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タイ・チョンブリを支える“何でも屋”
サッカー協会名誉会長を父に持つ小倉敦生
笑顔とともに、タイサッカーの現状を語ってくれた小倉氏
笑顔とともに、タイサッカーの現状を語ってくれた小倉氏【スポーツナビ】

「父親の影響があったんでしょうね」。タイ・プレミアリーグに所属するチョンブリFCをスタッフとして支える小倉敦生は、「趣味程度」であったサッカー界に身を投じた理由をこう語った。彼の言う父親とは、現日本サッカー協会名誉会長・小倉純二氏。2002年から9年間に渡って、国際サッカー連盟(FIFA)及びアジアサッカー連盟(AFC)で理事を務めた男である。彼は選手経験が皆無でありながら協会の首脳部入りした異色の経歴で知られるが、その息子もまたアジアの地で奮闘する道を歩んでいる。


 チョンブリFCへの入団が決まったのは12年1月のことだった。初めての仕事は「週末から来られるか」という連絡で訳も分からずに訪れたマレーシア。自らの役職はチーム・マネージャーとなっており、AFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)に関するワークショップだった。「チームに入って間もない人間が、いきなりね(笑)」。もはやこういった想定外の連続が日常となっている。


 業務は「言われたら何でもやる」と語る小倉氏。スポンサー営業から提携事業、チームの引率をはじめとした人材交流、さらにはAFCのコーチングライセンス講習会のサポートなど多岐に渡り多忙な毎日を送る。アジアで挑戦を続ける小倉氏に、タイサッカーの現状と、そしてアジアから見たJリーグについて語ってもらった。

父親からは「まあ頑張れよ」

――チョンブリで働くことになった経緯を教えてください


 米国の大学院を卒業した後で日本に帰ってきたんですが、漠然と海外で働きたいなと思い、タイにある日系のIT企業で営業を4年半ほどやっていました。ただ、父親の影響もあったんでしょうね。サッカーの仕事をやりたいなと思い始めたんです。サッカーは体育会でバリバリやっていたというわけでもなく、趣味でやっていた程度なんですけどね。


 たまたまAFCの職員であった日本人の方と知り合うことができて、その縁でチョンブリに紹介してもらいました。日本人の営業スタッフを探しているということで、軽い気持ちで応募したんです。採用が決まったのは1年がかりで11年11月。(なかなか決まらなかったので)帰国して転職活動でもしようと思いましたが、飛行機に乗る20分前に「決まったぞ、明日から来られるか」って(笑)。そこから通常3カ月かかる引き継ぎを2カ月で済ませた後、今度はまだ正式に入団してないのに、「週末からマレーシアに来られるか」とクラブから連絡が来ました。何の用だろうと思って行ってみるとACLのワークショップ。その時点でチーム・マネージャー(海外遠征などの引率責任者)を務めることに決まっていたんです。ACLでは様々なところに行きますが、代表者会議はチーム・マネージャーが出ることになります。チームに入って間もない人間が、いきなり務めることになりました(笑)。


――クラブはなぜ日本人を探していたんでしょうか?


 チョンブリはサッカーのスタイルもマネジメントも、日本流を取り入れたクラブ作りを方針として打ち出しています。アジアの頂点を目指すならば、トップレベルである日本から学ぶことが多いからです。また、チョンブリFCのあるチョンブリ県は東部最大の工業団地があって、そこに日系企業だけでも400社ほどあるんです。そして、バンコクに次ぐ2番目に大きい日本人町もあって、日本人学校があるぐらいのコミュニティーがある。スポンサーや観客動員を含めて、クラブを広めていきたい。そこで日本人を雇うのが一番だとなったようです。


――入団が決まったとき、父親である小倉純二氏から言葉をかけられたんですか?


 何をやっているんだと。あまり前向きではなかったですね。「まあ頑張れよ」ぐらいな感じでした。父親はタイとの付き合いが2、30年あるからよく行っているし、内情をよく知っているんですよね。


――現在は連絡を取り合っているんですか?


