代表招集の正当性を示したFC東京の3人=白熱の多摩川クラシコで見せた持ち味
見ごたえがあった多摩川クラシコ
多摩川クラシコは引き分けに終わったが、3カ月半前の対戦よりも白熱したレベルの高い一戦となった 【写真は共同】
今季2回目の多摩川クラシコは、川崎フロンターレが先行し、FC東京が追いつく展開となり、2−2で引き分けた。4点すべてに見ごたえがある好ゲームだったのではないだろうか。
1回目の対戦(4月27日J1第8節)では川崎が下位に沈み(8節終了時点で15位)、自分たちの目指すサッカーができずに苦戦している状況だった。このときのFC東京は川崎のパスを読み、ことごとく網にかけては攻撃につなぎ、常に相手を上回る試合運びができていた。2−0で勝利して評価が高かったFC東京だが、その試合でも川崎に手こずっていた。川崎がフォーメーションを1ボランチに変更したあとのセカンドハーフは、どう守備を構築するのかピッチ内で答えを出せないままに(試合終了間際にサブだったチャン・ヒョンスをアンカーで途中出場させ、ボランチのふたりを前に出して4−1−4−1にする回答をベンチは提示した)時間が過ぎていった。
3カ月半ぶりに対峙(たいじ)する川崎はすべてが良くなっていた。
前半45分間の焦点は中村憲剛、レナト、大久保嘉人、アラン・ピニェイロを核とする川崎の攻撃を、権田修一、徳永悠平、チャン・ヒョンス、森重真人、高橋秀人の日韓代表組が顔をそろえるFC東京の守備がどう防ぐかだった。サイドバック(SB)が上がり、中盤から前が流動的になる中、川崎にゴール前中央やや左にスルーパスを通される場面が何度かあった。そこが狙いどころだったのか。しかし中を締める意識の強さで失点を減らしてきたFC東京は、森重とチャン・ヒョンスが絞り、抜け出した選手に思うようなフィニッシュをさせない。水際の落ち着いた対応で川崎の攻撃を防ぐことができていた。
後手に回った結果生まれた失点
問題のFC東京の失点場面は、川崎のGKからのビルドアップから始まっていた。GK→左SB→トップ下→サポートに入った左ボランチに戻してトップ下にリターン→左SBに戻して前方の左ウイングへというパスルートで、まずFC東京の守備網を回避した。左SBにボールが出てから前→後→前→後を2回繰り返し、的を絞らせない。
左ウイング、つまりレナトにわたった時点で先ほどのパス回しに参加していた中村が前方に走り出していてレナトに対するパスレシーバーになる。徳永はレナトの前を切るが中村へとパスが出て、徳永は置いていかれるかっこうとなった。この時点でFC東京は後手を踏んでいる。中村には米本拓司がついていった。もしレナトが中村にパスを出して終わりなら、米本が中村にくらいつけばそこで止めることができたが、左から中央へと横切ろうとするレナトに中村が壁パスで返したため、米本までもが振り切られてしまった。
米本は中村をあきらめてレナトを追う。中央ではチャン・ヒョンスと森重が待ち構えている。そのままではフィニッシュに至ることはできない。そこでレナトはさらに右横でフリーになっていた大久保へとパス。高橋がボランチの位置から下がって大久保のマークについた。
しかし左へと重心が傾いていた大久保は右へと機敏に切り返す。パスでもシュートでもなくドリブルだ。大久保の左斜め前に先回りしてミドルシュートのコースを塞いだ高橋がマークを外したようなかっこうで置き去りにされた。
大久保には森重が急いでアプローチ。ここで大久保はボールを放し、素早くゴール前に走り出す。ボールは右ウイングのピニェイロへ。ゴール前のカバーに行っていた太田宏介がこのピニェイロの前を塞ぐが、ここでもワンツー。森重も太田もつり出されてペナルティ―エリア内はほぼがら空きだ。そこに進入してピニェイロからのリターンを受けた大久保とGK権田が1対1。権田も前進しながら体を横に寝かせるようにしてシュートコースを狭め、そのうえで大久保がシュートする方向に手を伸ばすが防ぎ切れず、ゴール左隅に決められてしまった。この間、わずかに25秒ほどである。