山形の点取り屋・林陵平が重要視するもの=地道な筋力強化が生んだ6月の活躍
アクシデントを糧に取り組んだ肉体改造
2次キャンプでは、チーム練習に参加できる部分は合流しながら、戦術練習や対敵動作の練習ではひとりチームを離れ、それまでの遅れを補うフィジカルトレーニングに勤しむ期間がしばらく続いた。この時期を逆に利用する形で、林が取り組み始めたのが筋力強化だった。特に主眼を置いたのが下半身。スクワット、スクワットジャンプ、デッドリフトなどを多く取り入れた。「トレーナーに押してもらっても『筋肉付いてきたな』って分かるぐらい、ケツ周りが格段に大きくなったし、ズボンもちょっとブカブカだったやつがピチピチになるぐらいになった」と本人が語るほど、見た目も変化。それが、その後のプレーの安定感にもつながった。
シーズンが始まって2カ月ほどはベンチスタートが続いたが、その時期も下半身強化のトレーニングを地道に続けてきた。「試合に出られるときも出られないときも、できることはたくさんある。その時に何ができるのかというのを、いつも考えて行動していた」。その成果が実を結ぶと同時に、ゴールを奪うたびにストライカーとしての新たな自信を身につけてゆく過程そのものが、6月の活躍となって表れた。
それから一転、7月以降はチームが4連敗を含む7試合勝利なしで急降下。林自身も先発出場こそ続けているものの、ゴールの量産態勢はパタリとやんだ。シュート数も減少している。FWは特に結果が問われるポジションだけに、本人の心境は想像に難くない。だが、それほど悲観せずに見ていられるのは、林がゴールを量産していた時期に話していた、こんな言葉が記憶に残っているからだ。
「シーズンの序盤で出られなかった悔しさというのもあるし、今も危機感はある。点を取ったのは過去の試合なので、明日は明日だけを考えて、その積み重ねで今のゴール量産につながっている。結果よりも、そこまでの過程というのを一番自分は大事にしている」
危機感を持ち、驕(おご)ることなく、過程を大事にしてきた成果が、あの充実した6月につながった。その姿勢を今も続ける林に、そうした時期が再び訪れないと誰が言えるだろうか。
<了>