代理人が明かすボルトのイメージ戦略=桐生を育てるなら「パートナー探しから」

構成:スポーツナビ

“世界最速の男”ボルトのイメージはどのように作られたのか?代理人のシムス氏が明かした 【Getty Images】

 陸上の世界選手権(ロシア・モスクワ)も残すところあと2日。日本時間17日25時05分から行われる男子200メートル決勝には、“世界最速の男”ウサイン・ボルト(ジャマイカ)が、さらなる伝説を作るべくレースに登場する。

 2008年北京五輪の“世界新記録で3冠”の衝撃から早5年。全世界で彼の名前を知らない人はほぼいないだろう。人類史上最速の男は、その明るさとユーモア、オープンな性格で競技以外でも人気を博し、陸上ファンのみならず、多くの人々から愛されている。

 その彼をマネジメントしているのが、世界最王手のスポーツマネジメント会社「PACE」。ボルトのほか、今大会男子1万メートルと5000メートルのニ冠に輝いたモハメド・ファラー(英国)ら一流選手が所属している。
 スポーツナビでは、ボルトの代理人として活躍するリッキー・シムス氏にインタビューを行い、世界一有名な陸上選手を作り上げた経緯を聞いた。

最初の仕事は、ケガの回復へのサポート

――ボルト選手の代理人を担当してから何年になりますか?

 03年から担当しているので、もう10年になりますね。

――どのようなきっかけで、彼の代理人となったのでしょうか?

「PACE」の前身となる会社の創業者が01年に亡くなっったことで(体制が)新しくなり、そのタイミングで私がジャマイカの選手たちを担当するようになりました。そこで未来の五輪チャンピオン、世界記録保持者を担当しようと思っていたのですが、その中にボルト選手もいました。

――代理人を始められた頃はどのようなことをされましたか?

 ちょうど02年の世界ジュニア選手権で優勝した翌年で、ヨーロッパのツアーなどに参加させようと思っていました。ただ、ケガをしてしまい、04年のアテネ五輪には参加させたのですが、結果を残せませんでした。そのケガを一刻も早く治そうと、ドイツの名医を紹介するなど、回復させるように努めたのが最初の仕事です。その頃は、100メートルだとケガのリスクが高いということで、コーチと話し合い200メートルを中心に考えていました。ただ、07年になって、100メートルで10秒03を記録し、08年の初めには(ジャマイカの)キングストンで行われたジャマイカ国際で9秒76という記録で走りました。そこから、五輪の優勝候補にも挙げられるようになりました。

――北京五輪前にはすでに注目の選手として名前が挙がっていました。そのころに心掛けていたのは?

 五輪ではすごいプレッシャーがかかるので、レース前にリラックスするための環境を整えました。親友、家族などと会う機会を設け、コーチやトレーナーなどの準備もしました。昨年のロンドン五輪でも同じような形でリラックスする環境を作りました。今でも彼を楽しませたり、ジョークで話す機会を与えたりしています。

――北京五輪では100メートル、200メートルと当時の世界記録を更新。その衝撃以降はどのようなサポートをしていますか?

 今は彼のプロモーションを中心に行っています。彼の人気を持続させるためにウェブサイトを作ったり、フェイスブックの公式ページを運用したり、数々のプロモーションを行っています。また、いろいろな会社からオファーが来るので、そこから受ける仕事を選んでいます。

――ボルト選手へのオファーを受ける上で、基準にしていることは?

 第一に、彼の“ブランドイメージ”です。例えば、北京五輪の後、電気自転車のCMのオファーが来ました。ただ、それは彼のイメージにも合いませんし、彼自身も興味がなかった。それに対して、自動車メーカー・日産自動車の「GT‐R」のようなCMに関しては、彼も車が好きだし、“スピード”というブランドイメージも合うので受けました。そのプロモーションで横浜に行ったこともあります。ほかにもスポーツメーカーのプーマや、時計のスウォッチなどは彼が好きなメーカーであったり、彼のイメージに合うということで依頼を受けています。
 第二に、そのプロモーションにどれだけ時間がかかるかを考えています。僕らにはたくさんのリクエストが来るので、すべてをこなすことはできません。それに何が彼を成功に導いているかというと、もちろん陸上競技です。だからこそ、陸上の練習ができることを考慮に入れて、スケジュールの調整を行っています。

――イメージ戦略を考える中でメディアとの関係も重要だと思います

 メディアとはうまくやっていますね。彼自身、とてもメディアに対してオープンで、家族のように接しています。
 ただ、すべてに対応をしていると時間が足りません。ですので、一度に多くのメディアに取り上げてもらえるような記者会見を開いたり、今回の世界選手権前にはコンサートイベントに参加させて、そこでメディアのインタビューを受けたりしました。

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