“無用”のFIA国際法廷=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第8回

赤井邦彦/AUTOSPORTweb

フラストレーションのたまる判決

FIAの国際法定はもはや無用と化している。事なかれ主義で判決が下され、すでに機能していない 【LAT Photographic】

 こういうのってどこにでもあるんだろうが、こうも露骨にやられて、それに何も言えないというのはフラストレーションがたまるばかりだ。何のことかと言えばF1テスト事件の後始末。F1テスト事件とは、メルセデスとピレリが今年のクルマを使って禁止されているシーズン中のテストを行ったこと。それに対してFIA(国際自動車連盟)の裁判で下された判決が、まるで茶番も茶番。あきれてモノが言えないとはこのことだ。

 F1テスト事件に関してはいまさら説明はいらないだろう。メルセデス、ピレリがスペインGPの後、禁止されている今年のクルマを使ってのテストを行ったというものだ。FIAの許可があったとか、ピレリが全チームを誘ったけれど来たのはメルセデスだけだったとか、とにかく自分たちに都合の良いような話が飛び交った。そこでFIAの国際裁判所が出てきて、「我々が裁定をしてやろう」ということになったわけだ。

機械に判定させた方がいい!

 ところがこのFIA裁判、厳しい判決が下るようなアプローチを用意しておいて、いざふたを開けると何もおとがめがなかった。メルセデスには戒告と7月に行われる新人テストへの参加を禁止、ピレリには戒告。たったこれだけ。

 この判決は、おそらくどういう裁定をしたらいいのか分からなくなった裁判官たちが、こうやっておけば問題はないという逃げ道を見つけて下したものに違いない。とにかく、「メルセデスへの厳しい裁定は自動車メーカーを怒らせることになるし、ピレリへの厳罰は来年のタイヤを失うきっかけになるかもしれない。そうした結論が予想できる判決はとても私たちには下せない」と裁判官たちは考えたのだろう。事なかれ主義の典型だ。

 そもそもFIA国際法廷なんてシステム、機能しないんだから作らなくても良かった。もしそれを本気で機能させようとしたら、FIAとは完全に切り離して設置すべきだった。モータースポーツとは関係ない人物を連れてきて裁判官に任命したとしても、結局はFIAの息がかかった判決に導かれる。それは裁判官も人間だということの証明だが、こういう場合は人間じゃなくて機械に判定させた方がいいかもしれない。

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著者プロフィール

赤井邦彦:世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

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