Jリーグ2ステージ制復活の功罪
未来のために今すべきことは何か
2ステージ制の復活を含め中西氏は、Jリーグの未来を語った
2ステージ制の復活を含め中西氏は、Jリーグの未来を語った【宇都宮徹壱】

 9月17日のJリーグの理事会で、2015年からの実施が正式に決まったJ1リーグの2ステージ制導入について、前回に引き続き中西大介競技・事業統括本部長へのインタビューをお届けする。


 2ステージ制導入が発表されてから1週間。その最初の週末となる21日、川崎フロンターレの武田信平代表取締役社長が、サポーターを前にして今回の決定の経緯について説明を行った。Jリーグとしては、2ステージ制導入に関するサポーターへの説明は、基本的にクラブを通して行いたいと考えており、他のクラブでもこうした動きは広がっていくものと予想される。「クラブを通して説明する」という考え方は、確かに効率的ではあるかもしれない。が、いまだにJリーグのトップである大東和美チェアマンから、この件についてファンやサポーターに対する説明がなされていないのは残念でならない。


 Jリーグの方々はよく「ステークホルダー」という言葉を使う。日本語に訳せば「利害関係者」。Jリーグに関していえば、クラブ、自治体、スポンサー、代理店、メディア、そしてファンやサポーターなどがこれに当たる。理事会後の会見でも、たびたびこのフレーズが聞かれたのだが、果たしてJリーグはどこまでファンやサポーターを「ステークホルダー」として認識しているのだろうか。今回の2ステージ制の議論の進め方を見ていると、その点が非常に気になって仕方なかった。


 前編でも述べたとおり、私自身は1ステージ制支持者であるが、さりとてそれに固執することでJリーグが甚大な不利益を被るのであれば、大会方式の見直しもやむなしという立場である。そう考えているファンやサポーターも、実は少なくないのではないか。なぜならJリーグが破綻すれば、われわれだって困るからだ。その意味で、われわれも本来的にはJリーグのステークホルダーであるはずだ。


 これまで20年にわたってスタンドを盛り上げ、多くのお金を落とし、共に泣き笑い感動し、先の震災でも励まし合いながら困難を乗り越えてきたのは、間違いなくファンやサポーターであった。にもかかわらず、そんな彼らに対しての十分な説明責任が果たされないまま、2ステージ制導入はあっさり決まってしまった。ファンやサポーターは、2ステージ制そのものに怒っているのではない。そうではなく、自分たちが蚊帳の外に置かれてしまったことに、彼らは憤りを感じているのだ。


 理事会で決まってしまったものは、もう覆らない。それでもJリーグは、ファンやサポーターに対して、今回の経緯をきちんと説明すべきである。幸い、会見に登壇した中野幸夫専務理事は「サポーターの皆さんへご説明する努力が足りなかったのは申し訳なく思っている」と、組織を代表してその非を認めた。であれば、クラブやメディアを通してではなく、チェアマンや事務方のしかるべき方々が、きちんとファンやサポーターを前にして説明する場をどこかで設けるべきだと思う。


 たとえば、全国からファンやサポーターが集まる12月のJリーグアウォーズの前後に、どこか場所を借りて彼らと語り合う場を設けてはどうだろう(JFAハウスのヴァーチャルスタジアムでもいい)。もしかしたら、若干のブーイングを受けるかもしれない。それでも、Jリーグが本当にファンやサポーターを「ステークホルダー」と考えるのであれば、ぜひとも彼らと向き合う機会を実現してほしい。その際に、今回の中西氏へのインタビューが議論の前提となれば、取材者としてこれ以上の喜びはない。(取材日:9月2日)

1ステージ制の公平性を犠牲にして得られるものとは?

――さて、2ステージ制にするのか、1ステージ+ポストシーズン制にするのか、これから議論していくということですが(編注:その後、2ステージ制に加え、ポストシーズンとして「スーパーステージ(仮)」、「チャンピオンシップ(仮)」を設置することが決まった)、入場料収入、あるいは放映権やスポンサーからの収入について、どの程度のシミュレーションが行われているのでしょうか?


 シミュレーションの方法が難しく、観客数に跳ね返ってくるまでの直接的なシナリオは今のところありません。ただポストシーズンの試合を中継していただく場合、年間の地上波の中継を義務付けることを考えているので、そうやってパッケージにして売っていこうと考えています。そうすることで、レギュラーシーズンの中継も増やしたいということでもあるんです。


 以前、2ステージ制でやっていた時も、TBSさんにCS(チャンピオンシップ)をやっていただいていたんですけど、CSだけでなくレギュラーシーズンも地上波で放送することを約束していただいたんですね。その義務を果たしていただくことで、一定の本数が稼げたんだけど、1ステージ制になってからはそういう縛りもなくなって、地上波の本数もどんどん減っていったという事情があります。


――実は私が危惧していたのは、CSだけを売って地上波で放映するのはいいとして、そのことでレギュラーシーズンの価値が下がってしまうことだったんですよ。そこのリスクヘッジはできていると?


 CSだけ売って、それが何になるのっていうことだと思うんですよ。そうじゃなくて、「一番良い権利を渡すんだから、こういう条件でやってくださいね」という交渉をやっています。


――交渉が良い条件で成立したとして、地上波でのJリーグ中継が増えればいいと思うのですが、どういうレギュレーションになるにせよ1ステージ制で保たれていたリーグ戦の公平性が崩れてしまうことは避けられません。その点についてはどうお考えでしょうか?


 おっしゃるとおり、34節でホーム&アウエーでやれるのが一番公平ですよね。今回、レギュレーションを変えるということは、どんなやり方であってもその公平性が損なわれてしまう。そこを犠牲にしてでも、得られるものは何なのか、本当にそれが未来につながることなのか。そこをきちんと見せないと、ファンやサポーターの方々が納得できないだろうな、というのはすごく理解しています。


 ですので、今度の実行委員会の中心的なテーマは「これ以外に本当に手がないのかどうか」「もしこの方式でやるのであれば、どのくらいの期待が持てて、どのような成長のシナリオが描けるのか」「そのことがファンに共有・納得していただけるのかどうか」というところがポイントだと思うんですよ。(編注:9月11日の実行委員会で2ステージ制+ポストシーズンを実施する方針を固め、17日の理事会で正式に決定)。

宇都宮徹壱
宇都宮徹壱

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著はスポーツナビでの連載をまとめた『J2&J3 フットボール漫遊記』(東邦出版)

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