NFLが米国で最も愛されるのはなぜか=W杯以上のブランド価値を生む独自の発想

杉浦大介

米国人の3割以上がNFLが好き

米国では夏季五輪やW杯以上のブランド価値を持つNFL 【Getty Images】

 米国は「フットボール・カントリー(アメフトの国)」。
 NFLが開幕するこの時期になると、そんなフレーズがテレビのスポーツニュースなどでも盛んに飛び交うことになる。イチロー、松井秀喜らの活躍もあって、アメリカンスポーツというと日本人にはMLBの印象が強いのかもしれない。しかし米国内での一番人気は、文句なしでアメリカン・フットボールなのである。ハリス・インタラクティ社の昨年12月の調査によると、米国人が好きなスポーツのランキングは以下のとおり。

1位 フットボール(NFL)34%
2位 ベースボール 16%
3位 大学フットボール 11%
4位 カーレース 8%
5位 バスケットボール 7%

 上記のランキングでは、過去47年に渡ってNFLが1位。2002年にはその支持率は27%だったというから、ここ10年でさらにアップしていることになる。
 米国の多くの男性は、金曜は高校、土曜はカレッジ、日曜はNFLと週末を通じてフットボールをテレビ観戦し続けるため、放っておかれる女性を表現する“フットボール未亡人”なんて言葉もあるくらいだ。

 これだけの人気スポーツなのだから、商品価値の高さは言うまでもなく、そこで動くお金も半端ではない。NFLの年間収入は95億ドル(約9500億円)と推測されており、75億ドル(約7500億円)のMLBを大きく引き離す。1チーム平均の資産価値も11億106万ドル(約1098億円)と、MLBの7億4400万ドル(約742億円)、NBAの5億900万ドル(約508億円)に大差を付けている。

地球上最大のスポーツイベントとまで呼ばれる「スーパーボウル」

 特に毎年2月の第1週に行われる決勝戦「スーパーボウル」は、比類なき特大イベントだ。「地球上最大のスポーツイベント」とまで呼ばれるスケールの大きさは常軌を逸しており、スーパーボウルにまつわるエピソードも枚挙に暇(いとま)がない。

・スーパーボウルのブランド価値は4億7000万ドル(約470億円)で、夏季五輪やサッカーワールドカップをも上回る(経済誌フォーブス発表)
・スーパーボウル当日は米国内で、感謝祭に次いで年に2番目に食料が多く消費される
・スーパーボウルのテレビ視聴率は23年連続で40%突破
・スーパーボウル中のCMの価格は30秒枠で平均380万ドル(約3億8000万円)
・再販の観戦チケット代は平均3728ドル(約37万円)

 このように記していくと、米国内でフットボールがいかに大きな存在であるかが理解してもらえるはずだ。それにしてもNFLは、どうやってこれほどまでに莫大な人気を得るに至ったのか。レギュラーシーズンは年間わずか16試合と短く、選手はヘルメットで顔を被っているため、他競技のように一般的に認知されるスーパースターが生まれにくいように思える。むしろ、国民的人気を確立するのが難しいスポーツと考えるほうが妥当だろう。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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