千葉対決制し市立船橋が誇示した強さ= 悲喜こもごもの夏を過ごした逸材たち
流通経済大柏を破り、3年ぶり8度目の優勝を達成した市立船橋の選手=レベルファイブスタジアム 【共同】
市立船橋の優勝で幕を閉じた高校生たちの真夏の祭典。彼らの戦いはこれで終わったわけではない。高円宮杯プレミアリーグ、プリンスリーグ、県リーグの戦いがあり、そして冬には、高校サッカー界の一大イベントである高校選手権が控えている。
悲喜こもごもの夏を過ごしたタレントたちは、早くも次なるステージで輝くべく、新たなるスタートを切っている。ここではこの夏に輝いたタレントを紹介し、冬への楽しみにつなげていきたいと思う。
エース石田は決勝で2得点1アシストの活躍
主将の磐瀬は累積警告により、決勝の舞台に立てなかったが、その分、エース石田が存在感を発揮した。大会前から好調を維持するエースストライカーは、今大会に入ってもその勢いは止まらなかった。3シャドーの左に位置し、ボールキープを得意としながらも、オフ・ザ・ボールの動きにも長けている石田。相手の視界に消えてから動き直すプレーは、相手DFを何度も翻弄(ほんろう)した。しかも、シュートセンスがずば抜けており、多彩なパターンのシュートで正確に枠をとらえるのだから、相手にとっては厄介極まりない。
「昔は動きが少ない選手だったけど、上でやっていくためには、もっとランニング一つをとっても質の高さや相手の嫌がることを意識している。きれいなプレーではなく、泥臭く、日本代表の岡崎慎司選手のようなプレーを出していかないと、成長していかないと思っています」(石田)
決勝戦では1−1で迎えた28分に中盤でボールを受けると、鋭い切り返しからDF2人をかわして、前線に飛び出したFW室伏航に絶妙なタイミングでスルーパス。2点目をアシストした。2−2で迎えた46分には勝ち越しゴールを決めると、64分には試合を決定づける4点目を挙げる。左サイドに開いてMF横前裕大のパスを受けると、前に立ちはだかったDFを上体を起こして間合いを置き、一瞬の横の動きでDFを外して、GKの股を破った。決勝で圧巻の2得点1アシストの活躍。磐瀬不在の決勝だったが、石田が攻守に安定したサッカーを披露するチームをけん引した。
チームに欠かせない存在の主将・磐瀬
決勝には出場できなかったが、磐瀬の功績も大きかった。チームに欠かせない存在で、「石田と磐瀬は調子が良かろうが悪かろうが使い続ける選手」と朝岡監督に言わしめる。本来はボランチであるが、ゲームを読む力、ボール奪取能力、ビルドアップ能力が非常に高く、今年の市立船橋独特の布陣である「2−4−3−1」のツーバックシステムの中核を担う。スペースを埋める動きに長け、相手に対してもひるむことなくアタックする。トータルバランスに優れているからこそ、リスクある戦い方を実行することができる。決勝で彼不在によ3バックに変更したことから見ても、このシステムはまさに彼がいないと成立しない。
「今は守備のレベルを上げている最中。将来的にボランチで勝負できるように、1対1の守備や判断スピードを上げていかないといけない」と高い意識で将来もしっかりと見据えた磐瀬は、さらなる成長が楽しみな選手だ。