夏2歳戦の社台FとノーザンF、勝ち上がり率低下
夏の2歳戦、社台FもノーザンFも勝ち上がり率が落ちている(写真は新潟2歳Sを快勝したノーザンF出身のハープスター) 【netkeiba.com】
夏の2歳戦、2大牧場の成績を調査してみた
一般的なイメージとしてはノーザンファーム、特に空港組の仕上がりが早く、後から社台が追い付いてくるという印象が強い。そのイメージが正しいかどうかも含めて、まずは数字を確認してみよう。対象は各年の夏競馬・2歳戦、2009年以降の5年で、育成馬ではなく生産馬ベースである。
[出走数 勝ち上がり数 勝率 1頭あたり賞金 1走あたり賞金]
・2009年
NF:49頭 14頭 28.6% 323万円 188万円
社台:40頭 9頭 22.5% 470万円 241万円
・2010年
NF:72頭 21頭 29.3% 301万円 185万円
社台:54頭 13頭 24.1% 244万円 152万円
・2011年
NF:61頭 19頭 31.1% 383万円 233万円
社台:56頭 17頭 30.4% 308万円 203万円
・2012年
NF:79頭 21頭 26.6% 332万円 218万円
社台:49頭 5頭 10.2% 180万円 115万円
・2013年
NF:88頭 19頭 21.6% 313万円 212万円
社台:75頭 14頭 18.7% 311万円 182万円
「夏デビュー予定」でも活躍は保証されていない
社台は現3歳世代が絶不調だったが、今年は勝馬率こそまだ不十分なものの賞金系は持ち直しており、底は打った感がある。
それよりなにより、注目したいのはこの時期にデビューする馬の絶対数だ。夏競馬の2歳戦という対象レース自体も増えているのだが、NFは2010年から一気に出走数が増え、社台も今年ついに使う数を伸ばしてきた。春先に取材していても「前線に送られている馬」の絶対数が多いと感じたものだが、改めてそれが確認できる。
しかし、NFも社台もこの時期の勝ち上がり率は以前より低下している。それだけ非社台系が強くなったか、「勝てるレベルでない馬が前線に送られることが増えた」かのどちらか、もしくは両方だ。賞金の指標は大きく下がってはいないので「当たりの馬」はいるのだが、それが必死に他の同僚を支えている構図と言えよう。
POGにおいて「早いデビュー」は一種の正義だが、社台ファーム、ノーザンファームといえども、この舞台を自由には操れない様子が見てとれる。ドラフト時期には「夏競馬でのデビューを予定」という情報についテンションを上げがちだが、それだけで活躍が保証されているわけではないということも意識しておきたい。
▼筆者:須田鷹雄
1970年東京生まれ。競馬評論家、ギャンブル評論家。中学生時代にミスターシービーをきっかけとして競馬に興味を持ち、90年・大学在学中に「競馬ダントツ読本」(宝島社)でライターとしてデビュー。以来、競馬やギャンブルに関する著述を各種媒体で行うほか、テレビ・ラジオ・イベントの構成・出演も手掛ける。競馬予想に期待値という概念を持ち込み回収率こそが大切という考え方を早くより提唱したほか、ペーバーオーナーゲーム(POG)の専門書を初めて執筆・プロデュースし、ブームの先駆けとなった。
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