松坂が再びカーテンコールを浴びるには……あと1カ月、残された時間は多くはない

杉浦大介

恋い焦がれたプレッシャーを感じ続けるために

 あくまで速球を基本線に、だからと言ってそれで圧倒しようとするべきでもない。その日ごとに使える球種を見極め、制球を安定させ、相手のダメージを最小限に抑える方法を探す。できればもう少しテンポ良く、凝縮版の「ロード・オブ・ザ・リング」のように濃密な投球を目指して欲しい。
 問題は、32歳になった今、松坂にそれができるのかどうか。結果を残したメジャーでの1〜2年目ですらも、不安定な登板は多かった。特に今季は残り約1カ月という限られたオーディション期間の中で、必ずしも容易な作業には思えないが……

「日本人のファンの方も多かったみたいですし、たくさんの人に声をかけてもらった。凄く嬉しかったのと同時に、プレッシャーもある。でもやっぱり自分はそのプレッシャーの中で生きて行きたい。これからもずっと歓迎してもらえるようなピッチャーになるために、しっかり結果を残して行きたいです」
 かつて“怪物”と呼ばれた男が漏らした復帰戦後の言葉には、ひときわ実感がこもっているように思えた。高校時代から莫大な注目にさらされ続けてきた豪腕にとって、重圧の少ないマイナー暮らしは物足りなかったのだろう。

 これから先、影がやや薄くなっていた元・名優に、再びメジャーの大舞台でカーテンコールを浴びる機会は訪れるのかどうか。
 残された時間はそれほど多くはない。恋い焦がれたプレッシャーを感じ続けるために、ここで結果を出さなければいけないことは、誰よりも本人が理解しているはずである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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