バルセロナの新監督は誰になるのか=ビラノバ退任で浮上する2人の候補

再び病魔に襲われる

再び病魔に襲われ、退任を余儀なくされたビラノバ。チームに与えた衝撃は計り知れない 【Getty Images】

 フットボールの世界で頂点にたどり着けるのは一握りの人間しかいない。そして一度頂点に立った後、その地位を保ち続けることはさらに難しい。

 とりわけ選手時代にその名を轟かせた人間でない限り、ビッグクラブの監督を務めるチャンスはめったに巡ってこない。ジョセップ・グアルディオラのアシスタントを務めた後、昨季より世界最高のチームと言われるバルセロナの監督に就任したティト・ビラノバは、そのチャンスを手にしたわずかな人間の一人だった。

 だが彼は、リーガ・エスパニョーラを制し、史上最多の勝ち点100に並ぶ快挙を成し遂げながら、その職を常時全うすることができなかった。昨年12月に耳下腺(じかせん)腫瘍の再発が確認されて以降、ニューヨークで専門治療を受けなければならなかったからだ。

 しかし、ようやく病状が落ち着き、新シーズンに向けたチーム作りをスタートさせた矢先、彼は再び病魔に襲われた。2度目の再発を知らされた彼はクラブに対し、今後は監督業に100パーセント専念できないと伝えなければならなかった。

チームに与えた3つの動揺

 このタイミングでのビラノバの退任は、バルセロナにとって三重の動揺を与えた。1つは、下部組織の指導者時代を含め長年バルセロナのために働き、クラブにかかわるすべての人々から愛されてきた人物が病に倒れたことに対する動揺。2つ目は、肝腫瘍を乗り越え現役復帰を果たしながら、残留を望む本人の意思とは裏腹に退団を強いられたエリック・アビダルに続く無情な別れに対する動揺。そして3つ目は、すでにプレシーズンがスタートしたこの段階になり、昨季からの継続路線が保障されていたチーム作りの方向性に危険が生じたことに対する動揺である。

 またビラノバの電撃退任は、先日彼とジョゼップ・グアルディオラの関係悪化が明らかになった直後、かつグアルディオラ率いるバイエルン・ミュンヘンとバルセロナの親善試合を数日後に控えたタイミングで生じた。

 先日、グアルディオラは合宿先で行った会見にて、バルセロナの役員たちがビラノバの病気を利用して自身を攻撃してきたと訴え、そのことは一生忘れないとまで言って怒りをあらわにした。その後、サンドロ・ロセイ会長とスポーツディレクターのアンドニ・スビサレッタは事実を否定したものの、グアルディオラの怒りはバルセロナ関係者に驚きと動揺をもたらすことになった。

 この発言に対し、ビラノバは同じく会見ではっきりバルセロナの役員たちを擁護しただけでなく、友人であるグアルディオラがニューヨークで治療中の自身を訪ねて来なかったことに触れ、「自分なら違った行動をとった」と言って悲しんだこともまた、多くの関係者にとって驚きだった。

 こうした騒動の直後にビラノバの退任が発表されたことで、選手たちが精神的な影響を受けていることは間違いないだろう。そうでなくともネイマール以外に補強が進んでいない現状を見る限り、残り1か月を切ったシーズンの開幕を良い形で迎えられるかどうかは疑問だ。

 ジェラール・デウロフェウがエバートンへ、アンドレウ・フォンタスとラフィーニャはセルタへ貸し出され、ジョナタン・ドス・サントスも彼らに続こうとしている。ダビド・ビジャは信じられない安さでアトレティコ・マドリーへ移籍し、チアゴ・アルカンタラはバイエルン、エリック・アビダルはモナコへ去った。さらにセスク・ファブレガスにもプレミアリーグからの触手が伸びている一方、カンテラからトップチームに昇格した新戦力となり得る選手はセルジ・ロベルトしかいない。

 しかもビラノバの退任により、バルセロナはチアゴ・シウバやダビド・ルイス、ウェイン・ルーニーといったビッグネームの獲得どころではなく、プレー哲学の継続に加えてロッカールームにも受け入れられる新監督を早急に見つけ出す必要に迫られることになった。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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