日本人若手、F1へのいばら道=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第9回

赤井邦彦/AUTOSPORTweb

目標はF1

シルバーストンで行われたAUTO GPで優勝を飾った佐藤公哉。彼にかかる期待は非常に大きい 【AUTO GP】

 若い芽を摘んではいけない。

 最近、ヨーロッパでレースを戦う若者たちの様子が、フェイスブックやツイッターといったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通して伝わってくる。SNSが今のように一般的でなかったひと昔前には考えられなかったことだ。正直言って驚いている。こんなに多くの若者がヨーロッパでレースに挑んでいるなんて、考えたこともなかった。それも、彼らは全員口をそろえて「目標はF1です」と言う。そう言い切る。そういう文言に当たると、驚くと同時に心配している。何を心配しているかと言えば、その目標が現実的なものかどうか、彼等は冷静に判断しているのかどうか、という点だ。

 こうした若者がいかにしてヨーロッパに戦いの場所を見つけたのか、興味あるところだ。少なくとも、日本でレースを続けていてもF1という目標に到達できないと考えたからだろう。その考えに反対するものではないが、現実はどうかといえば、海外に出てもF1が手の届くところにあるかどうかは別だ。そもそも、日本のレースでトップを取れないのに海外で通用するのかといえば、それはあやしい。

日本のレース界が抱えるジレンマ

 たしかに日本のレースは自動車メーカーの力が強く、その傘の下に入ることができなければ上のクラスに上れないというジレンマがある。しかも、自動車メーカーに認められてもF1には程遠い。ホンダがF1に出て来たあと(2015年以降)は変化が見られるかもしれないが、少なくとも現時点ではその可能性はない。どんなに実力があっても、スーパーGTかスーパーフォーミュラが限界だ。そういう現実を知るからか、多くの若者が独自にヨーロッパを目指すという手段に出る。

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著者プロフィール

赤井邦彦:世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

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