田中将大、進化の2013 データで探るその変化
絶対エース田中 気になる今季減の“ある”項目
開幕16連勝など、他を圧倒する活躍ぶりを見せる田中将大 【写真は共同】
ここまで19試合に登板した田中。すでに規定投球回を超える150回を投げている。1試合平均の投球回数は7.89回で、これは田中にとっては歴代2番目の数字だ。また、今季規定投球回に到達している投手の中で、堂々のトップ(8月12日現在)。先発投手として誇るべき数字である。そんな、今季も多くの投球を重ねている中で、例年に比べて非常に数が少ないものがある。“奪三振”の数だ。
昨季は173回を投げ、169奪三振と、1イニング1個に近いペースで三振を記録した田中だが、今季は150回を投げ120奪三振。1イニング辺りの奪三振の数は0.8個で、これは田中のキャリアの中で2番目に少ないペースである。田中は打ち取るタイプへのモデルチェンジを図っているのだろうか。
増えたツーシーム 攻略がさらに困難な投手に
この年を境に、今度は別の球種の割合が増えた。小さい変化でバットの芯を外し“打ち取る”球種、ツーシームだ。11年にも全体の13%を投じていたが、12年には17%と割合を増やし、今季も同じく17%を投げている。これだけ見ると、1試合に平均100球を投じるとすれば、わずか4球ほどの差しかないのだが、さらにこの数字をひも解くと大きな差が見えてきた。
投球全体ではなく、カウント状況でのツーシームの割合を見てみると、11年は0ストライク、1ストライク時に投じたのがともに17%だったのに対し、12年は同22%、21%、13年は23%、22%と、11年時に比べて5%以上、多く投じているのだ。田中にはスライダーとフォークボールという、彼の代名詞ともいえる素晴らしいウイニングショットがある。追い込まれたら打つのは難しいと打者も早いカウントからバットを出してくるはず。そんな打者をまるで手玉に取るかのように、早いカウントでも打ち取る球種を投じている。考えただけでも、攻略するのが非常に困難だ。
また、今季さらに三振の数を減らしている要因として挙げられるのがフォークボールの使い方である。一般的には追い込んでから“決め球”として投じるこの球種を、今季の田中は早いカウントから投じるようになった(12年:0ストライク時5%、1ストライク時11%→13年:0ストライク時7%、1ストライク時18%)。同球種を仕掛けの早い打者に対し早めに使うことで、さらに“打ち取る”確率を高めたのであろう。
「勝利のため」の投球 変化は“先”を見てのことなのか
また、下世話なところでいえば、球数を減らしたいという“先”を見た取り組みも勘繰ってしまうところではある。それでも、チームの勝利という一番の目標をこれ以上ない形で達成している田中に、誰も不満を感じることはないはずだ。
実際その変化に対し、田中が先発した試合の援護点は平均5得点以上と野手も手厚い援護でエースを盛り立てている。勝利のためと口にする田中の投球は、紛れもなく、チームを浮上へと導いているのだ。
今年でプロ7年目のシーズンを過ごしている田中。7年目といえば、現在メジャーリーグで活躍する、先輩でありライバルのダルビッシュ有が日本での最後のキャリアを過ごした年である。田中の頭にそれがないはずはないだろう。
この時期になり、周りからも“次のステップ”についての声が増えるはずだ。でもきっと、田中はそんな雑音を耳にせず、突き進むだろう。チームが9年という歴史を経て、初めて栄光に手が届きそうないま、マウンドに上がるのと同様に、まっすぐ前だけを見て、役割をまっとうするはずだ。だからいまはただ、彼の素晴らしい投球を目に焼き付けておきたい。田中の変化は自身のためでなく、チームの栄光のために向いているのだから。
<了>
(データ提供:データスタジアム)
(文:ベースボール・タイムズ)
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