寺川綾、究極の目標と現役への思い=世界水泳バルセロナ2013
28歳となったいまも進化を続ける寺川に、世界選手権への意気込みや、現役への思いを語ってもらった 【スポーツナビ】
そんな彼女が次に見据えるのはスペインのバルセロナで行われる世界選手権(競泳は7月28日〜8月4日開催)だ。ジャパンオープン後の壮行会で掲げたテーマは『極』という一文字。「選手として結果を出すために自分の泳ぎをもっと極めたい」という思いがこれには込められている。言わば究極の目標を追い求める寺川に、ロンドン五輪からの1年間を振り返ってもらいつつ、平井伯昌コーチに対する信頼、現役に懸ける思いなどを語ってもらった。
「メダル獲得は一瞬の出来事でした」
やはりうれしかったですね。ただ、本当に一瞬の出来事だったなと。楽しいことがすごく一瞬に感じるのと同じです。それでも一生懸命やったことで、結果が出せて良かったなと思っています。
――銅メダルの悔しさはありましたか?
タッチした瞬間はなかったんですが、表彰台に立ったとき、日の丸の国旗よりも2つ高く旗が上がって……。それを自分の目で見たときに悔しいと感じました。
――メダリストになってから、周囲の反応は変わりましたか?
私のことを知らなかった人も応援してくれるようになりましたね(笑)。この前も友人と買い物をしていたら、おばあさんに手をつかまれて「がんばってね」と突然言われました。ちょっとびっくりしたんですが、いろいろな人が応援してくれていると感じて、すごくうれしかったです。
――何でも以前はメダルを取るという目標は口にしなかったと聞きました。それがロンドン五輪前ははっきりと口にするようになりました。心境の変化があったのですか?
昔は言わされていた部分があったんです。誘導尋問みたいなものですね(笑)。そういうのに答えていただけでした。でもロンドン五輪では、心底メダルが欲しかったし、目指していたので、メダルの話になっても嫌な気持ちになることがなかったんです。だったら別に言っちゃってもいいかなと。
「平井先生は自分にとって絶対に欠かせない存在」
「自分にとって絶対に欠かせない存在」と平井コーチ(左)には大きな信頼を寄せている 【写真:北村大樹/アフロスポーツ】
皆が皆のことを考えて共に生活をしていました。「この選手はこうだから、レース前はこうしよう」と、そういう気の遣い方が自然にできていたので、とても居心地が良かったですね。やはり五輪に出る選手たちは、最高の状態で現地に行っていて、マイナスなことを考えないので、チームとしてすごく前向きな気持ちになっていたかなと。居心地が良過ぎて、このままずっと戦いたいなと思いましたね。
――平井コーチに師事するようになってかなりの年月がたちました。指導を受ける以前と以後で変わったことはありますか?
選手としてももちろん、人としてもなんですけど、年を取ったこともあるし、平井先生やチームメートの皆に成長させてもらっているなと感じています。
――平井コーチとは何度か口論になったことがあるとか
何回もあります(笑)。なぜそうなったのかいつも分からないんですけどね。2人ともスイッチが切り替わる瞬間があって、その場だけで終わっちゃう。だからズルズルは行かないですよ。ただ、自分が悪いと思ったら謝るし、悪くないと思ったら謝りません(笑)。
――寺川選手にとって平井コーチはどういう存在ですか?
その質問は答えに困ります(笑)。ただ、平井先生に教わっていなかったら五輪でメダルは取れなかったし、いまの自分があるか分からないので、感謝してもしきれないです。時にはけんかもしますけど、水泳に関して自分のことは先生が一番分かっていると思います。話さなくても分かることってあるじゃないですか。そういう感じで、自分がどう考えているかも全部分かっているし、うそをついてもすぐばれる。いまは絶対に欠かせない存在だと思います。
――具体的にこんなところがすごいという部分は?
選手にちゃんとした目標を持たせて、そこに行き着くための細かい計画をすべて立て、100パーセント納得させてからやる。それが平井先生のやり方です。コーチと選手の目標がずれていたらたどり着けない場所なので、それを一致させてやっていく部分がすごいなと。