少ないことだ。データを見ると、チームの奪三振率(9イニングあたりの奪三振数)が7.21でリーグ2位、与四球率(9イニングあたりの与四球数)が2.78でリーグ1位。この2つは、野手の守備力など周りの環境に左右されないため、投手が失点を防ぐ上で非常に重要な要素とされている。奪三振率が高いメッセンジャー(8.39)や藤浪晋太郎(8.24)、与四球率が低い能見篤史(2.04)らを擁する阪神投手陣は、データから見ても優秀と言えるのだ。

広島投手陣の武器は“ゴロ率”

 では、対する広島はどうか。同じように2つの指標で測ってみると、奪三振率がリーグ平均6.81を下回る6.39で5位、与四球率がリーグ平均3.25とほぼ同じ3.21で3位だった。データを単純に比較すれば、阪神投手陣の方が広島投手陣よりも優れているように見える。


 だが、広島投手陣には大きな“武器”が存在している。下記のデータを見てほしい。


【投手がゴロの打球を打たせた割合】(ゴロ打球数÷総打球数)

広島   51.2%

巨人   49.2%

阪神   48.1%

中日   47.1%

ヤクルト 45.0%

DeNA 43.6%


 これは、各チームの投手陣が、相手打者にどれだけゴロを打たせたかを表したデータだ。結果的にアウトになったかヒットになったかは加味せず、あくまでその打球の種類(ゴロ・フライ・ライナー)のみを評価している。広島投手陣は、この数値がセ・リーグで最も高い。つまり、チームとして最も多くゴロを打たせている。では、ゴロを多く打たせることのメリットとは、何なのだろうか。

打球管理と打球処理の相乗効果

データで比較すると、フライ・ライナーと比べ、ゴロの方がアウトになる割合が高い(拡大してご覧ください)
データで比較すると、フライ・ライナーと比べ、ゴロの方がアウトになる割合が高い(拡大してご覧ください)【データ提供:データスタジアム株式会社】

 ゴロの打球は、フライやライナーに比べてヒットになりづらい性質がある。実際に今季のセ・リーグにおいて、それぞれの打球がヒットになった割合を見てみると、ゴロが23.6%、フライが30.9%、ライナーが77.3%(厳密にはフライは内野フライと外野フライを区別して考える必要がある)。しかも、フライやライナーは外野の間を抜けたり、頭上を越えたりと、長打になる危険性が高い(フライ・ライナーの全打球のうち16.1%が長打)。一方、ゴロはヒットになってもそのほとんどが単打で済む(ゴロの全安打のうち95.8%が単打)。基本的にレフト線かライト線といった限られたゾーンを抜けないと、長打にはならないからだ。


 つまり、投手にとってゴロを多く打たせることは、たとえ三振が奪えない中でも、失点のリスクを回避することにつながるのだ。「打たせて取る」、これが広島投手陣の“武器”である。


 特に前田健太、バリントン、大竹寛、野村祐輔の先発4人はゴロを打たせる能力が高い。ゴロを打たせた割合の個人ランキング(規定投球回以上)では、何とセ・リーグのトップ5にこの4人全員がランクインするのだ。前田健以外はそれほど多く三振を取れる投手ではないが、ゴロを打たせることで、失点のリスクを回避していると考えられる。


 また、投手がゴロを打たせることは、後ろを守る内野手の守備力が高いと、よりいっそう効果を発揮する。いわば、投手の打球管理(=ゴロを打たせること)と内野手の打球処理(=ゴロをアウトにすること)の相乗効果だ。近年ではパ・リーグの日本ハムがこれをうまく利用し、成功を収めてきた。


 ただ、広島の内野陣と言えば、菊池涼介や堂林翔太らの失策の多さについ目がいってしまい、あまり守備がうまいイメージはないかもしれない。しかし、「ゴロの打球をどれだけアウトにしたか」という客観的なデータから見た場合、実は広島はリーグ平均73.9%よりも高い数値75.0%を残している。失策の多さは、打球を処理する機会の多さや、守備範囲の広さの裏返しと考えた方がいいだろう。


 以上のように、広島は投手陣がゴロを多く打たせることで、失点を防いできたチームと言える。投手力の王道をいく阪神と、投手と野手の相乗効果で失点を防ぐ広島。CSファーストステージには、そんな構図も見え隠れしている。


<了>

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