苦境脱出へ、香川真司がつかんだきっかけ=ユナイテッドで臨む存在意義を懸けた戦い
自分自身に怒りをにじませる
今季、ユナイテッドではいまだ出場機会はなし。苦境に立たされているが、香川の力が必要となる時は必ずやってくるはずだ 【写真:アフロ】
その翌日にも「ユナイテッドで出場機会がないから試合勘の問題があるのでは?」と報道陣に問われていら立ちを募らせた。2010年夏のドルトムント移籍以来、香川がこれだけ公式戦から遠ざかった状態で代表に合流したのは初めて。周りからネガティブな見方をされるのもやむを得ないところはある。そんな憶測や悲観的ムードを払拭(ふっしょく)するためにも、2連戦の集大成となるガーナ戦では、見る者を納得させるパフォーマンスを示す必要があった。
「僕らが目指している3人目の動きを生かした攻撃をしたい。攻撃の枚数を増やして3枚、4枚関われれば、必ずいい形ができる。攻めに行った中で最後の3分の1のミスは仕方のないことですし、思い切ってやらない限り、何の向上にもつながらない。リスクをかける場面はかけていくべきだと思います」と、本人も積極的にチャレンジする姿勢を頭に刻み込んで、横浜国際のピッチに立った。
ザックジャパンで長く戦ってきた本田や清武や遠藤保仁らに加え、セレッソ大阪同期入団の柿谷と組んだこと、1試合こなしてコンディションが上がったこともあり、香川は前半から悪くない動きを見せた。失点直前の前半23分には中盤から鋭い縦パスを送り、清武とGKが1対1になる決定機をおぜん立てする。これが決まっていればもっと楽に勝てたのだろうが、清武のシュートは相手守護神に阻まれる。その直後に香川が失点に絡んだのだから悔しさはひとしおだったはず。その後、自らドリブルで持ち込んでシュートを試みたり、遠藤との左ショートコーナーからゴールを狙ったが、無得点のまま45分間を終えた。
香川の力が必要になる時はやってくる
「最近、いろいろ考えすぎていた? それは分からないけど、やっぱりこういう緊張感のあるゲームをやってなかったんで……。試合をやって、自信や勢いをゴールという形で取り戻したかった。やっぱり僕はピッチで結果を残すしかないですから。今、マンチェスターで試合に出てないのは問題かもしれないけど、シーズンも始まって監督も変わったことは自分の中でもしっかり受け止めています。向こうに帰ってからチャンピオンズリーグ(CL)もありますし、この前もリーグ戦で(リバプールに)負けているんで、チャンスは絶対出てくると思う。ここからが本当の勝負だと思います」と、香川は毅然とした表情で未来を見据えていた。
ガーナ戦の得点をモイズ監督がどう評価するかは定かではない。たかが代表の親善試合で1ゴールを挙げたくらいで状況は何一つ変わらないかもしれない。ただ、香川の状態が上向いていることだけは事実だ。ガーナ戦を見る限り、献身的に守備のサポートに入って身体能力の高い相手に応戦していたし、中盤に下がってゲームの組み立てにも意欲的に参加していた。このように幅広い仕事を見せられたのも、コンディションが上がってきているから。今回の代表2連戦でしっかりとゲームをこなしたことは、この先のユナイテッドでもきっとプラスに働くだろう。
世界屈指のビッグクラブはここから試合が目白押しだ。14日のクリスタルパレス戦に始まり、17日にはCLのレバークーゼン戦、22日にはマンチェスター・シティとのダービーと重要なゲームが続く。今後、リーグカップやFAカップなどもあるため、どこかで香川の力が必要になる時がやってくる。そこでチャンスをつかむかどうかは本人次第だ。
とにかくユナイテッドでピッチに立たない限り、彼自身の飛躍はありえない。9カ月後に迫ったブラジルW杯で成功するためにも、この正念場を全力で乗り切ってほしいものだ。
<了>