アスリートが語る「オリンピック・パラリンピックの魅力」と「スポーツの力」
アスリートの視点からオリンピック・パラリンピックの魅力を語ってもらった。左からラグビージャーナリストの村上さん、射撃の田口選手、レスリングの松本選手 【スポーツナビ】
ゲストは、レスリングのグレコローマン60キロ級で銅メダルを獲得した松本隆太郎選手と、アテネ、北京、ロンドンのパラリンピックに射撃で出場した田口亜希選手に加え、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会の渡部徹事業部長も参加。ラグビージャーナリストの村上晃一さんが進行役を務め、終始和やかな雰囲気で進んだ。
今回のフォーラムはこれまでと比べて異色の講演だった。ラグビー一辺倒というわけではなく、オリンピック・パラリンピックの魅力をはじめ、夢や希望につながる「スポーツの力」をあらためて再認識できる、有意義な場となった。ラグビー愛好家の参加者にとっても新鮮であり、共感できる部分も多かったのではないだろうか。というのも、16年リオデジャネイロオリンピックからは「7人制ラグビー」が正式採用される。オリンピックはもう決して他人事ではないからだ。ちなみに、もし20年オリンピックの東京開催が決まれば、日本は開催国のため予選免除で男女とも7人制ラグビーに出場できる。
ロンドンはパラリンピックもオリンピックと変わらぬ熱気
いつものラグビートークとは様子が違ったが、参加者は2人の貴重な話に聞き入っていた 【スポーツナビ】
一方、田口選手は甥っ子がラグビーをしており、その存在を身近に感じている。また、かつて神戸で働いていたことから、神戸製鋼のスゴさを目の当たりにした。2人ともラグビーとの接点があることが分かると、会場から拍手が沸き起こった。
続いては、ロンドンオリンピック・パラリンピックに参加して感じたこと、発見したことなどをアスリートの視点から語ってもらった。オリンピック初体験の松本選手は、緊張感の中、ある思いを胸に戦った。
「世界選手権とはやはり違いました。同じ世界大会なんですが、独特の雰囲気というか。本当に選ばれた人しか出られない舞台ですから。ただ、そのときに感じたのが一人で戦っているわけではないということ。これまで支えてくれた多くの人たちと一緒になって戦いました。それくらいの気持ちでマットに上がりました」
パラリンピックに出場した田口選手は、これまでにない感動を覚えたという。一般的に、パラリンピックはオリンピックと比べてどうしてもスケールダウンしてしまうと言わざるを得ない。しかし、パラリンピック発祥の地であるロンドンは違った。オリンピックパークをはじめ各会場は、オリンピックと変わらぬ熱気に包まれていた。
「私はロンドンオリンピックの雰囲気を直接は知らないんですが、『パラリンピックもそれと変わらないほどの盛り上がりだよ』と聞かされました。実際、応援はすごかったですね。オリンピックパークにはいつも観客があふれ、選手たちに熱い声援を送ってくれました。ロンドンの人たちのスポーツを見る目はすごいなと感心させられました」
ボランティアではなく「ゲームメーカー」
2020年に東京でオリンピック・パラリンピックが開催されることになれば、「よりバリアフリー化が進む」と田口選手は期待している 【スポーツナビ】
「ボランティアではなく、ゲームをつくる、大会を盛り上げる。彼らはまさにそうでした。ボランティアというイメージではなく、自ら主体的に関わっていました。大会を盛り上げ、自分たちも楽しもうと。そんな彼らに助けられました」
松本選手、田口選手は自分たちが感じたことを、日本でも多くの人に触れてもらいたいと願っている。そのためにも、オリンピック・パラリンピックの東京招致を実現させてほしいと。松本選手は、東日本大震災の復興支援に携わった経験から、「子供たちの未来のため、笑顔を広げるためにも、スポーツが果たす役割は大きい」と信じている。田口選手は、東京でパラリンピックが開催されることになれば、「今後ますますバリアフリー化が進む」と期待を寄せている。さらに、「私がそうだったように、みんなが夢を持てるようになる。これはとても素晴らしいこと」と強く訴えかけた。
招致委員会の渡部部長は、20年オリンピック・パラリンピックの招致プランを紹介。ここまでの取り組みが順調に来ていることに加え、それでも開催地決定の瞬間まで予断を許さないと説明した。
「招致レースは三つ巴の様相を呈しています。報道等の内容では、6月あたりまではイスタンブールと東京がリードしているような印象を皆さんお持ちだと思いますが、マドリードが直近のプレゼンで追い上げてきました。東京としては順調に来ていると思います。最後までどこに決まるか分かりませんが、手応えはあります」
そして最後に、「東京オリンピック・パラリンピック実現のために私たちができること」として、渡部部長から参加者にこんな提案があった。「東京2020オリンピック・パラリンピック - Tokyo2020」のFacebookに「いいね!」をしよう、という呼び掛けだ。
「東京は現在約7万いいね!です。マドリードは約4万で勝っているんですが、イスタンブールは約8万なので負けています。Facebookのいいね!が増えたからといって、必ずしも有利になるとは限りませんが、少ないよりはいいだろう、ということで、ぜひとも皆さんで『いいね!』の輪を広げてください。開催地決定までになんとか東京は10万いいね!に行きたいと思っています」