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大宮をけん引するズラタンの影響力
強さの秘密はチーム優先の精神

大宮を降格危機から救うため、代表招集を辞退

昨シーズンの柏戦ではハットトリックを達成。チームのJ1残留に大きな貢献を果たした
昨シーズンの柏戦ではハットトリックを達成。チームのJ1残留に大きな貢献を果たした【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 本名ズラタン・リュビヤンキッチ。スロベニア・リュブリャナ出身で、1983年12月15日生まれの29歳。2012年、ベルギーのKAAヘントから大宮に移籍。代表デビューは06年2月28日のキプロス代表戦。10年南アフリカワールドカップ(W杯)では、米国戦でゴールを決めている。大宮で2トップを組むノヴァコヴィッチとは、代表でも2トップを組むことが多い。


 昨年の10月の12日と16日に、スロベニア代表はブラジルW杯欧州予選を迎えていた。そこで、ズラタンは代表招集を打診されていたが、これを辞退。「辞退理由は、コンディションが完全でないこともあるが、残留争いをしているチーム状況もその理由の一つだ。チームを救いたいという思いがある」と明言した。代表の遠征に加われば長距離移動も多く、コンディション調整は難しくなる。仮に2試合出場すると、チーム復帰後のプレーへの影響は計り知れない。


 そして、このズラタンの決断がチームを救った。

 リーグ戦の残り5試合となった10月27日、第30節アウエーの柏レイソル戦。大宮は残留争いから抜け出せずにいた。だが前半21分、左サイドを突破したズラタンが、GKとの1対1から先制ゴール。そればかりか47分、49分と立て続けにゴールを決めハットトリック達成。試合は4−1の快勝だった。ズラタンはホイッスルが鳴った後、チームメート全員と抱き合って喜びを爆発させる。「下位のチームを置き去りにすることができた。そういう意味でも大きな勝利」と話し、この勝利がJ1残留のターニングポイントとなった。


 母国の代表監督経験があるベルデニック氏ですら、当時こう語っている。「私は彼のことを重要な選手と思っている。今回の彼の決断を尊重する」と。

「彼の存在自体がチームに与える影響が計りしれない」

 今季は上位に位置している大宮は、ズラタンとノヴァコヴィッチの二人だけでチーム総得点の半分をたたき出している。だがズラタンの存在意義は得点だけにあるのではない。あるチーム関係者は言う。


「ズラタンの対戦相手に対するリスペクトの精神が素晴らしいんです。そして味方に対するリスペクトも。それがチーム全体に伝播している。彼の存在自体が、チームに与える影響が計りしれない部分があります」


 実はこのスピリッツこそが、昨季の厳しい残留争いを乗り越えさせ、今季の好調の中心にあったのかもしれない。得点やアシスト以上に、ズラタンがチームに最も貢献している部分だといえる。


 そんなズラタンも、普段は家庭想いの良きパパでもある。「大宮が大好きです。公園が多いから。休日には家族全員で出かけますね。ときには上野の動物園など遠出もしますよ。とにかく家族と一緒にいるときが楽しい」。そう、家族の話をするときは試合中の厳しい表情とは一変、満面の笑みを浮かべる。家族と過ごす時間が何よりの休息になるそうだ。


 戦士は休息をとった後、またJの戦場へと戻っていく。それは自分が手柄を立てたり褒美をもらうためではない。チームの勝利――彼の目にはそれしか映っていない。ズラタンは、いついかなるときも、こう思っているはずだ。“全てはチームのために”。


<了>

上野直彦
上野直彦

兵庫県生まれ。スポーツライター。女子サッカーの長期取材を続けている。またJリーグの育成年代の取材を行っている。『Number』『ZONE』『VOICE』などで執筆。イベントやテレビ・ラジオ番組にも出演。 現在週刊ビッグコミックスピリッツで好評連載中の初のJクラブユースを描く漫画『アオアシ』では原案・取材担当。NPO団体にて女子W杯日本招致活動に務めている。Twitterアカウントは @Nao_Ueno

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