どん底から浮上した千葉ロッテ不動の四番 今江敏晃が貫くプロ意識

千葉ロッテマリーンズ

どん底から這い上がってきた今江が“不動の4番”として逆転Vへチームを引っ張る 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

 8月25日の時点で111試合を終えて、58勝51敗2分け(勝率5割3分2厘)と、首位・楽天と5.5ゲーム差の2位につけている千葉ロッテ。
 7月は6勝13敗1分けと苦しんだが、8月は6カード連続で勝ち越すなど、12勝10敗。チーム月間打率も7月の2割5分8厘から8月(25日まで)は2割6分4厘まで持ち直し、上昇気流に乗って楽天を追っている。

 その打線を四番として引っ張っているのが、今江敏晃だ。8月25日終了時点で打率はパ・リーグ7位の3割0分9厘6毛で、57打点、7本塁打をマークしている。
「打席で受け身になってはダメ。思い切ってファーストストライクを打つという積極的な気持ちで打席に入っています。決して調子はよくありません。四番として仕事ができるときと、できないときがありますが、踏ん張りながら、勝負どころではなんとか打てているのかなと思っています」

四番として結果を出せる理由

 チームは打順を何度か組み替えてはいるが、今江は5月15日の巨人戦でプロ入り初の四番に座って以来、不動の四番を務めている。
 今江自身が思い描く四番とは「ホームランや長打で流れを変えられる打者」。だから、「不動の四番」と呼ばれることには、苦笑いをしながら首をかしげる。
「僕はそういう打者ではないですからね。四番といっても、僕はホームランも長打も少ない。だから、しっかりチャンスで1本ヒットを打つ確率を高くしようという気持ちでやっています。『つなぎの四番』という意識ですね。四番を任せてもらっているので、チャンスで打席が回ってくることが多い。それはうれしいことだし、やりがいがあります。しっかり期待に応えたいと思っています」

 日本一になった2010年は打率3割3分1厘と好成績を残したが、2011年は2割6分9厘、2012年は2割5分3厘と苦しんだ。今季も開幕当初は苦しい日々が続き、4月末までの打率は2割5分6厘。4月25日の埼玉西武戦ではチャンスの場面で代打を送られるという屈辱を味わっている。
「去年まで思うように打てなくて、打ち方をよりコンパクトにしたり、打席でこれまで以上に頭を使うようにしたり……。いろいろ変えました。それでも結果が出ず、チャンスで代打を送られるような形になってしまった。悔しかったですね」。今江は、言葉を絞り出した。

 悔しいけど、代打を出されてもしかたない。そう考えている自分が情けなかった。
「このまま野球人生が終わっていくのかな?」
 そこまで追い込まれた。これまではそれなりにやれば大丈夫だと日々過ごしてきたが、このままじゃ、いけない。何かを変えなければ……。今江は、もがいた。
「いろんな人に声をかけてもらって、いろんな人に助けを求めました。どうせ終わるなら、手を尽くして、悔いなく終わろう、と」

 それが実を結んで調子が上向きになると、そのタイミングで四番に起用された。四番に座ってからに限ると、打率3割2分4厘、42打点、7本塁打を記録している。
「四番以外を打っていたときは、『何とか塁に出よう』『少しでも走者を進めよう』といろいろ難しく考えすぎていたところがありました。でも、四番だとどんな場面でも監督は『自由に打て』と言ってくれる。だから、思い切っていけるというか、開き直って打席に入れています。それが結果に結びついていると思います」

 そんな今江を、伊東監督はこう評価する。
「いろんな打順を試したけど、四番で『お前に任せたぞ』と言うと、意気に感じてやってくれる。それまでは浮き沈みが激しかったけど、四番は打線の柱だから、どっしりとしているのがいいんじゃないかな。常に『チームのために』という言葉が一番に口をついて出ているし、人間的にも成長したと思いますね。四番という立場が、人を作った。チームにとっても大きいですね」

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