国体で躍動した東京五輪の主役たち=日本サッカーの弱点を補う新たな可能性
技巧派が目立つようになったセンターFW
優勝したのは東京都選抜。技巧派FWの神谷(左)らが活躍した 【川端暁彦】
典型的なのは優勝した東京都選抜だろう。最前線に位置する神谷優太(東京ヴェルディユース)は、完全な技巧派タイプ。「ウチはショートカウンターのチーム」と公言したとおり、速攻から持ち込んでゴールを奪う形で優勝に大きく貢献した。遠く山形県から小学校6年生のときに「テレビで全日本少年サッカー大会のヴェルディを見て、高いレベルでやりたくなった」と、母と二人で東京まで引っ越してきた変わり種。ヴェルディ育ちらしいテクニックに加え、メンタルの強さも感じさせる好選手だった。その東京と決勝で当たった大阪府選抜の小田垣旋(ガンバ大阪ユース)も160センチの小兵ながら、しなやかな身のこなしと器用さを武器に最前線でチームに貢献し、インパクトを残した。
長崎県選抜の平野皓巴(海星高)も、166センチと非常に小柄ながら肉体的な強さと推進力があり、センターFWとしてプレーして3試合3得点。「柿谷選手の抜け出しとファーストタッチを参考にしている」と語ったとおり、素早いカウンターから存在感を発揮した。彼のように、なかなか全国大会に出てこられないチームの選手にチャンスがあるのも、国体が選手発掘の場と言われるゆえんだろう。
国体を「通過点」に更なる飛躍を願う
当たり前だが、この国体は「選手にとって通過点」(東京都選抜・奥原崇監督)である。ゴールラインではない。選手の口からも「7年後の東京五輪では、日本代表選手としてここに立ちたい」といった国体が通過点であることを認識しているような言葉が聞かれる大会だった。U−16というのは成長期のスパートが終わっていない選手も多く、発掘に適しているようでいて実は適していない時期でもある。今回の国体でメンバー入りを逃したような遅咲きの選手が出てくることも当然あるだろうし、あってもらわなくては困る。また次の舞台で、“東京五輪世代”の活躍と飛躍を見ることができればと思っている。
<了>