川内らが上位に進出するための鍵は?=瀬古氏らが解説する男子マラソン展望
女子マラソンの福士に続くことができるか男子マラソン。注目の川内、中本らの活躍を瀬古氏らが占った 【写真は共同】
大会初日に行われた女子マラソンでは、福士加代子(ワコール)が銅メダルを獲得。木崎良子(ダイハツ)も4位入賞を果たすなど、日本の選手たちが真夏の過酷なレースで、真価を発揮した。後に続きたい男子代表には今回、川内優輝(埼玉県庁)、中本健太郎(安川電機)、堀端宏行(旭化成)、前田和浩(九電工)、藤原正和(Honda)の5人が選ばれた。大きな期待が懸かる男子マラソン勢は女子の活躍に続くことができるだろうか。
スポーツナビでは、元長距離・マラソンランナーとして活躍し、現在はDeNA Running Club総監督である瀬古利彦さん、NPO法人ニッポンランナーズ理事長であり陸上競技・駅伝解説者の金哲彦さん、筑波大学体育学専攻で体力学などの研究をしている榎本靖士准教授の3人に、男子マラソンの見どころを解説してもらった。
日本新も狙える選手たち、積極的なレースを(瀬古利彦)
日本代表選手についてですが、川内選手はちゃんと練習ができていました。前回の世界選手権テグ大会(18位)も出ていますし、経験もあります。気負うことがなければ、良い結果を出せるのではないでしょうか。ただ結構カッとなってしまうタイプ。『進退を懸ける』と話していましたが、気持ちは分かりますが、あまり気負い過ぎるとパフォーマンスが落ちるので、自分の力を出すことだけを考えてやれば良いと思いますよ。
中本選手は世界大会を十分経験してきているので、会見でも気持ち的に平坦と言いますか、上げ下げがないので、さすがだなと思いました。ペースの上げ下げが苦手なので、いかにペースが急に上がっても、自分の力を温存できるかというところが鍵ですね。
堀端選手はニューイヤー駅伝が終わってから6月まで、けがのため練習が足りなかったそうです。それが本当だったら、厳しいですね。マラソンにとって、練習量というのはパフォーマンスに直結します。苦しくなった時に出てくるんですよね。もし超スローペースで30キロまで行って、あと10キロまでスタミナを温存できるのなら、チャンスはあるかもしれません。
前田選手は練習がしっかり積めているようでした。彼も経験値があるし、この5人の中では一番スピードもあります。東京マラソンでは5キロ14分30秒台でも粘れる能力も示したので、天候次第でチャンスがあると思います。
藤原選手は、スタート地点に立てば良い結果を出している選手。中本選手と同タイプですよ。安定感があるので、中本選手、藤原選手は崩れることはないと思います。
レース展開としてはエチオピア代表が2時間4分台の(記録を持つ)選手をズラッと並べてきましたので、誰かを勝たせるために、チームプレーをするんではないかと思いますよ。対して日本の5人は、良いペースで走れれば、日本記録も狙える選手たち。だから恐れないで、記録を狙ってほしいですね。6分台で走れれば、メダルを取るチャンスもあると思います。
30度近かった気温が20度ぐらいになると肌寒く感じるので、これは冬のレースと一緒に思えるはず。冬の17、18度が暑く感じるように、夏の20度は寒く感じるというところです。なので、選手には自己新を出してほしい。1人でも2人でも自己新を出せば良い結果がついてくるはずです。メダルというより、今回はどんどん記録を狙って積極的に前にいってほしいですね。