石川遼には現実を、松山英樹には夢を……=2つの才能がエール交換、価値ある2日間
石川と松山のプロ初競演
松山(左)と石川のプロ初競演は明暗分かれる結果となったが、この経験がそれぞれの今後の糧になることを期待したい 【写真は共同】
主戦場を米国に移した2013年シーズン。初の国内ツアー出場に、周囲は色めきだっていた。ただ、それは石川の存在だけではない。同い年のもうひとつの輝く才能、松山英樹と同じ舞台に立ったからだ。予選ラウンド2日間は、昨年大会を制した藤本佳則を含めて同組に。2人の直接対決はアマチュア時代にはあったが、互いにプロとして競演するのは初めてだった。
初日から明暗分かれる結果に
一方、PGAツアーで苦戦が続く石川。初日の“崩壊”を誰が予想しただろうか。2番ホールでのダブルボギーに始まり、2発のOBを放つなど「80」の大叩き。決して松山の存在を意識したわけではないだろうが、とりわけパッティングに苦しんだ。スタートはなんと最下位タイ。重苦しい雰囲気が漂ったのは言うまでもない。
それでも2日目、石川のひとつの決断が功を奏し、挽回した。これまで愛用してきた“感性重視”のL字マレット型パターを、オートマチックに打てる大型ヘッドのネオマレット型にチェンジ。すると、たちまち躍動した。8バーディ、1ボギーの猛チャージを見せて「65」。カットラインに2ストローク及ばなかったものの、この一年で飛躍的に進化した多彩なショットを存分に生かすプレーを披露し、この日「72」とスコアを伸ばせなかった松山に、せめてもの意地を見せた。
メジャー制覇の糧になれば
一方で、松山は「あのショットならば、向こう(米ツアー)で通用するんだと思う。ショットの精度が全然違った。一日でああやってくるのがすごい」と話した。まだ発展途上ではあるが、引き出しの多いショットやアプローチの数々には、石川がこれまで海外で味わってきた挫折と経験が詰まっていた。
周囲が期待した激しいつばぜり合いは、次の機会にお預けとなった。しかし36ホールで終わってしまった競演にも、少なからず意味を持たせたい。松山は石川に「現実」を気づかせ、石川は松山に「夢」を描かせた。ふたつの才能は、異なる形でエールを交換した。
小さくとも、互いの目標であるメジャー制覇に向かう糧となれば、わずか2日間の戦いにも価値はある。
<了>
(文・桂川洋一)
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