“無用”のFIA国際法廷=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第8回
フラストレーションのたまる判決
FIAの国際法定はもはや無用と化している。事なかれ主義で判決が下され、すでに機能していない 【LAT Photographic】
F1テスト事件に関してはいまさら説明はいらないだろう。メルセデス、ピレリがスペインGPの後、禁止されている今年のクルマを使ってのテストを行ったというものだ。FIAの許可があったとか、ピレリが全チームを誘ったけれど来たのはメルセデスだけだったとか、とにかく自分たちに都合の良いような話が飛び交った。そこでFIAの国際裁判所が出てきて、「我々が裁定をしてやろう」ということになったわけだ。
機械に判定させた方がいい!
この判決は、おそらくどういう裁定をしたらいいのか分からなくなった裁判官たちが、こうやっておけば問題はないという逃げ道を見つけて下したものに違いない。とにかく、「メルセデスへの厳しい裁定は自動車メーカーを怒らせることになるし、ピレリへの厳罰は来年のタイヤを失うきっかけになるかもしれない。そうした結論が予想できる判決はとても私たちには下せない」と裁判官たちは考えたのだろう。事なかれ主義の典型だ。
そもそもFIA国際法廷なんてシステム、機能しないんだから作らなくても良かった。もしそれを本気で機能させようとしたら、FIAとは完全に切り離して設置すべきだった。モータースポーツとは関係ない人物を連れてきて裁判官に任命したとしても、結局はFIAの息がかかった判決に導かれる。それは裁判官も人間だということの証明だが、こういう場合は人間じゃなくて機械に判定させた方がいいかもしれない。