大記録目前イチローを包む米国の祝賀ムード

杉浦大介

ヒットのペースは少し落ちているが……

日米4000安打目前、米国ではイチロー祝賀ムードにあふれている 【写真は共同】

“日米通算4000安打”。そんな途方もない数字への到達が間近に迫り、イチローのヒットのペースが少し落ちている。
 現地時間8月9日のタイガース戦では3安打を放ったが、以降の5試合では17打数2安打と低迷。8月12日からのエンジェルスとの4連戦中、左投手が先発だった13、15日の2試合でスタメンから外れた。
 アルフォンソ・ソリアーノが加入し、アレックス・ロドリゲスが復帰したヤンキース打線は復調気配だけに、出場機会が減るのも仕方ないかもしれない。結果として、15日のゲームを終えた時点で通算3994安打に止まっている。

「全然(意識しないわけ)じゃないけど、僕の中ではどうということはないですかねえ。ちょっと廻りのテンションが分からないから」

 9日の試合後にはそう語っていたイチローだが、日本人のメディアも少なからず増え、1本打つごとにヤンキースタジアムのジャンボトロンにカウントダウンが映し出される。数々の偉業を成し遂げて来たヒットマシーンと言えど、この状況でまるで意識しないことはあり得ないだろう。
 もっとも、不調時でもヒットは打てる選手だけに、遠からず記録を達成することは間違いない。明日からのレッドソックス3連戦でチャージをかけるか、地元に戻って迎える来週のブルージェイズとのシリーズ中まで持ち越すか。

 4000安打まであと10数本の頃から、ヤンキース広報もイチローに関するデータを集めた資料を記者席に配置した。1本打つごとに数値はアップデイトされ、記録到達の瞬間に備え続けている。地元で達成となれば、昨季以降はイチローと親密な“ラブアフェア”を続けて来たニューヨーカーから、今回も温かい歓声を浴びることになるに違いない。

アメリカの記者たちも非常に肯定的

 そんな祝賀ムードがある一方で、これまで何度か価値を取沙汰されて来た“日米通算”記録に対し、依然として違和感を感じるファンもいるのかもしれない。
 レベルの差以前に、日程、球場など様々な点で違う2リーグの記録を、比べるだけでなく合計してしまうのはいかがなものか。そんな無理をせずとも、日本、アメリカでのそれぞれの実績で讃えれば良いだけのことではないか。
 そのような意見を語る関係者は米メディアに少なくなかったし、筆者も同じだった。イチローに関しても、あくまでメジャーでの2500本安打、3000本安打到達の際に大きく取り上げられるべきではないのか……?

 ただ、今回の日米通算4000安打という記録に対しては、アメリカの記者たちも非常に肯定的なように思える。ニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナルといったニューヨークの大手紙も特集記事を出し、インターネット媒体ではCBSスポーツ、ヤフースポーツも同様。スポーツ・イラストレイテッド誌電子板も、達成時には何らかの企画を考えているとの話だった。

「日米通算記録に対する抵抗は理解できるが、それでもイチローが成し遂げていることの素晴らしさに疑問を挟む余地はない」
マレー・チャス(元ニューヨーク・タイムズ紙)

「イチローのこれまでの実績を見る限り、メジャーリーグでキャリアをまっとうしていたら4000本安打に到達していたんじゃないかと思える」
マーカス・ヘンリー(ニューズデイ紙)

 日本人選手の話でも常に気を遣わずに意見をくれる周囲の記者仲間たちも、そんなコメントを返してくれた。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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