甲子園でエースは連投すべきなのか?
“経験者”土肥義弘が語る
春のセンバツ大会では5試合で772球を投げた済美の安楽。連投問題について、“経験者”土肥氏の意見は――
春のセンバツ大会では5試合で772球を投げた済美の安楽。連投問題について、“経験者”土肥氏の意見は――【写真は共同】

 甲子園では、毎年のように球児の「投げ過ぎ」が議論を巻き起こす。8月のもっとも暑い時期に、連日マウンドに向かう姿は感動を呼ぶ一方で、ケガの危険性や、ベストパフォーマンスを出せない点が問題視されている。

 では、実際に甲子園で連投した投手はどう感じているのか?

 1993年、夏の甲子園で2年生エースとして全5試合を完投し、春日部共栄高を準優勝に導いた土肥義弘氏(元西武、横浜)に話を聞いた。

2年夏に全5試合を完投「投げれば投げるほど球威が出てきた」

――土肥さんは2年生の夏に甲子園で準優勝をされていますが、登板状況はどのようなものだったのでしょうか?


 5試合を一人で投げて、最後は連投でした。自分としてはすごく調子が良くて、きれいなフォームで投げられていました。フォームが良かったので、投げれば投げるほど筋肉がほぐれて、球威が出てくるイメージです。

 高校卒業後に社会人、プロと進みましたけど、連投して筋肉の状態があんなに良かったのは高校生の時だけですね。


 なぜ、連投しても状態が良かったかと言うと、甲子園に行く前に充実したトレーニングができていたからだと思います。センバツより前の冬の時期にウエイトトレーニングとシャドウピッチングを計画的に行いました。

 プロは毎日のように試合があるので難しいのですが、高校生は春、夏の大会に合わせて準備の時間を多く取れます。そこで適切なトレーニングができていれば、甲子園でも良いピッチングができると感じました。


――実際に投げていて、体力的にはどうだったのでしょうか?


 調子が良かったこともあって、気持ちよく投げられましたね。高校生の時期は成長ホルモンがもっとも分泌される時期なので、回復力も優れています。みなさんも「あのころは体力あったな〜」と思っているのではないでしょうか? 体が回復に適した年代だったこともあって、次の試合までにはしっかり準備ができていました。

連投をするために「一番、大事なのはフォーム」

――連投することについてはどのように感じていましたか?


 エースを任された以上、完投するのが当たり前と感じていました。初戦の近江兄弟社戦は点差もつきましたが完封できて、準々決勝の徳島商戦も4点を取られましたが、後半に良くなりました。

 最初に話したように投げれば投げるほど調子が上がる感覚だったので、苦にはならなかったです。


 精神的なプレッシャーはもちろんありました。埼玉の代表としてふがいないピッチングはできないと思っていましたし、地域で応援してくださる方の期待に応えたいと思っていました。

 あれだけのプレッシャーの中で投げられたことは誰でもできることではないですし、自分にとっても財産になっていると思います。


※土肥氏の93年、夏の甲子園の試合成績(全試合を完投)

・2回戦 vs.近江兄弟社 12−0

・3回戦 vs.日大山形  3−2(延長10回)

・準々決勝 vs.徳島商  11−4

・準決勝 vs.常総学院  5−3

・決勝  vs.育英    2−3


――連投をするとして、大事になるのはどこでしょうか?


 一番、大事なのはフォームだと思います。フォームが自身に合っていて、そのためのトレーニングができていれば、体としては投げられる時期なので。


 ただ、状態が悪くなったり、フォームが崩れていても投げさせてしまうケースがあるのが日本の野球の現状です。そこを見極めるのはコーチやトレーナーが多いプロ野球でも難しい。だからこそ、投手や監督は違和感を見逃さないように注意し、状態を確認しあって、必要な時にはブレーキをかけてほしいです。

構成:スポーツナビ

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