W杯まであと1年、ブラジルの確かな成長
新システム構築の鍵はネイマール

セレソン再建へ、大胆な方針転換

コンフェデ杯でブラジルは、ネイマール(中央)を生かした4-3-3システムで確かな成長を見せている
コンフェデ杯でブラジルは、ネイマール(中央)を生かした4-3-3システムで確かな成長を見せている【写真:ロイター/アフロ】

 ブラジルでの輝かしいキャリアを持つ生真面目な名将、ルイス・フェリペ・スコラーリ監督の下でプロフェッショナルなチーム作りを行ってきたブラジル代表。現在行われているコンフェデレーションズカップ(コンフェデ杯)にて近年“セレソン”が失っていたチームとして戦うスタイルを取り戻すとともに、3連勝でグループ首位通過を決めた。


 3年前のワールドカップ(W杯)南アフリカ大会を失意で終えた後、ブラジルフットボール協会(CBF)はマノ・メネゼスの手腕に信頼を置き、彼にセレソンの指揮を任せた。だが、その後もセレソンは失敗に終わった。2011年のコパ・アメリカなどで結果を出せなかっただけでなく、一時も成長の兆しを見せることがなかった。


 コパ・アメリカの敗退を境に批判の集中砲火を受けはじめたメネゼスは、結局セレソンをフットボール界の強豪国として、またコンフェデ杯と来年行われるW杯のホスト国に相応しいチームとして、機能させることができなかった。


 そこでCBFは大胆な方針転換に打って出た。すでにやり直すための時間はほとんどなく、重大な決断を下さねばならなかった昨年末、過去に輝かしい成功を手にした経験豊富な2人のベテランにセレソンの命運を託したのである。その2人が94年のW杯米国大会の優勝監督であるカルロス・アルベルト・パレイラ、そして02年のW杯日韓大会で優勝し、06年のドイツ大会ではポルトガルを躍進に導いたスコラーリだった。

興味深い4−3−3システム

 スコラーリ監督とパレイラは全く異なる性格を持つ男だ。前者は選手の性格を熟知した心理学者の側面を持つ指導者であり、後者はスポーツディレクターとしてピッチから離れた位置での仕事に専念している。2人はそれぞれの仕事には干渉せず、お互いをリスペクトしながらW杯という唯一の目標に向かって歩みをそろえている。


 2人は就任後、まずセレソンに真剣さを植え付けるとともに、スポンサーやフットボール界の周囲をうろつく人間たちからスター選手たちを遠ざけた。


 スコラーリ監督は大方の予想を裏切り、カカーもロナウジーニョも今大会に招集しなかった。そして攻撃の中心に据えたネイマールに信頼と責任を与え、フレッジ、フッキと3トップを形成する非常に興味深い4−3−3のシステムを考案した。


 今大会のブラジルには多くの才能ある選手がいるものの、アルゼンチンのリオネル・メッシ、スペインのシャビ・エルナンデスやアンドレス・イニエスタ、ウルグアイのルイス・スアレスやエディンソン・カバーニ、イタリアのアンドレア・ピルロのような、1人で試合を決められるような選手はいない――ネイマールはワールドクラスのアタッカーに成長し得る資質を持った唯一の選手であり、来季バルセロナでそのプレーを磨いていくことだろう。スコラーリ監督はその点を理解した上、堅固な守備と安定したゲームコントロール、そして高い得点力を誇るシステムを見出したのである。


 またスコラーリ監督は先日、連日ブラジル各地で政府に対して行われているデモ騒動について質問を受けた際、「やるべきことは働くこと」と答えた。多くの人はこの言葉をデモ参加者に対するメッセージだと誤解したが、彼が言いたかったのはチームが周囲の騒音に気を取られることなく、自分たちの仕事に集中すべきだということだった。パレイラも同様に、成功をつかむ方程式は「栄養補給とコンディショニング+集中力」だと語っている。

セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky
セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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