中本の入賞に日本の世界での戦い方を見た=瀬古氏らが語る世界陸上男子マラソン総括

構成:スポーツナビ

中本が5位入賞を果たした男子マラソン。今回のレースを瀬古氏や金氏はどう見たのだろうか? 【Getty Images】

 陸上の世界選手権第8日が17日、ロシアのモスクワで行われ、ルジニキ・スタジアムを発着点とする周回コースで行われた男子マラソンで、中本健太郎(安川電機)が2時間10分50秒の5位に入った。アフリカ勢のペースの上げ下げに無理に付いていかず、自分のペースで粘りの走りを見せ、日本勢8大会連続となる入賞を果たした。
 優勝はロンドン五輪金のスティーブン・キプロティチ(ウガンダ)で2時間9分51秒。

 そのほか、藤原正和(Honda)が2時間14分29秒で14位、前田和浩(九電工)が2時間15分25秒で17位、川内優輝(埼玉県庁)が2時間15分35秒で18位だった。また、堀端宏行(旭化成)は、途中棄権した。

 スポーツナビでは、元長距離・マラソンランナーとして活躍し、現在はDeNA Running Club総監督である瀬古利彦さん、NPO法人ニッポンランナーズ理事長であり陸上競技・駅伝解説者の金哲彦さん、筑波大学体育学専攻で体力学などの研究をしている榎本靖士准教授の3人に、男子マラソンを総括してもらった。

マラソンは持ちタイムではない、レース巧者が勝つ(瀬古利彦)

 中本選手のレース運びはさすがだなと思いますね。テグの世界選手権(2011年)、ロンドン五輪(12年)と経験し、ロンドン五輪で6位入賞をしたこともあって、余裕のレース、貫録すら感じられました。42.195キロという距離のペース配分、体のつくり方、心のつくり方がしっかり身についている感じです。

 前半から前についてメダルを狙う、という姿勢が見られました。ただ、まだまだ「チェンジ・オブ・ペース」(スピードに緩急をつけ、上げ下げすること)の部分に苦手があるので、そこの部分を克服しないと、入賞なら対応できますが、メダルを狙うには足らないと思います。

 ほかの日本人選手は、入賞を狙うためのレースができなったですね。川内選手らは、途中で無理に前についていこうとして、力を使い過ぎてしまいました。そこは中本選手のように自分のペースを守れるようにしないと、余裕が無くなってしまいます。余計な力を使ったら、落ちてしまいますよね。冬のレースとは違うので、夏のレースは無駄なことがあってはいけません。
 それと、川内選手ですが、自分で『夏のレースは苦手』と話し、夏と冬で区別してしまっているのもダメですね。苦手意識があるだけで、余裕が持てなくなります。夏も冬もマラソンは一緒ですから。

 優勝した選手を見ると、マラソンは持ちタイムではないということです。エチオピアの選手と比べると、2分ぐらいベストタイムが違いますから。日本の選手も中本選手が一番タイムが遅いので、同じことでしょう。やはりレース運びというのが大事なんだということです。常に良い位置につけていましたからね。レース巧者が勝つということです。

 しかし、日本の選手には今後、持ちタイムは上げてほしい。2時間8分台では世界で勝てないと思います。2時間6分台でいかないとダメですね。タイムが遅過ぎると、やはり余裕がありません。つくのがやっと、という気持ちになるので、今回のように遅いペースのレースで、後ろにつくしかなくなってしまうと思います。15分10秒くらいのペースで脱落するようではダメです。ですので、冬のレースでしっかり経験を積んで、レベルアップをしていって、世界と戦えるように頑張ってほしいです。

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