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Jとの関係が加速するタイサッカーの現状
アジア戦略がもたらす日本への効果

松井の移籍先候補だったタイリーグ

最終的にはポーランドに移籍した松井だが、タイリーグも現実的な候補として挙がっていたようだ
最終的にはポーランドに移籍した松井だが、タイリーグも現実的な候補として挙がっていたようだ【写真:Newspix.pl/アフロ】

 バンコク・ユナイテッドFC、松井大輔の獲得ならず――。松井のレヒア・グダニスク(ポーランド1部リーグ)への移籍が発表された直後の7月上旬、タイの某メディアにはこんな記事が掲載された。日本代表としてワールドカップ(W杯)南アフリカ大会に出場した松井を獲得直前で逃し、同チームの指揮官が嘆いている、そんな内容だった。移籍へ向けた流れの中で浮上したトピックではなく事後のタイミングであり、内容的にも具体性があるだけに信ぴょう性が感じられるが、実際、関係者によれば動きがあったのは事実だという。記事にある通り、松井のポーランド移籍が決まる直前まで、それはかなり現実味のある話の一つとして進められていたようだ。


 この事実を耳にして、どんな感想を持つだろうか。タイリーグといえば今、Jリーグとのリーグ間提携や複数のクラブ間提携、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)でのブリーラム・ユナイテッドの躍進、そして数多くの日本人選手がプレーしているという事実も徐々に知られるところになっているかもしれない。たしかに「タイ・プレミアリーグ」の名を耳にする機会は増えた、だが、松井の移籍先候補として浮上するほどのリーグなのか? 率直にそんな疑問の声が聞こえてきそうだ。


 実際のところ、まだまだ多くの問題を内包してはいるものの、リーグの規模やレベル、盛り上がり、選手のサラリー面などにおいては近年、目を見張るような進化を遂げているのは事実。その意味ではタイリーグは今、「そういうリーグ」になりつつあると言っていいのかもしれない。昨年から本格的に動き出したJリーグ「アジア戦略」の重要拠点としても注目を集めるタイリーグの現状とは――。

確固たる地位を確立した「日本人選手」

 現在、タイリーグには40名近い日本人選手が所属している。海外のプロリーグに所属する日本人選手の数としては、世界最多クラスの水準であることは間違いないだろう。河村崇大(TOT SC)、中谷勇介(コンケーンFC)、宇留野純(エアフォースAVIA FC)といったベテランをはじめとする元Jリーガーから、プロとしてのキャリアをタイでスタートさせた若手までその顔ぶれはさまざまだ。彼らはいかにしてタイでプレーすることになり、また反対に、なぜタイリーグではそれほど多くの日本人選手がプレー可能なのだろうか。


 まず、最初のきっかけとなったのは、現在、Jリーグアジアアンバサダーとしても活動する丸山良明(現バンコク・グラスアカデミーコーチ)の存在だった。2009年から現役最後の3年間をタイリーグで過ごした丸山はタイサッカーに大いなる可能性を感じ、自らその現状を伝えるレポートを作成するなどして、タイリーグと日本人選手の橋渡し役を買って出た。すると、丸山がタイにやってきた時にはわずか3名だった日本人選手はみるみるうちに増加し始めたのだ。


 さらにその流れの中で、Jリーグによる「アジア戦略」が動き出し、タイリーグも年々規模を拡大させながら成長していったことで、日本人選手のタイ移籍の流れは今季まで右肩上がりで伸び続けてきた。リーグの年間ベストイレブンにも選出されたことのある猿田浩得(バンコク・グラスFC)や櫛田一斗(チョンブリーFC)をはじめ、チーム内で高評価を受ける日本人選手も多く、近年のアジアをリードしてきた日本サッカーへのイメージも相まって、「日本人選手」はタイリーグにおいて確固たる地位を築くに至っている。

本多辰成
1979年生まれ。静岡県浜松市出身。出版社勤務を経て、2011年よりバンコク在住。タイ・プレミアリーグを中心に、Jリーグの「アジア戦略」の拠点としても注目を集める東南アジアサッカーを追う。日本のサッカー専門誌や現地の日本語媒体に記事を寄稿、「サッカー小僧」(白夜書房)では創刊号よりコラム「微笑みの国にて。」を連載中

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