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サトウ新体制で初勝利 変わりはじめた男子バレー
指揮官が掲げた3つのテーマ
初勝利後、越川(右)と握手を交わすサトウ監督
初勝利後、越川(右)と握手を交わすサトウ監督【坂本清】

 ゲーリー・サトウ新監督率いる全日本男子が大きな一歩を踏み出した。

 6月1日に始まったワールドリーグでは、韓国、オランダを相手に4連敗スタート。しかし今年初めてのホームゲームとなった6月15日の小牧大会で、それまで3勝1敗でC組1位だったフィンランドをセットカウント3−1で破り、サトウ新体制での初勝利を挙げた。


 両チーム最多の19得点を挙げた福澤達哉(パナソニック)は試合後、「新体制のもと1勝できたことにほっとしています。今、僕たちはゲーリーを信じて、一つ一つのことをやっている最中。昨年オリンピックに行けなかったのは、僕たちに何かが足りなかったからだと思う。その何かを、ゲーリーが僕たちに与えてくれると思うし、僕たちも変わっていかなければいけない」と力強く語った。


 16日も、フィンランドに第1セットを取られてからの逆転勝ちで2連勝を飾り、日本は手応えを確かなものとした。

勝つために必要な「コート中央からの攻撃」

セッターの近藤(写真左奥)。福澤らアタッカー陣とのコミュニケーションで、プレーの修正を図った
セッターの近藤(写真左奥)。福澤らアタッカー陣とのコミュニケーションで、プレーの修正を図った【坂本清】

 男女を通じて初の外国籍の代表監督となったサトウ新監督のもと、選手たちはさまざまな新しい取り組みを求められている。やるべきことが山積する中で、指揮官がワールドリーグに臨むにあたって重点課題として掲げたテーマが、「コート中央のゾーンからの攻撃(クイック、バックアタック)を多く使う」、「新しいサーブレシーブフォームの習得」、そして2月の就任会見以来ずっと言い続けている「状況判断に優れたスマートなバレー」の3つだった。


 ただ、約1週間という短い準備期間でワールドリーグに臨んだため、最初の4戦はこれらのテーマをコート上で実現できずにいた。

 セッターとスパイカーのコンビネーションが合っていないことが、一番のネックだった。そのため中央のゾーンからの打数もなかなか増えなかった。開幕戦から先発出場を続けるセッターの近藤茂(東レ)は、「日本が勝つためには、サイドに偏るのではなく中央のゾーンをどれだけ使えるかが勝負なので、そこは最初の4試合も意識していたんですが、コンビの精度の問題もあって、『ここで使って大丈夫かな?』と思ってしまい、自分が選択できなかった」と振り返る。

 ワールドリーグ前日の会場練習でもコンビが合わない場面が多く、福澤は、「お互いのイメージを共有することが大事なので、映像をしっかり見て、コート外でできることは100パーセントやって試合に臨み、あとはコートの中で修正したい」と語っていた。


 その夜、福澤はその言葉を実行に移した。近藤に声を掛け、2人で一緒に、これまでのコンビが合った時と合わなかった時の映像を見比べ、その違いに気付いた。

「コンビが合っているときは、近藤さんの準備が素早くて、近藤さんの手にボールが入るところが見えているから、こちらがタイミングをとりやすかった。特にパイプ攻撃(コート中央のゾーンからのバックアタック)の時は、僕らはセッターがボールにタッチするのを見て踏み切るので。逆に合わないときは、ボールの出所が見づらかった。だから、できるだけ早くスパイカー側に手を見せてほしいということを確認して、試合に臨みました」と福澤。

両チーム最多の19得点を挙げた福澤
両チーム最多の19得点を挙げた福澤【坂本清】

 15日のフィンランド戦で近藤は、とにかくボールの下に入るのを速くして、スパイカーに自分のハンドリングが見えやすい上げ方を意識した。その結果、福澤はタイミングを合わせやすくなり、思い切って踏み込めるようになったと言う。

 試合の序盤、福澤のパイプ攻撃でリズムを作った近藤は、その後、山村宏太、鈴木寛史(ともにサントリー)のクイックや、越川優のパイプ攻撃を織り交ぜていく。福澤だけでなく、山村ともコンビの精度が目に見えて良くなり、「近藤に気付きがあったみたいで、今日はすごく打ちやすかった」と振り返った。相手ブロックを真ん中に引きつけることができたため、サイド攻撃がノーマークになる場面もあった。

 2−6と出遅れた第4セットも、福澤のパイプを軸に立て直し、このセットの逆転につなげた。福澤はこの日7本すべてのパイプを決めた。


 この試合、日本チームの全攻撃の中で、コート中央のゾーンからの攻撃は約35%を占めた。チームとしては40%程度を理想としているようだが、サーブレシーブ成功率が29.85%と低く、中央を使える場面が限られていたことを考えると大きな割合と言える。近藤は安堵(あんど)の表情を浮かべながら言った。

「後ろから(パイプのトスを)呼ぶ声がすごく大きかったので、それに自然に反応してしまいました。真ん中のみんなが遅れずにどんどん入ってきてくれたので、強気で上げられるようになった。今日は自分の中では、『ほとんど真ん中しか使っていないな』というぐらいのイメージだったけど、試合後スタッフから、『うん、今日は普通だな』と言われた(苦笑)。あれぐらい使ってもいいんだなと分かりました」


 サトウ監督が常に選手たちに言い続けていることは、互いにコミュニケーションを密に取り、考えること。その通りに、選手自らが行動を起こして一つ壁を乗り越え、指揮官が与えたテーマをクリアするために前進した。

米虫紀子

大阪府生まれ。大学卒業後、広告会社にコピーライターとして勤務したのち、フリーのライターに。野球、バレーボールを中心に取材を続ける。『Number』(文藝春秋)、『月刊バレーボール』(日本文化出版)、『プロ野球ai』(日刊スポーツ出版社)、『バボちゃんネット』などに執筆。著書に『ブラジルバレーを最強にした「人」と「システム」』(東邦出版)。

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