国体で躍動した東京五輪の主役たち=日本サッカーの弱点を補う新たな可能性
7年後の東京五輪で主役となる世代
現状の日本サッカーに足りないポジションといわれるCBだが、庄司(写真)など大柄な選手の活躍が目立った 【川端暁彦】
国体は“国内版五輪”とでも言うべき大会で、多種多様なスポーツが都道府県対抗の形式をとりながら実施されている。プロの出場は制限されていることもあり、競技によって大会の位置付けは大きく異なる。サッカー競技は「成年男子」、「女子」、「少年男子」の3部門に分かれて催されており、このうち「少年男子」は「U−16(16歳以下)」という制限の下で行われている。そして現在「U−16」のカテゴリーに当てはまる選手たちは、7年後の2020年東京五輪において「U−23」のカテゴリーに該当する選手たちとなる。五輪の男子サッカーはまさに「U−23」という年齢制限下で行われる大会。つまり、この国体は“東京五輪世代”の大会だったわけだ。
もともと都道府県選抜単位で争われる国体は、日本サッカー協会が長年整備を続けてきたトレセン制度と密接にリンクし、選手発掘の場として活用されてきた歴史がある。年齢制限が日本の学制に沿った4月基準ではなく、FIFAのルールに沿った1月基準(今年で言えば、1997年1月1日以降に生まれた選手)となっているのも、この場が選手発掘のためにあるからこそ。
今回も日本サッカー協会はもちろん、Jクラブ、そして大学のスカウトたちが大会に連日視察に訪れ、「良い選手はいないか?」と発掘に注力していた。大会自体は地元・東京都選抜が大阪府選抜を破って優勝を飾ったわけだが、チーム単位の勝敗にはこだわらず、この大会で光った選手個人について、何人かピックアップしてみたい。
大型センターバックが台頭
「ほのや」という珍しい読みの名前を持つDFは、身長184センチに堂々たる風格を備えた偉丈夫(いじょうぶ)。空中戦の強さに加えて速さもあり、右足から蹴り込むロングフィードの精度もなかなかのもの。すでにU−16、U−17の日本代表経験を持つが、クマガヤSSC(埼玉)でプレーしていた中学3年生になるまでは無名に近かった。
たまたま春休みの大会でセレッソ大阪U−18・大熊裕司監督の目にとまり、「すぐにオファーを出した」と完全に惚れ込んだ監督の熱弁にほだされ、大阪行きを決断。中学3年次にチームが主要大会で勝ち進んだこともあって最終的には多数のJクラブによる争奪戦の様相を呈したが、最初にオファーを出したC大阪行きで心は動かなかったという。大熊監督は「ウチはこれまで中盤から前の選手ばかりだった。後ろを育てたいし、その候補として何としても彼を育てたい」と語り、その言葉どおりに彼を今季開幕から忍耐強く使い続けている。
ほかにも埼玉県選抜の東伸幸(浦和レッズユース)、神奈川県選抜の板倉滉(川崎フロンターレU−18)、兵庫県選抜の山川哲史(ヴィッセル神戸U-18)といった185センチクラスのCB、コンバートされて日の浅いながら抜群の身体能力を見せた新潟県選抜の大桃海斗(帝京長岡高)、左利きで頭も“利く”京都府選抜の太田京輔(京都サンガU−18)など、「未完ながら素材感のあるCB」にチャンスを与えているチームが少なくなかったのは印象的だ。また、中学3年生ながら大人びたプレーで優勝に貢献した東京都選抜の岡崎慎(FC東京U−15深川)の名前も挙げておくべきだろう。
GKにも有望な選手がそろう
セービングだけでなく、「自信がある」というロングキックであわやアシストというシーンを演出するなど、1回戦敗退ながらベースとなる能力の高さを見せた。埼玉県選抜の加藤有輝(大宮アルディージャユース)も185センチの長身ながら、すでに完成度の高いプレーを見せる好選手。「あこがれはカシージャス」と語る長崎県選抜GK松村優太郎(長崎総科大附高)は、よく通る声で味方を支え、勇敢なプレーでチームの8強入りに貢献した。京都府選抜のGK若原大志(京都サンガU−18)は上背こそないものの、技術的に非常に優れており、活躍度は大会No.1。また、190センチの高身長に長い手足を備えた福島県選抜のオビ・パウエル(JFAアカデミー福島)もインパクトのあるプレーを披露していた。まだまだミスも目立つが、それを補う魅力があった。