鈴木聡美、狙うは「2年前のリベンジ」=世界水泳バルセロナ2013

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「パワーと持久力をつけることが課題」

ロンドン五輪では、日本女子の競泳選手として史上初となる1大会で3個のメダルを獲得。世界選手権に向けてのテーマは「2年前のリベンジ」だ 【Getty Images】

――今回の世界選手権で日本水泳連盟は「金メダルの獲得」を目標に掲げていましたが、金メダルを取るために足りないところはどういった部分になると思いますか?

 けっこう大きな課題ですよね。私の場合、平泳ぎは一番水の抵抗がある泳ぎですし、女子の選手で金メダルを取るのは難しいと言われています。体格の差でかなり結果が違ってくるので、もっとパワーをつけてしっかり持久力をつけるという課題があります。それは他の種目も関係してくるんじゃないかなと思います。やはり海外の選手は身長が高かったり、体つきも日本人とは違うので、その差は大きいのかなとは思いますね。

――日本選手権が終わって、新生チームジャパンになりました。新しい選手が加わって変わった面はありますか?

 いまは高校生や大学1年生の選手が代表の中に多いんですけど、彼らは練習においての考え方や志がその歳から上を向いているんです。私は代表入りしたのが遅かったので、日本のトップアスリートしての意識というものは分からなかったんですけど、そういったところはすごいなと思いました。

――メダリストになったことで環境面や周囲の目がだいぶ変わったと思いますが、変化を実感する部分はありますか?

 見られる立場になったというのはだいぶ変わったなと思います。普段生活しているだけでも、「あの人、鈴木さんじゃない」と小声で言われたりとか。やっぱり不慣れなので戸惑う部分はあります。でもそれだけ注目されているということで、良い方にとらえて、もっといい記録を出して日本に貢献したいなという気持ちは出てきましたね。

――注目されるがゆえに、不自由だなと思うことはありましたか?

 プライベートでいきなり話しかけられることは慣れないですね。

――何かびっくりしたエピソードは?

「写真いいですか?」とか「サインいいですか?」というお声がけはよくあります。あとは子供たちにまねされたこともありましたね。

――何をまねされたんですか?

 地元の水泳大会で、10歳以下の子供たちの平泳ぎの試合に、私がプレゼンターとして呼ばれていたんですね。それで平泳ぎの子供たちが泳ごうとすると合図があるじゃないですか。その瞬間に胸をたたいていたんです。たぶん五輪で見ていたんでしょうね。私がレース前に胸をたたいて手をたたく動作を、すごく優しく「ポポポポポン」とたたいて台に上っている子たちが何人もいたので、「うわぁ、まねされてる」って思いました(笑)。まさか小さい子たちがまねするなんて思っていなかったので、「五輪の影響はすごいんだな」と思いましたね。

「勝ちたいという意地が出てきました」

――4月の日本選手権や5月のジャパンオープンでは、50メートルと100メートルで優勝しました。しかし、ご自身では本来の泳ぎではないという感触だったとか?

 そうですね。日本選手権のときはもちろん練習不足だったというのがありました。ジャパンオープンは「日本選手権のときよりは練習ができている、だからタイムを出さないと」というプレッシャーを自分にかけてしまった部分がありました。だから泳ぎがすごく硬くて、なおかつ頑張っているけど進まないという一番悪い状態でした。「どこかで自分を落ち着かせなくちゃ」とは思いましたね。

――そうしたなかでも、50メートルと100メートルは勝っています。その要因は何だったのでしょう?

 勝ちたいという意地が出てきたのかなと。記録的には納得していないので、そこだけで勝ったのかなと思いますね。

――日本選手権でもジャパンオープンでも安定感が際立っていたように思います

 自分でも正直、タイムと順位には驚きましたね。力が落ちなかったという点では良かったと思うので、この現状を維持しながらしっかり4年後を見据えることができたらいいなと。

――その安定感はどこから来るのですか? いままで積み重ねてきた練習がモノをいっているのでしょうか?

 それはあると思います。やはり基礎的なものがしっかりしてきたので、少し練習が継続できなかったときでも、基礎は忘れていなかったし、練習量が増えてもしっかり対応ができていたのが一番の要因かなと思いますね。

「ドルフィンキックに関しても考えています」

――次のリオデジャネイロ五輪まで3年あります。今年は強化の1年目になりますが、この1年でどのレベルまで持っていきたいと考えていますか?

 毎年同じようなことを言っているんですけど、プル(腕のかき)の動作を見直しています。それを強化しつつ、フォーム改善にもつなげていこうかなと。あと、協議されているドルフィンキックに関しても、考えていきたいと思っています。私はドルフィンキックがあまり得意ではないので、そのときの対応をどうするかということもいまから考えていますね(編注:国際水泳連盟が、スタート後に潜水できる15メートルの間にドルフィンキックを何度でも行えるようルール変更を検討している)。

――今回の世界選手権の具体的な目標は?

 まずは最低限、決勝へ勝ち進むことですね。前回の世界選手権では100メートルが準決勝、200メートルが予選落ちだったので、しっかりと決勝に勝ち進んだうえで記録とメダルも狙っていきたいなと思っています。

――ライバルとして意識している選手はいますか?

 今回の世界選手権は出場しないようなんですが、米国のレベッカ(・ソニ)選手ですね(ロンドン五輪女子200メートル平泳ぎ金メダリスト)。日本では金藤理絵さん(Jaked)。同じ200メートルで今回は出ますけど、理絵さんがいるといないとでは自分のモチベーションが違うなと思いました。「負けたくないな」という思いもありますし、水泳の先輩として尊敬する部分もたくさんありますので、そういったところも見習いつつ、お互い切磋琢磨(せっさたくま)しながら頑張りたいなと思いました。

――渡部香生子選手(JSS立石/ロンドン五輪女子200メートル平泳ぎ代表)についてはどう思いますか?

 今回は200メートルの個人メドレーで代表入りしているんですけど、油断はできないかなと。私もいつ落ちるか分からないですし、彼女はまだ高校2年生です。これから上がってくる可能性は十分あります。あと、いま注目を集めている中学1年生の今井月選手(本巣SS)も、目標とする選手に私の名前を挙げたらしく、「本当に? 私よりもっと上の人はいるのに」と思いながらも、負けていられないなという気持ちはつねにあります。

――では最後に、あらためて世界選手権の意気込みについてお聞かせください

 どこまで五輪時の状態に戻せるかは分からないですけれども、いまの自分の力を精いっぱい出し切って、少しでも良い結果を出せるように頑張ります。ご声援よろしくお願いします。

<了>

(取材・大橋護良/スポーツナビ)

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