千葉対決制し市立船橋が誇示した強さ= 悲喜こもごもの夏を過ごした逸材たち

安藤隆人

流通経済大柏を破り、3年ぶり8度目の優勝を達成した市立船橋の選手=レベルファイブスタジアム 【共同】

 市立船橋と流通経済大柏の千葉県決戦となった今年のインターハイ決勝。千葉県予選決勝と同一カードとなった一戦は、市立船橋がリベンジを懸けて臨んだ流通経済大柏を4−2で下し、3年ぶり8度目の夏の頂点に輝いた。

 市立船橋の優勝で幕を閉じた高校生たちの真夏の祭典。彼らの戦いはこれで終わったわけではない。高円宮杯プレミアリーグ、プリンスリーグ、県リーグの戦いがあり、そして冬には、高校サッカー界の一大イベントである高校選手権が控えている。
 悲喜こもごもの夏を過ごしたタレントたちは、早くも次なるステージで輝くべく、新たなるスタートを切っている。ここではこの夏に輝いたタレントを紹介し、冬への楽しみにつなげていきたいと思う。

エース石田は決勝で2得点1アシストの活躍

 ファイナリストの両チームには、ともにプロ注目のタレントがそろっていた。市立船橋のFW石田雅俊、DF磐瀬剛、流通経済大柏のMF青木亮太、小泉慶だ。

 主将の磐瀬は累積警告により、決勝の舞台に立てなかったが、その分、エース石田が存在感を発揮した。大会前から好調を維持するエースストライカーは、今大会に入ってもその勢いは止まらなかった。3シャドーの左に位置し、ボールキープを得意としながらも、オフ・ザ・ボールの動きにも長けている石田。相手の視界に消えてから動き直すプレーは、相手DFを何度も翻弄(ほんろう)した。しかも、シュートセンスがずば抜けており、多彩なパターンのシュートで正確に枠をとらえるのだから、相手にとっては厄介極まりない。

「昔は動きが少ない選手だったけど、上でやっていくためには、もっとランニング一つをとっても質の高さや相手の嫌がることを意識している。きれいなプレーではなく、泥臭く、日本代表の岡崎慎司選手のようなプレーを出していかないと、成長していかないと思っています」(石田)

 決勝戦では1−1で迎えた28分に中盤でボールを受けると、鋭い切り返しからDF2人をかわして、前線に飛び出したFW室伏航に絶妙なタイミングでスルーパス。2点目をアシストした。2−2で迎えた46分には勝ち越しゴールを決めると、64分には試合を決定づける4点目を挙げる。左サイドに開いてMF横前裕大のパスを受けると、前に立ちはだかったDFを上体を起こして間合いを置き、一瞬の横の動きでDFを外して、GKの股を破った。決勝で圧巻の2得点1アシストの活躍。磐瀬不在の決勝だったが、石田が攻守に安定したサッカーを披露するチームをけん引した。

チームに欠かせない存在の主将・磐瀬

 石田のほかにも、磐瀬の代わりにキャプテンマークを巻いたDF柴戸海、DFラインに入った田代圭亮も高い守備能力を見せた。朝岡隆蔵監督から「トップの位置から良い動き出しで攻撃のアクセントとなっている。重宝して使っている」と称賛された横前や、仕掛ける力のある室伏、決勝でスーパーセーブを連発したGK志村滉など、能力の高い選手が力を発揮したがゆえの優勝であった。

 決勝には出場できなかったが、磐瀬の功績も大きかった。チームに欠かせない存在で、「石田と磐瀬は調子が良かろうが悪かろうが使い続ける選手」と朝岡監督に言わしめる。本来はボランチであるが、ゲームを読む力、ボール奪取能力、ビルドアップ能力が非常に高く、今年の市立船橋独特の布陣である「2−4−3−1」のツーバックシステムの中核を担う。スペースを埋める動きに長け、相手に対してもひるむことなくアタックする。トータルバランスに優れているからこそ、リスクある戦い方を実行することができる。決勝で彼不在によ3バックに変更したことから見ても、このシステムはまさに彼がいないと成立しない。

「今は守備のレベルを上げている最中。将来的にボランチで勝負できるように、1対1の守備や判断スピードを上げていかないといけない」と高い意識で将来もしっかりと見据えた磐瀬は、さらなる成長が楽しみな選手だ。

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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