ファンに愛された“赤ゴジラ”嶋が引退「野球に集中すると神様がご褒美くれる」

ベースボール・タイムズ

一番の思い出は首位打者、最多安打のタイトル獲得

嶋(写真右)は広島時代の04年には首位打者を獲得。背番号「55」ということから“赤ゴジラ”のニックネームでファンに愛された 【ベースボール・タイムズ】

――今後、野球とはどのように関わっていきたいと考えていますか?

 小学校から野球しかしていなく、野球がすべてみたいな感じで生活してきましたから、何らかの形で野球に携わりたいと思っています。でも今は正直、プランもありませんし、もう少しゆっくり考えて行動に移したいと思っています。

――現役生活で一番の思い出は?

 自分が首位打者を取ったこともそうですけど、その前の年には消化試合の2打席だけで、次の年に首位打者になりました。そのときから「ナニクソ! 絶対に1軍でやってやるんだ」とやっていたものが、秋のキャンプで徐々に認められていって春を迎えました。そのときのオフは休みなしでやっていた記憶があります。そういう努力が報われたという意味では、首位打者が取れたこと、最多安打が取れたこと、ベストナインに入れたことだと思います。

――去年は故障もありました。故障が引退のひとつの理由になっていますか?

 多少はありますよ。慢性的なアキレス腱痛もありますし、これだけ長いことやっていると、体に万全の箇所が少ないくらいなので。そういうのと戦いながらやっています。毎日、休んでいる暇はないですよね。そういうストレスはありましたよ。

――「赤ゴジラ」というニックネームで注目を集めました。プロ野球人生を終える今、このネーミングをどう思いますか?

 春のキャンプからオープン戦にかけて、付いたと思うんですよね。まだシーズンに入ってどうなるかわからない選手にニックネームを付けてくれて、ある意味それで顔を覚えてもらったのはすごくうれしかったです。それと同時にその年に活躍できたて、それによって赤ゴジラというニックネームが浸透しました。「嶋選手!」ではなく、「赤ゴジラ!」って言われるようになったのが、「あっ、1軍でやっているんだな」と感じた一瞬でもありました。もしもそれがなかったら、あまり目立ちたがり屋のタイプでもないですし、シラーって終わっていったのかなという気がしないでもないです。

勝負事の世界なのに優しさが出てしまい「潮時かな」

――「スタメンで出ていないときでも、試合中の3時間くらいは毎日、熱い気持ちでいたい」と言っていたことを忘れません。プレーヤーとして野球に取り組むその気持ちを持ち続けたなかでやめるのか、そこがクールになってやめてしまうのか?

 今年に限っていうと、調子が良く、打てていた時期もあると思います。でも、この世界は常に競争なんですよね。正直、若いときは誰かが打つと悔しかったですし、「負けていられるか」という気持ちでした。それが今年に限っては、若い選手が打ったときに「ナイスバッティング」と思ってしまいました。自分に優しい気持ちが出てしまいました。今までなら誰かがナイスバッティングをしたら「俺も絶対に打つぞ」と思っていたところが、素直に「あいつ、良いバッティングをしたな」と思ってしまったところが、変わってしまいましたね。

――それはいつ頃の話ですか?

 今年の8月くらいですかね。勝負事の世界なのに優しさが出てしまった自分がいて、そういうことも含めて「潮時かな」と思っていった部分はありますね。ただユニホームを着ているときは、「試合に勝つ」と思っていました。2軍でもそうです。

――野球というスポーツはどういうものでしたか?

 小学校1年生から野球を始めまして、野球というもので礼儀を学びました。野球というもので相手を思いやる気持ちを学びました。ひとりでやるスポーツではないですしね。自分が小学校6年生でエースピッチャーになったとき、同じ味方の選手がエラーしてしまったときにヤジってしまったんですね。「なんであんなの取れないんだよ」って言った瞬間、父親に投げ飛ばされ、野球をやめさせられた経験があるんですね。そこで他人を思いやる気持ち、心技体の心の部分をすごく勉強させてもらいました。その後にプレーはついてくるのかなって。ある程度安定した心があれば、良いプレーは常にできます。舞台が変わろうとできるんじゃないかと思いました。気持ちの部分の強さ、相手を思いやる気持ち。野球を関して気持ちの部分で学んだことが多かった気がします。

<了>

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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