アルゼンチンで異彩を放つニューウェルス=ポゼッションサッカーが成し遂げた功績
結果主義に相反するクラブの価値観
退団を発表したマルティーノ監督。混沌(こんとん)とするアルゼンチンフットボール界の現状に疲れたようだ 【写真:AP/アフロ】
昔から良質のフットボールを提供するクラブというイメージがあったニューウェルスは、これまでホルヘ・バルダーノ、フアン・シモン、ワルテル・サムエル、アベル・バルボ、ガブリエル・バティストゥータ、現役時代のマルティーノ、そしてリオネル・メッシ(12歳までではあるが)といったスター選手を何人も輩出してきた。またディエゴ・マラドーナ、リカルド・ローシャ、アリエル・オルテガといったスターたちも、そのシャツに袖を通した経験がある。
ホームスタジアムにビエルサの名がつけられたこともまた、このクラブの特徴を物語っている。選手としてニューウェルスでトップリーグデビューを果たした彼は、監督として90−91、91−92シーズンにリーグ優勝を果たし、リベルタドーレスでも決勝に進出した輝かしい実績を持つ(決勝ではテレ・サンターナ率いるサンパウロに敗れたが)。当時のチームは今もファンの語り草となっている。
当時のビエルサと同じく、マルティーノもまた来季は続投しないことを決断した。混沌(こんとん)としたアルゼンチンフットボール界の現状がもたらすストレスに疲弊した彼は、リベルタドーレスの結果がどうなろうとも退団する意思を固めていたのである。そしてクラブは、彼と同じく90年代にニューウェルスのピボーテとして活躍し、これまでユースチームを指揮していたアルフレド・ベルティを後任に据えることを決定した。
現役引退を検討しているエインセ、他国から多数のオファーを受けているスコッコをはじめ多数の選手がチームを去る可能性が高い現状、クラブにはいかにして戦力ダウンを避けるかという課題もある。だが昨季示した確固たるプレー哲学、ボールポゼッションと個々のテクニックを重視したスタイルが変わることはないはずだ。たとえそれが、同国のスタンダードとは相反するものであっても。
<了>
(翻訳:工藤拓)