ラグビー日本代表GM・岩渕氏が語る「ジャパンの課題と可能性」
ウェールズに歴史的な勝利を飾った数時間前、秩父宮ラグビー場で岩渕GM(写真)によるトークショーが行われた 【スポーツナビ】
番外編の今回は図らずも記念すべき、イベントとなった。ウェールズ戦当日、決戦を数時間後に控えた秩父宮ラグビー場の一室で、熱い議論が展開された。日本代表の課題は何か、今後どんな強化を図っていくべきか。熱心なファンは日本代表GMの言葉に耳を傾け、強化方針について疑問をぶつけた。参加者の思いはひとつ、すべてはジャパンが強くなるために――。その熱が選手たちに伝わったのか、2013年6月15日、日本代表は強豪ウェールズに歴史的勝利を飾り、日本ラグビー史に新たな1ページを刻んだ。
2015年W杯までに500キャップを
「6月8日時点のジャパンの23人のキャップ数は384キャップ。これがワールドカップ(W杯)に出場するような国だとその2倍くらい。日本の経験不足は否めません。厳しいテストマッチを何試合経験しているか。その経験がチーム力に表れます。日本としては15年W杯までに23人の合計を500キャップに上げることを目標としています。これは1人あたり約25キャップが目安。タフなゲームを年間を通じて増やしていかなければいけません。
試合数に関しては、2012年に13試合をこなしました。ここにはアジア五カ国対抗も含まれるため、ランキング20位以内との対戦となると9試合しかやっていません。今年はウェールズと2試合、パシフィック・ネーションズカップ(PNC)も1試合増えました。秋には4試合を予定しており、何とか14試合を戦いたいと思っています。これが2010年は10試合しかできませんでした。日本の場合は、トップレベルとのテストマッチが重要。何とかその数を増やして、選手たちには15年W杯までに経験値を積んでもらいたいですね」
世界の強豪と伍して戦うには、フィジカルコンタクトは避けられない。日本の特長であるスタミナ、技術を生かしつつ、パワーでも対抗できるようにしたい。そのためには、スクラムで負けない強さ、重さを身につける必要がある。FWを強化するにあたって、その指標のひとつになるのが体重だ。
「2012年のチーム結成時、FW8人の体重合計は800キロ前半でした。それが(6月8日の)ウェールズ戦では874キロまで増えました。1人あたり4キロくらい増えたことになります。世界を見れば、ウェールズが889キロ、フィジーは898キロと、まだまだ差があります。フィジカルである程度対抗できないとどうしても戦えません。ここで重要なのは、単純に体重を増やせばいいわけではない、ということです。目指すのは、世界トップレベルの動き、速さを維持しながらの体重増。これは非常に難しいですが、大きな課題として取り組んでいきます」
セットプレーの精度を上げ、ミスを減らす
岩渕GMの話を熱心に聞く参加者たち。日本代表が強くなることを願う、多くのラグビー愛好家が集まった 【スポーツナビ】
「セットプレーの課題は先週のウェールズ戦でも露呈しました。マイボールのスクラムやラインアウトでつなげないのは苦しい。昨年秋の欧州遠征、ルーマニアとグルジアとの試合でもスクラムがあまり良くなかったのですが、これは勝敗を分けるポイントです。もうひとつ、大きいのはミス。勝負どころでミスをするか、しないか。ウェールズ戦はチャンスが多い試合でしたが、ミスでモノにできませんでした。この1週間でそれをどこまで修正できているか、注視すべき点ですね」
ウェールズ戦の意味については、ことさら強調するまでもなく、ラグビーファンであれば誰しも理解していることだろう。ただ、強化という視点から見ると、その重要性はよりはっきりとする。結果によって、直近のテストマッチの相手が変わってくるからだ。強豪とのタフなゲームを行うには、ランキングを上げなければ願ってもかなわない。
「秋のテストマッチはまだ対戦相手が決まっていません。これはランキングによって決まります。さらに、秋のテストマッチでいいゲームができないとランキングが上がらないので、その先のマッチメークも難しくなります。幸い、日本は6月にウェールズと2試合できましたが、2014年にも引き続きいいゲームを組めるようにしたいと考えています。そのためにも、今日のウェールズ戦は内容はもちろん、勝つことが求められます」