石川遼には現実を、松山英樹には夢を……=2つの才能がエール交換、価値ある2日間

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石川と松山のプロ初競演

松山(左)と石川のプロ初競演は明暗分かれる結果となったが、この経験がそれぞれの今後の糧になることを期待したい 【写真は共同】

 折り畳み式の小さな踏み台を手にした、女性ギャラリーたちが作る鈴なりの列。ほんの数カ月前までは日常的な光景だったのに、なんだか少し懐かしい気持ちになった。6月20〜23日、茨城県の宍戸ヒルズカントリークラブ・西コースで開催された初夏のメジャー大会「日本ゴルフツアー選手権 Shishido Hills」。石川遼がまた、多くの観衆を引き連れて日本のトーナメントに戻ってきた。

 主戦場を米国に移した2013年シーズン。初の国内ツアー出場に、周囲は色めきだっていた。ただ、それは石川の存在だけではない。同い年のもうひとつの輝く才能、松山英樹と同じ舞台に立ったからだ。予選ラウンド2日間は、昨年大会を制した藤本佳則を含めて同組に。2人の直接対決はアマチュア時代にはあったが、互いにプロとして競演するのは初めてだった。

初日から明暗分かれる結果に

 初日、2日目は悪天候の平日にもかかわらず、昨年比1.8倍の約9,000人のギャラリーが来場。結果は、両雄が今シーズンここまで歩んできた道のりを具現化するような結果となった。国内ツアーで2勝、賞金ランクトップを独走する松山は、前週の「全米オープン」で10位に食い込むなど、開幕からその存在感を際立たせてきた。そして、この第1ラウンドでも、疲れや体調不良の影響など微塵(みじん)も感じさせず「67」。いきなり、サラリと2位タイでスタートを決めたのである。

 一方、PGAツアーで苦戦が続く石川。初日の“崩壊”を誰が予想しただろうか。2番ホールでのダブルボギーに始まり、2発のOBを放つなど「80」の大叩き。決して松山の存在を意識したわけではないだろうが、とりわけパッティングに苦しんだ。スタートはなんと最下位タイ。重苦しい雰囲気が漂ったのは言うまでもない。

 それでも2日目、石川のひとつの決断が功を奏し、挽回した。これまで愛用してきた“感性重視”のL字マレット型パターを、オートマチックに打てる大型ヘッドのネオマレット型にチェンジ。すると、たちまち躍動した。8バーディ、1ボギーの猛チャージを見せて「65」。カットラインに2ストローク及ばなかったものの、この一年で飛躍的に進化した多彩なショットを存分に生かすプレーを披露し、この日「72」とスコアを伸ばせなかった松山に、せめてもの意地を見せた。

メジャー制覇の糧になれば

 結果で言えば、直接対決は石川の屈辱的な大敗に終わった。しかし、束の間の日本での戦いで、意識するライバルの動きを見られたのは大きい。松山のプレーは、基本的な身体能力や優れたスイングバランスだけではなく、シンプルな攻め方や、やはりグリーン上での戦いの重要性を再認識させるには十分だった。

 一方で、松山は「あのショットならば、向こう(米ツアー)で通用するんだと思う。ショットの精度が全然違った。一日でああやってくるのがすごい」と話した。まだ発展途上ではあるが、引き出しの多いショットやアプローチの数々には、石川がこれまで海外で味わってきた挫折と経験が詰まっていた。

 周囲が期待した激しいつばぜり合いは、次の機会にお預けとなった。しかし36ホールで終わってしまった競演にも、少なからず意味を持たせたい。松山は石川に「現実」を気づかせ、石川は松山に「夢」を描かせた。ふたつの才能は、異なる形でエールを交換した。

 小さくとも、互いの目標であるメジャー制覇に向かう糧となれば、わずか2日間の戦いにも価値はある。

<了>

(文・桂川洋一)
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