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李忠成とFC東京の“不幸なすれ違い”
完全移籍オファー辞退の真意

移籍によってステップアップを果たしてきた

完全移籍を求めたFC東京からのオファーを断り、退団した李忠成。次の移籍先は欧州のチームか
完全移籍を求めたFC東京からのオファーを断り、退団した李忠成。次の移籍先は欧州のチームか【Getty Images】

 ワールドカップ(W杯)アジア最終予選とコンフェデレーションズカップ(コンフェデ杯)の間に中断していたJ1が6日、再開した。

 FC東京は中断明け初戦となったJ1第14節のサンフレッチェ広島戦をルーカスの1トップで臨んだ。直前の週に渡邉千真が故障で離脱したからだ。もし李忠成がFC東京に残っていたら、ほぼ間違いなく先発の座を射止めていただろう。古巣・広島との対戦ということで注目もされたであろうし、視察に訪れた日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督の眼鏡にかなったかもしれない。そのままレギュラーポジションを奪うことに成功するという可能性もあった。


 では李は退団を早まったのだろうか?


 そうとは言いきれない。

 ジョブホッパーかキャリアビルダーかと問われれば、彼は間違いなく後者だ。李はここまで移籍によって自らのステージを上げてきた。


 ジュニアユースでは比較的自宅に近いJFLの横河武蔵野FCの下部組織に所属した。高校ではFC東京の下部組織でタイトルを獲得。2004年にはトップチームに昇格したが、当時チームを指揮していた原博実監督(現・日本サッカー協会技術委員長)が彼を起用することはなく、サテライトの試合に出ては左のウイングでの出場などにとどまり、わずか1年で退団。プロとしての下地は移籍先の柏レイソルで築いた。


 その後に移籍した広島では、佐藤寿人の故障を機に先発の機会を得た。チャンスをものにした李はリーグ戦でゴールを量産。活躍が認められ、日本代表入りを果たす。そして11年のアジアカップの決勝では日本をコンフェデ杯に導くスーパーゴールを決めたのはご存知の通りだ。


 イングランド移籍も失敗であったかのように言われているが、何も身の丈に合わないクラブへと移籍したわけではない。2部リーグに相当する、フットボールリーグ・チャンピオンシップに所属していたサウサンプトンに移籍。加入初年度は試合に出場していたのだから、その時点では問題ではない。成績が良く、チームがプレミアリーグに昇格したことが災いして出場機会を失った。そして、李は次の舞台に再びJリーグを選んだ。FC東京への復帰を果たすと、リーグ戦13試合に出場し、4得点の成績を残した。出場の機会を得ると、それに見合う分の活躍を披露した。

良しとしなかった準レギュラー扱い

 欧州のトップリーグにどれだけレベルの高い選手がいるのかを体感しての帰国。今回、FC東京を離れてもう1度海外でのプレーを模索することにしたのも、フットボールリーグ・チャンピオンシップを経験した手応えがあったからだ。


 プレミアリーグのクラブに移籍できればいいが、チャンピオンシップでもいい。チャンピオンシップのサッカーも十分レベルが高く、しかもそのなかで1シーズンとはいえ活躍した実績がある。過去を参照して「勝算」ありと見込んだ上での決断。


 もしあと1年、欧州で試合に出ながら経験を積むことができれば、確実に今後に向けての糧となるだろう。李忠成のキャリアを通して考えるなら、FC東京を出て再びイングランドでの挑戦を志すという判断は、間違っているとは言えないし、冷静なものであるとも思う。


 もともと4カ月間の短期契約で、期間満了時に契約を見直すのは初めから決まっていたことだったのだ。


 李はリーグ戦とカップ戦合わせて6得点をマークした。その期間は3月2日から5月25日までの3カ月弱。契約期間は6月30日までだったので、もしJリーグヤマザキナビスコカップ(ナビスコ杯)準々決勝に進出していた場合は2試合多くプレーできたかもしれないが、残念ながらFC東京は予選リーグで敗退。その機会は失われ、それ以上ゴールを重ねることはできなかった。チームが新潟県十日町キャンプに出発する前に、彼は離脱した。

 もっとも、ここまでの経緯を見れば、たとえチームがナビスコ杯準々決勝に進出していたとしても、李にそのナビスコ杯の2試合を戦うモチベーションは残っていなかっただろうが――。


 クラブは獲得資金を用意して完全移籍のオファーを出した。3カ月弱で一定の成果を残したことへの評価だった。準レギュラー扱い、途中出場が多いのにも関わらずコンスタントに得点し、アシストし、チャンスをつくる選手がいることは、チームにとっては間違いなく財産だ。


 ただし、その扱いを選手自身が納得するかどうかは別の話だ。契約が対等であるなら、選手の側にも「断る」権利を行使する、という判断はあり得る。


 昨季の渡邉千真は、AFCチャンピオンズリーグでは先発するがリーグ戦ではサブにまわり、あるいはサイドハーフで出場する準レギュラー扱いを受けながら、徐々にランコ・ポポヴィッチ監督のサッカーに適合。今季は1トップのレギュラーポジションを獲得した。


 しかし李はその準レギュラー扱いを良しとしなかった。

後藤勝

サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWeb/メールマガジン「トーキョーワッショイ!プレミアム」(http://www.targma.jp/wasshoi/)を随時更新。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊 http://www.kanzen.jp/book/b181705.html)がある。【Twitter】@TokyoWasshoi

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