 あまりないですね。そもそも会話もお互い苦手なんです(笑)。尊敬はしているんですけどね。最近になって、会話するようになったかなっていうぐらいです。昨年はAFCカップ、ACLのプレーオフに同行したりとか、遠征に行く機会が結構あって、父親の恩恵にあずかることは確かにありました。アジアの中では知れ渡っているし、各国の関係者も知っているので、話がしやすい。とてもやりやすかったですね。

アジア初の外国人採用でのクラブスタッフ

――日常はどのような業務を行っているんですか?


 言われたら何でもやるという感じですね。(チーム・マネージャーだけでなく)営業もしますし、選手育成の交流や提携事業も行っています。社会貢献事業みたいなところで日系サッカースクールの子供達を招待していますし、あとタイの政治絡みで必要な日本の情報を翻訳してくれとか、そういう調査資料の翻訳作業もあります。あとはAFCのコーチングライセンス講習会のサポートをしたり、クラブ・ライセンシング制度の土台作りを同僚と一緒に作っています。


――とんでもない業務量ですね


クラブ上層部からムチャぶりの連続で忙しくなっているというよりは、要領が悪くて振り回されるっていうのが実態ですね。クラブ幹部がタイだけではなく、アジア中でネットワークを持っているので、様々な話が部下に「ちょっとやっとけ」と降りてきます。唐突に言われて、明日までとか。そんな仕事に日々追われている感じです。


――タイの他のクラブには日本人スタッフがいるんでしょうか?


 今年から1人、チェンライというクラブに入りましたね。AFCの人が言うには、去年までは僕がたぶんアジア初の外国人採用でのクラブスタッフとは言っていましたよ。AFCもいい加減なので、本当かどうか分からないですけどね(笑)。

Jリーグ開幕したての頃の熱狂感

08年にはACLに出場したチョンブリFC(青)。この大会で優勝を飾ったガンバ大阪とアウエーで引き分けるなど健闘した
08年にはACLに出場したチョンブリFC(青)。この大会で優勝を飾ったガンバ大阪とアウエーで引き分けるなど健闘した【写真:Takamoto Tokuhara/アフロ】

――タイの観客動員や人気面はどうでしょうか?


(観客が)入るチームは入ります。うちはスタジアムが小さくて8600人なんですけど、その60、70パーセントは常に入っています。大きいチームだと、例えばAFCに出るブリーラム・ユナイテッドは20000人ぐらい入るスタジアムを持っています。田舎のチームだと娯楽がないので常に満杯、とても熱狂的です。20000人入るスタジアムが満員で、なおかつ外に2000人ほどがパブリックビューイングをしているというチームもあります。しかも毎節ですからね。Jリーグが開幕したての頃の熱狂感、懐かしい感じの雰囲気はありますね。


――日本人選手も多くタイに進出していますよね


 今年は40人くらいの選手が来ています。ただ、実際に活躍している選手は少ないですね。タイ人の評価だと10人もいないのではないでしょうか。試合に出ていても、外国人助っ人としての評価が高い選手は少ないかなと。


――タイにはどのような選手が来ているんでしょうか? Jリーグではプレーすることが厳しくなった選手たちでしょうか?


 そういう人もいますし、そもそもチャンスがなかったからこっちに来た人もいて一概には言えません。実際、J1の選手が来ても、契約に至らずに帰ってしまう人もいます。向き不向きがあるんですよね。Jとは違うスタイルなので。日本だったら評価されるでしょうけど、あくまで外国人助っ人なのでスーパーな存在でかつ、目立たないといけません。そういったアピールの仕方が上手じゃない人もいますね。


――日本人が増えたとしてもあくまで助っ人であって、そこの意識がないと困ると


 あとはJリーグにはJリーグのスタイルがあって、絶対に向いていない選手がいるわけです。それを都落ちと考える人がいてもいいとは思いますけど、向き不向きで合うリーグがあればそこのリーグでやった方が、J2とかJ3でやるより観客動員数も多いし、選手としても幸せだと思います。タイ・プレミアリーグでプレーしている選手はたぶんJ2より貯金を持っている選手が多くいますよ。


――給料など待遇面はどうなんでしょうか?


 良い選手はいるみたいですね。チームによって住む家を提供してくれるところもあれば車も提供してくれます。生活費が安いから日本より当然お金を使わないし、貯金を考えたらタイの方がお金は貯まるのではないでしょうか。

スポーツナビ

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