足元を見つめなおした日本代表=グアテマラ戦をどう評価すべきか

宇都宮徹壱

なぜグアテマラだったのか?

日本のスタメンを見て分かるのは、「お試し+試合勘を取り戻す」という2つの意図があることだった 【写真:アフロスポーツ】

 9月6日、大阪・長居で日本代表と対戦する相手がグアテマラ代表に決まったとき、最初は軽い失望感を覚えたことは内緒だ。今は「きっと協会も頑張ったんだろうな」と思っている。国内組だけで臨んだ東アジアカップを除くと、6月のコンフェデレーションズカップから8月のウルグアイ戦にかけて、日本は4試合続けて強豪との対戦が続いていた。しかし今回の相手はFIFA(国際サッカー連盟)ランキング93位。すぐ下の95位がオマーンだから、その実力はある程度イメージできよう(日本は37位)。実際、グアテマラは北中米カリブの3次予選を4チーム中3位で終え、最終予選進出はならず。当然、ワールドカップ(W杯)への夢は、すでに断たれている。

 グアテマラ戦が行われる6日、そしてガーナ戦が行われる10日は、言うまでもなくFIFAが定めた国際Aマッチデーである。世界最速で予選突破を果たした日本にとって、すでにW杯予選は美しい過去の思い出でしかないが、他の大陸予選はこれからがまさに佳境。アジアでも大陸間プレーオフ進出を懸けて、ヨルダンとウズベキスタンがしのぎを削ることになっている。年内の国際Aマッチデーは残り6つ。日本としては、できるだけ強い相手と手合わせしたいところだが、各大陸の強豪は今はそれどころではない。もちろん、組み合わせの関係で予選が1試合ないチームもあるにはあるが、この大事な時期にたった1試合のためにファーイーストまで遠征するのは、あまりにもリスクがある(ガーナはすべての予選を終えてからの来日)。となると、すでにW杯予選が終わってしまったチームの中から選ぶしかない。

 グアテマラは3次予選で米国、ジャマイカ、アンティグア・バーブーダと同組となり、3勝1分け2敗の勝ち点10でジャマイカと並んだものの、2点の得失点差で涙を飲むこととなった。パラグアイ人のエベル・ウーゴ・ アルメイダ監督は解任され、今回チームを率いるのは暫定監督のセルヒオ・パルド。この人はチリ出身で、国内リーグのミクトランというクラブの兼任だという。「わたしは40年間グアテマラのサッカーに関わってきたので、この国のことはよく知っている。明日の試合では、将来的なグアテマラの強化を目指していい試合をしたい」とは当人の弁。今回は国内組のみのメンバー構成だが、日本としては相手との実力差はどうあれ、有意義な一戦としたいところである。

「お試し+試合勘を取り戻す」メンバー構成

 さて、東アジアカップを除くここ4試合で、13失点を喫している日本代表。しかし守備陣に関しては、いつものメンバーが招集された。また、新シーズンに入ってなかなか出場機会に恵まれていない、長谷部誠、香川真司、吉田麻也について、アルベルト・ザッケローニ監督は「2試合目(ガーナ戦)でいい戦いをするために、明日は出す必要はあると思う」と前日会見で語っていた。そんなわけで、大きなメンバー変更はないと当初は予想していたのだが、実際のスターティングイレブンはこのようになった。

 GK西川周作。DFは右から酒井高徳、森重真人、吉田、長友佑都。中盤は守備的な位置に長谷部と遠藤保仁、右に岡崎慎司、左に清武弘嗣、中央に香川。そしてワントップに大迫勇也。メンバー表を見てすぐに理解できるのは、今回のメンバーは「お試し+試合勘を取り戻す」という2つの意図があることだ。前者は、吉田と初めてコンビを組む森重、そして初めてワントップでスタメン出場となる大迫、これにGKの西川を加えてもよいだろう。後者については、前述した3人がそのままピッチに並び立つこととなった。一方で本田圭佑をあえてベンチに置いたことについては、指揮官は「90分間やらせたくなかった」と語っており、このことからも2戦目のガーナ戦に照準を合わせているのは明らかである。

 さて、「ディフェンスの再構築」に注目が集まる中、個人的に着目していたのが固定化されていた代表の序列の変化である。そのヒントになりそうなのが、試合前日に発表された「東アジア組」の背番号だ。森重が6、大迫が20、山口螢が13、青山敏弘が14、柿谷曜一朗が11、齋藤学が16、そして工藤壮人が18。山口、青山、工藤はウルグアイ戦と同じだが、森重(36→21→6)や柿谷(30→19→11)のように、東アジアカップから着実に数字を減らしている選手もいる。11はハーフナー・マイクの番号であり、6は内田篤人が2番を選択して空いた番号だ。もちろん、単なる暫定的な数字合わせかもしれないが、指揮官の密やかなメッセージを読み取ることも可能だろう。そしてこのグアテマラ戦は、東アジアカップから生き残った選手たちにとって貴重なアピールのチャンスであった。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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