あらためて考えるコンフェデ杯の過酷さ=コンフェデ杯通信2013(6月29日)
決勝の会場、リオデジャネイロに到着
リオの宿はファベーラ(貧民街)のすぐ近くにあった。気の遠くなるような坂道を登らなければならない 【宇都宮徹壱】
それにしても今回の移動は、かなり体力的にきつかった。疲労が蓄積しているところに、深夜発の3時間以上のフライトで、今大会の会場で最北にあるフォルタレーザから最南のリオまで、ほぼブラジルを縦断したことになる。3時間ちょっとあれば、羽田から上海くらいは飛べてしまう距離であり、今さらながらにブラジルという国の広大さを実感する。この国のスケール感を分かりやすく説明すると、日本の22.5倍であり、ロシアを除いたヨーロッパがすっぽり入る広さであり、南米大陸の実に半分を占めている。来年、いかに広大な国でワールドカップ(W杯)が開催されるのか、これでご理解いただけるだろう。
当然、移動による選手へのコンディションへのダメージは、それなりに覚悟しなければなるまい。明日(30日)の決勝に関して言えば、スペインは中2日のスケジュールにもかかわらず、フォルタレーザからリオへの大移動。一方のブラジルは中3日で、しかもベロオリゾンテからリオまではバスでも5時間くらいの距離だ。こうして考えると、ブラジルがグループAの1位抜けに固執していた理由がよく分かる。もし2位になっていたら、スペインと準決勝で対戦するはめになり、仮に勝利できたとしても、リオにたどり着いた時には相当に消耗していたはずだ。もっとも移動距離とは別に、もうひとつ考えなければならないのが日程の問題である。大会の今後のあり方を考える上では、こちらのほうがより重要であろう。
以前はもっと過酷だったコンフェデ杯の日程
イパネマの海岸を散策。あちこちでビーチサッカーに興じる人たちを見かけて「王国」の裾野を感じる 【宇都宮徹壱】
イタリアのプランデッリ監督は、スペインにPK戦の末に敗れた準決勝後の会見で、このように語っている。両チームの選手の健闘を称えつつも、今大会の日程について揶揄(やゆ)するニュアンスが感じられる。実際、今大会のイタリアはかなり気の毒な日程であった。グループリーグ3試合は、いずれも中2日。そのため2試合目の日本戦では、かなりの苦戦を強いられることとなった。3戦目から準決勝までは逆に中4日あったが、ブラジル戦では負傷者が相次ぎ、その対応に追われた。そしてスペインとの死闘を終えたら、またしても中2日でサルバトーレでウルグアイとの3位決定戦に臨まなければならない。
FIFA(国際サッカー連盟)の公式大会で、中2日の強行日程がまかり通るというのは、何とも解せない話に思われるかもしれない。ただし、かつてのコンフェデ杯は今以上に厳しい日程で行われていたことは留意すべきであろう。日本も出場した2003年大会(フランス)では、このようなスケジュールで日本戦が行われていたのである。
6月18日、対ニュージーランド戦
6月20日、対フランス戦
6月22日、対コロンビア戦
何と、1日おきの超過密スケジュールだったのである(しかもこの年のヨーロッパは記録的な猛暑に見舞われていた)。そしてこの大会で、カメルーン代表のマルク=ビビアン・フォエが、準決勝のコロンビア戦で心臓発作を起こして突然倒れ、そのまま帰らぬ人となった。このフォエの死を契機として、大会日程の見直しが行われ、併せて2年に一度の開催が4年に一度の開催に改められ、コンフェデ杯はより「W杯のプレ大会」としての性格を強めてゆくことになる。
今大会は、移動距離がこれまで以上に長くなったため、より日程の過密さがクローズアップされた感はある。それでも、選手のパフォーマンスとコンディションの維持を考えるなら、試合の間隔はせめて中3日は欲しいところだ。もちろん、コンフェデ杯の期間をこれ以上伸ばすことは、現在のカレンダーでは難しい。ならば単純に試合数を減らすことで、選手の負担を軽減することはできないだろうか。たとえばグループリーグを中3日で行い、準決勝をなくして、グループ1位同士が決勝、2位同士が3位決定戦を行うというのはどうだろう。個人的には、十分に検討の余地はあると思うのだが。
いずれにせよ、長かったコンフェデ杯も明日の3位決定戦と決勝を残すのみとなった。勝敗の行方とは別に、日程的に不利な状況にあるイタリアとスペインが、どれだけのパフォーマンスを見せてくれるのかにも注目したい。
<了>
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