FCソウルの躍進を支える日本人の存在=韓国で存在感を高める菅野淳
韓国クラブでACLを戦う日本人
FCソウルでフィジカルコーチを務める菅野氏は、日本と韓国の違いをどう見ているのか 【元川悦子】
彼らは21日にサウジアラビアに乗り込んでアル・アハリと対戦。ベスト4入りを目論んでいる。韓国勢は09年の浦項スティーラーズ、10年の城南一和、12年の蔚山現代と過去5年間で3度のアジア王者に輝いている。それだけに今季はFCソウルにかかる期待が国内では大きいようだ。
菅野コーチは07年から働いていたヴィッセル神戸との契約が10年末に満了。新天地を探していたところ、FCソウルを率いていたファンボ・カン監督(現大韓協会技術委員長)から「韓国に来ないか」と誘いを受け、11年頭にソウルへ赴いた。そのファンボ・カン監督がシーズン開幕直後の4月に解任され、チェ・ヨンス現監督が後を引き継いだ。彼は磐田時代に選手と指導者という間柄でともに仕事をしたことのある菅野コーチに「そのまま残ってほしい」と打診。菅野コーチも快諾し、現在に至るまで二人三脚が続いている。彼らのチームマネジメントが成功し、FCソウルは昨季Kリーグで2年ぶりの優勝。今季は目下4位だが、首位の浦項スティーラーズとの勝ち点差はわずか5で、まだまだ連覇を狙える位置にいる。
反日感情が高まるも風当たりは強くない
7月28日の東アジアカップ・日韓戦(ソウル)で出された横断幕(編注:「歴史を忘却した民族に未来はない」と書かれた巨大横断幕が掲げられた)に象徴されるように、韓国では反日感情の高まりが深刻化している。日本人コーチへの風当たりも強いのではないかと危惧されるところだが、「ウチはブラジル人、モンテネグロ人などいろんな国の人が集まる多国籍軍。居心地の悪さは感じません。11年8月の日韓戦(札幌)で日本が韓国に3−0で勝ったことも日本サッカーへのリスペクトを高めた。それも追い風になっていますね」と菅野コーチは前向きに言う。
韓国でフィジカルコーチという存在が皆無に等しかったことも、彼らの存在価値を高めている。Kリーグではブラジルからフィジコを連れてくる例があったものの、自分のやり方に当てはめるブラジル流アプローチが韓国人には合わなかったようだ。そんな中、日本でプレーしたホン・ミョンボ現韓国代表監督が池田氏を招聘(しょうへい)。続いて菅野コーチも韓国へ渡った。さらに08年北京五輪代表スタッフの一員だった矢野由治氏が城南一和、FC東京で長く指導した土斐崎浩一氏も今季から蔚山で指導に携わっており、合計4人の日本人フィジコが韓国で働いているのだ。
日韓のフィジカル特性
彼らの身体能力が高いもう1つの要因が食事。炭水化物摂取の比率が多い日本人と違って、韓国人はタンパク質を多く摂るので骨格がガッチリしている。ウチの選手も週3〜4回は焼肉を食べてますから。そういう面は日本も参考にした方がいいかもしれません。
ただ、その能力を使いきれていないのが韓国人の問題。身体能力をより効果的に発揮できるような股関節の使い方やステップさばきなどを身に付けさせたいと考え、工夫を凝らしてきました。2手3手先を読んだ応用力が求められる動きも苦手としているので、判断が伴う内容を盛り込んだ練習も多くしています」と菅野コーチは日韓のフィジカル特性とトレーニング方法の違いについて説明する。