トップランク社と契約した村田諒太の未来

杉浦大介

五輪金メダリストは自動的に“スター候補”

トップランク社との契約会見では、世界最高峰のプロモーターの1人であるボブ・アラム氏と同席した村田 【Getty Images】

「トップランク社がロンドン五輪金メダリストの日本人ボクサーと契約」というニュースは、アメリカのボクシング界でもそれなりに話題になった。
 村田諒太が6月10日(日本時間)に米国ロサンゼルスで行なった会見後には、「ESPN.com」「Fightnews.com」「BoxingScene.com」といった主要媒体が写真付きで報道。あくまでボクシング・メディア、ファンの間だけという限定付きだが、“リョータ・ムラタ”の名は知るものは確実に増えたと言ってい。
「特別なものを持っている選手。五輪での試合振りを見て圧倒されたし、プロらしいスタイルだ。プロでも速いペースで段階を踏ませ、彼が3年以内で世界タイトルを争うことを予期している」
 トップランク社のウェブサイト上で流されたビデオ内で、カギを握るプロモーターのボブ・アラム氏もそうコメントしていた。
 国籍を問わず、五輪での金メダル後にアメリカでプロ入りするボクサーは自動的に“スター候補”とみなされるもの。それだけに、村田がいずれ行うアメリカでのデビュー戦はかなりの注目を集めることになるだろう。

トップランク社にとっても願ってもない素材

 日本では“アメリカ最大のプロモーション会社”と形容されることが多いトップランク社だが、最近はオスカー・デラホーヤ氏がトップを務めるゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)にやや押され気味ではある。
 特にここ1年で、マニー・パッキャオ、ノニト・ドネア、フリオ・セサール・チャベス・ジュニアらの看板選手が次々と敗北。フロイド・メイウェザー(正式にはGBP所属ではないが、緊密な提携関係にある)、バーナード・ホプキンスといったアメリカ人のスター選手の大半はGBPが抱えており、トップランクは国内での人材を欠き始めているのが現状である。
 だからなのか、あるいは以前からのプランを貫いているのか、トップランクの視線はここに来てアジアに向いている。4月6日には五輪ライトフライ級で2大会連続金メダリストの中国人ボクサー鄒市明(ゾウ・シミン)をマカオでデビューさせ、7月27日にも当地で第2戦を開催予定。11月23日には同じマカオで、パッキャオの復帰戦(元WBA世界ライト級王者のブランドン・リオスが相手)も組まれている。

 トップランク社が村田と契約を交わしたのは、今まさにアジア進出を開始したそのタイミングだった。日本で自前カードを開催するつもりはアラムにもないだろうが、日本人の金の卵は中国、シンガポールでの興行の目玉の1つに成り得る。
 アジアで開催されるトップランク社の主催試合はアメリカでもテレビ中継されるだけに、そこで知名度が上がれば、近未来にラスベガスでスター街道に乗せることも不可能ではない。さまざまな可能性が考えられるという意味で、甘いマスクとカリスマ性も備えた村田はトップランク社側にとっても願ってもない素材だったのだろう。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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