あれから7年、武豊&キズナいざ決戦へ――日本すべての「絆」今こそ一つに

JRA-VAN

父ディープインパクトの敵討ちだ

有力馬との対決となったニエル賞を制したキズナ。斤量有利となる本番でも、自慢の末脚を見せられるか 【photo by Tomoya "J" Moriuchi】

 ディープインパクトの凱旋門賞挑戦から早7年。当時は日本競馬界もディープ一色。国内では敵なしで、凱旋門賞に挑戦となれば、当然のように勝利を日本に届けてくれるものと、多くの関係者やファンは期待を寄せた。しかし、レースでは日本で見せるディープインパクト本来の弾けた走りを見せることができずに3着。初めての海外遠征に加えて、ぶっつけ本番で臨んだことなど、様々な敗因が取り上げられた。さらにはレース後の薬物検査で陽性反応。3着から失格処分へ。何故、禁止薬物の反応が出たのかさえ分からず、何とも煮え切らない凱旋門賞挑戦となった。

 それから7年の歳月が流れ、今まさにディープの血を受け継いだ優駿が海を渡った。もちろんキズナのことだ。キズナは2012年秋に京都競馬場でデビュー。新馬戦、黄菊賞と連勝して瞬く間に世代のクラシック候補にのし上がった。この2戦目までは佐藤哲三騎手とコンビを組んでいたが、佐藤騎手が落馬による長期離脱で、2歳末のラジオNIKKEI杯から武豊騎手とコンビ結成。しかしながら、ラジオNIKKEI杯2歳S、弥生賞とあと少しの所で勝ち切れないレースが続いてしまった。弥生賞で優先出走権を得られなかったことから陣営は皐月賞出走を断念。弥生賞後は日本ダービーに照準を定めたローテーションを組んだ。

覚醒の春、ダービーまでごぼう抜き

 これが功を奏したのか、キズナは本来の強さを取り戻す。いや、覚醒したと言った方が適しているだろう。毎日杯では後方2番手からの競馬。4コーナーを通過した時点でまだ後方に置かれていたが、直線に入ると末脚が爆発。前を行く面々を並ぶ間も無いほどのスピードで抜き去って2着に3馬身の差をつけてゴールした。続く京都新聞杯でも毎日杯と同じ様に後方からの競馬を展開。直線ではここでも強烈な末脚で他馬をゴボウ抜き。まるで父・ディープインパクトを彷彿とさせるレースぶりで、キズナとディープインパクトをダブらせた人も少なくはないだろう。

 重賞2連勝で堂々とダービーに駒を進めたキズナと武豊。大一番では皐月賞組を抑えて1番人気に推され、ファンも関係者も大いに期待を寄せた。レースでは、ここでも指定席と言える後方に位置取り。前半の1000mが60秒3という平均ペースで流れる中、キズナは全く動じることなく4コーナーまでジックリと後方待機策に徹した。そして、最後の直線に向くと、馬場の外から満を持してラストスパート。見る見るうちに他馬を抜き去り、最後は前を行くエピファネイアを捕えて先頭でゴール。前年のディープブリランテ同様、キズナも親子2代ダービー制覇を決めた。そして、この勝利で陣営はオーナーとの話し合いの末、凱旋門賞挑戦を決めたという。

本番は斤量2キロ減、体調もさらなる上積み

ニエル賞後に「次は状態がさらに良くなる」と語った武豊騎手。父ディープインパクトで成し遂げられなかった凱旋門賞制覇へ期待が高まる 【photo by Tomoya "J" Moriuchi】

 通常の3歳馬ならば秋は菊花賞を目指すところだが、キズナ陣営は果敢にも凱旋門賞挑戦を選択。「あの末脚だとロンシャンの重たい馬場は合わないのでは」との声も上がったが、前哨戦のニエル賞で、そんな考えが愚行だということを思い知らしめた。道中は8、9番手に位置取り。折り合いも良く、直線を向くと残り300m地点で武豊騎手がGOサインを出す。最後は英国ダービー馬・ルーラーオブザワールドとの壮絶な叩き合いの末、短頭差で根性の勝利。それも陣営曰く80%程度のデキで、決して万全な状態ではなかったという。さらに本番では前哨戦よりも斤量が2キロ軽くなる。その上、今回以上の上積みも期待できるとなれば、関係者もファンも胸が高鳴る。

 ファンとの絆、騎手との絆、厩舎スタッフとの絆、牧場関係者との絆、オーナーとの絆、父との絆、そして東日本大震災による被災地・被災者との絆。様々な絆があり、その絆を一つに結んだキズナが大仕事をやってのける。

(text by Kazuhiro Kuramoto)
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント