大阪桐蔭、ライバル倒して挑む甲子園連覇
大阪桐蔭vs.履正社 昨秋から3度目の対戦
夏連覇に挑む大阪桐蔭。大阪決勝では、ライバル履正社と激突した 【写真は共同】
下馬評は履正社。昨秋、今春と大阪桐蔭を破っただけでなく、今大会では夏の大阪大会で史上初めて準決勝までの全試合でコールド勝ち(準決勝のコールドが採用されたのは92回大会から)してきた戦いぶりからそう評された。
中でも履正社を支えてきたのが投手陣。エースの東野龍二(3年)、同じ左腕の東範幸(3年)が交互に先発を務め、右の阪本大樹(3年)が後ろに控えていた。
『履正社投手陣からそう多くの得点は望めない』ということをライバル校の多くが感じていただろう。
しかし決勝という甲子園出場の掛かった勝負の舞台で勝利したのは大阪桐蔭だった。昨秋、今春とライバルに敗れたことで、力の差は見せつけられてきたが、大一番に備えてしっかりと対策を講じたことが勝利につながった。
決勝の公式記録を見れば、両校に明らかな差が生じていることが分かる。それが東野と大阪桐蔭のエース・葛川知哉(3年)の投球数の差だ。9回を完投した葛川は116球、9回途中で降板した東野は168球を投じた。この数字だけでも大きな差である。
さらに大きなポイントは両チームが三者凡退に終わった初回の入り方。14球で終わった東野だが、大阪桐蔭・1番の峯本匠(2年)に2球ファウルされている。3番の森友哉(3年)も1球ファウル。結局何でもない三者凡退に終わるのだが、この初回の攻撃で大阪桐蔭打線は『東野からはある程度得点できる』という手応えを感じたことだろう。
逆に履正社は、大阪桐蔭・葛川から10球で三者凡退に終わった。ファウルは2番長谷川成哉(3年)の1球だけ。内野ゴロが2つで、葛川と捕手の森友の配球に上手く打ち取られた印象を受けた。立ち上がりの三者凡退の裏にある印象の差。それがこの後ゲームを動かす起点となる。
全試合コールド勝ちの履正社 隙を探った大阪桐蔭
一方の履正社は4回に3番宮崎新(3年)がヒットで出塁すると、犠打と進塁打で三塁まで進めて、6番上村輝(3年)がタイムリーで1点を返した。ただ、この4回の攻撃で葛川に投げさせた球数は14球である。
両投手の球数は、回を重ねるごとにドンドン開いていった。大阪桐蔭が4点目を加えた6回を終えた時、葛川の75球に対して、東野は126球を投じていた。50球という大きな差。大阪桐蔭陣営が1年かけて練った東野対策の答えがこの数字に見られた。
履正社の「準決勝まで全試合コールド勝ち」という過程は、相手からすればつけこめる隙があるという認識を与えていたのかもしれない。その大きな要素が9イニングを一度も戦っていないこと。自チームからすれば、まったく問題のない要素でも、相手には違う捉え方をされる。それが人間の心理である。
捉え方という点では、大阪桐蔭陣営は『準決勝で東が先発した時点で、決勝の先発は東野』と絞りやすい状況だった。さらに右の阪本がコールドの過程で登板機会がほとんどなかったことも、相手に心理的な影響を与えている。自チームの戦い方と、相手から見る戦い方の差異。相手を読み合う心理の勝負も、ライバル対決ならではのものだった。
1年間大阪桐蔭に負けなくても、最後の勝負で勝てなかった履正社。この悔しい経験が来年のチームに受け継がれていくと期待したい。