日本代表に求められる「時間帯への意識」=イタリア戦を三浦淳寛氏が分析
日本はまたしても立ち上がりと終盤に失点。「時間帯への意識」が今後はより求められる 【Getty Images】
0−3で完敗した開幕戦のブラジル戦とは違い、序盤から積極的にプレッシャーをかけ、主導権を握った日本だったが、ワールドカップ優勝4回を誇る強豪・イタリアから金星を挙げるには至らなかった。ブラジル戦、イタリア戦で見えた日本と強豪国の違いは一体何だったのか。元日本代表の三浦淳寛氏に分析してもらった。
勝てる試合をみすみす落とした
ただし、失点のシーンがもったいなかったです。2点がセットプレー、もう1点はミスから生まれたものです。1点リードで迎えた後半の入りが受けに回ってしまったことが悔やまれます。前半は(アンドレア・)ピルロや(マリオ・)バロテッリにボールが入ったらすぐにプレッシャーをかけるといった約束事が徹底されていました。しかし、後半はリードしていたこともあって、落ち着いて試合に入ろうという意識が見られたんです。そうしたら案の定と言うべきか、立て続けに失点してしまった。前半の始めと同じように積極的に前から行くべきだったと思います。
イタリア相手に主導権を握っていたのに、勝てる試合をみすみす落としてしまった印象です。今日勝てればグループリーグは突破できたと個人的には思っています。香川はスペースをうまく見つけて、良い場所で受けて相手の脅威になっていましたし、本田もキープ力を見せつけていました。チャンスを多く作っていましたし、失点も防げるものばかりでした。強豪国に隙を見せたら確実にやられます。逆に言うと、イタリアは内容が悪いながらも、勝ち切ったその勝負強さはさすがだなと思います。
イタリアは中2日でコンディション的にも厳しかった。中盤でもプレスが効いていませんでしたし、日本はけっこう自由にボールを持つことができました。そういう状況でも大事な場面ではきっちりと決めてくる。4点目なんてもう体力が残っていなかったはずなのに隙を逃さなかった。そこが最終的には勝負を分けました。
日本とイタリアに技術的、戦術的な差はほとんどありません。空中戦の強さは負けますが、欧州のチーム相手には俊敏性や足元のテクニックといった日本の特性が発揮しやすいんです。差があるとすれば、それは「時間帯への意識」です。日本はブラジル戦で前後半の立ち上がりと、終了間際にゴールを奪われています。そしてイタリア戦も後半の立ち上がりと、前後半の終盤に失点しています。欧州や南米の強豪国は、こうした時間帯に生まれる隙を巧みに突いてくるんです。今大会の失点はすべて立ち上がりと終了間際に集中しているので、その怖さを実感したんじゃないかと思います。強豪国に勝つためには隙を見せずに、90分間、集中力を継続させる必要があります。今後は、セーフティーに行かないといけないときなど、選手全員が「時間帯への意識」を共有し合って、個人個人の課題としてほしいと思います。
メキシコ戦は消化試合ではない
メキシコ戦では多少メンバーが代わることが予想されます。ここまで出場機会がなかった選手たちにはぜひアピールの場としてほしいし、積極的に勝ちに行ってもらいたいですね。個人的に期待しているのは清武(弘嗣)です。イタリア戦は出番がなかったですし、彼にとっては、ロンドン五輪の準決勝でメキシコに敗れているので、雪辱を果たす機会にもなると思います。ドイツで培った経験をぜひ生かしてほしいですね。
イタリア戦は敗れこそしましたが、内容は非常に良かったと個人的には思っています。今後への可能性を感じさせる試合でした。大事なのはこれを継続することができるか。そういった意味でメキシコ戦は真価が問われる一戦になると思います。攻撃ではイタリア戦で見せたショートパスをつなぎながら、積極的に仕掛ける意識を持つこと。守備では時間帯を意識しながら、隙を見せないこと。この2試合で出た課題を修正しながら、最終戦を大事に戦ってほしいと思います。
<了>
大分県大分市出身の元プロサッカー選手。現役時代は横浜F、横浜FM、東京Vなどで活躍。複数のポジションをこなユーティリティープレーヤーであり、FKの名手としても知られている。日本代表として国際Aマッチ25試合1得点、2006年W杯・ドイツ大会のアジア予選を戦った。現在は解説者として活躍している。
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