宮下遥と大竹里歩のコンビが示した可能性=ワールドGPで日本が得た収穫と課題

田中夕子

決勝ラウンドは1勝4敗に終わる

米国に敗れ、肩を落とす全日本女子の選手たち。決勝ラウンドは1勝4敗に終わった 【坂本清】

 中国、米国と連夜のフルセットを取り切れず、日本のワールドグランプリ(GP)の決勝ラウンド5連戦は1勝4敗に終わった。
「世界の強豪と試合ができる貴重な機会。表彰台へという思いが強かったので、4位に満足というよりも、1勝しかできなかった課題のほうが大きいですね」(眞鍋政義監督)

 五輪翌年の発足間もない時期であり、今はまだ結果を求める時期ではない。とはいえ、やはり負けるのは悔しい。眞鍋監督だけでなく、選手たちもフルセットでの惜敗に「悔しい」と口をそろえた。結果だけを見れば、確かに1勝4敗で4位ではある。とはいえ、この5日間で見つかったのは課題だけではない。これからにつながる確かな糧となるであろう、収穫も多く得られた5連戦だった。

 2週間前、仙台での予選グループリーグ戦は、ブルガリア、米国に連敗を喫した。最終戦でチェコにフルセット勝ちを収めると、セッターの宮下遥は「まずはホッとした」と安堵(あんど)の表情を見せたが、自己評価は「今までの中で最低最悪の出来でした」と、実に厳しいものだった。国際大会でスタメンセッターとして出場するのは、これがほぼ初めての経験。トス回しやトスの質、自分が足を引っ張っているのではないかと悩むなど、プレッシャーに押しつぶされそうになっていた。

 仙台大会で特に露呈したのは、ミドルブロッカーを生かしきれないこと。眞鍋監督が就任してからの4年間、「(日本が)世界トップと違うのは、ミドルの点数が少ないこと」と言い続けてきたように、長年の課題ではあるのだが、特に第2戦の米国戦は顕著で、ミドルからの攻撃は数えるほどしかない。トスを上げてもタイミングが合わず、宮下も「センターを使うのが怖い」と漏らしたこともあった。

「ミドルと合わない、コンビが合わない」ジレンマ

 木村沙織、江畑幸子、新鍋理沙といったロンドン五輪を経験したサイド陣は盤石だ。しかし、ミドルが使えずサイド一辺倒の攻撃になれば、当然相手はブロックの枚数をサイドに増やす。バックアタックも同様で、ミドルからの攻撃がないと判断すれば、相手はミドルをマークせず、3枚ブロックでバックアタックを封じる。いくら日本が誇る得点源とはいえ、完全にコースが塞がれた状況で得点するのはたやすいことではない。

 この状況に焦りを抱いていたのは、宮下だけでなく、トスを受け、攻撃をしなければならないミドルの選手たちも同じだ。ミドルと合わない、コンビが合わない、と言えばすべてセッターに責任があるようにとらえられがちだが、アタッカー側にも修正点は多大にある。昨年、五輪出場権を懸けた世界最終予選(OQT)に出場した平井香菜子は、コンビが合わないジレンマを解消すべく、最終予選でのビデオを見て、今大会に臨んだ。

「OQTではワンレッグが決まっていたんです。先月からちょっと、入り方を変えた分、タイミングがなかなか合わないけど、遥にも、もっとワンレッグを使っていこう、ミドルも使っていいんだよ、と何回も、何回も伝えて、攻撃に入っていました」

 グランプリの決勝ラウンドで、全試合スタメン出場を果たした岩坂名奈も同様だ。

「私が前に行くと、ミドルの打数が一段と減って、サイドの負担が大きくなる。眞鍋さんからも『早く入れ』と言われ続けているので、少しでも早く動いて、自分の居場所を伝えるようにしました。持ってきてもらえないと、いつまでもコンビは合わないし、決めないと、遥も不安で上げられないと思う。なので『どんな形でもいいから決めたい』と、前よりも強く思うようになりました」

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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