岡崎慎司がイラク戦で見せつけた真骨頂=定位置死守へ、アウエーで輝く勝負強さ
ようやく手にした悪循環を断ち切る白星
試合終了間際に値千金のゴールを決めた岡崎(左)。アウエーの厳しい環境で輝きを放った 【Getty Images】
本田圭佑ら主力数人を欠いたチームは序盤から受けに回った。今野泰幸や伊野波雅彦ら守備陣の奮闘は光ったが、攻撃陣はカウンターを繰り出すのが精いっぱいの状況が続く。アルベルト・ザッケローニ監督(ザック監督)も中村憲剛、前田遼一と持てる駒を次々と送り出し、攻撃の活性化を図ろうとしたが、どうしてもゴールをこじ開けられない。4戦未勝利という停滞感を抱えたまま、コンフェデレーションズカップ(コンフェデ杯)に挑まざるを得なくなりそうだった。
ところが、後半36分、イラクの左FWアラー・アブドゥルが伊野波の頭を蹴って2枚目のイエローカードにより退場すると、11対10の数的優位に立ち流れが変わり始める。そして時計の針が後半45分を指そうかという時、一瞬のスキから決勝弾が生まれる。相手がつなぎ損ねたボールを拾い、ドリブルで一気に中央を駆け上がった岡崎慎司が、左サイドのスペースに全速力で走る遠藤保仁へパス。彼にマークが引き寄せられた瞬間、リターンが送られた。これをペナルティーエリア内で受けた背番号9が倒れ込みながらゴール。3月のヨルダン戦(アンマン)から続いた悪循環を断ち切る白星をようやく手に入れた。
指揮官も認める岡崎の勝ちへの執着心
しかも、2010年南アフリカW杯出場権を手にした09年6月のウズベキスタン戦(タシケント)、今回の最終予選の大きなターニングポイントとなった12年11月のオマーン戦(マスカット)での劇的決勝弾など、この男は勝負の懸かったアウエーの過酷な環境にめっぽう強い。今回のイラク戦でも時間が経過するにつれて足が止まり、ミスを連発する選手が増える中、むしろ岡崎は輝きを増した。
彼のライバル一番手と目される清武弘嗣が早々とベンチに下がり、主力のポジションを脅かそうと意気込む細貝萌や酒井宏樹ら控え組が苦しむ傍らで、岡崎は「自分は主力組のボーダーラインに立っている」というすさまじい切迫感を持って90分間を駆け抜けた。その泥臭さと勝負強さ、タフさを控えメンバーは見習うべきである。そういうメンタリティーをつねに押し出せるからこそ、ザック監督も彼をスタメンから外そうとしないのだ。
「技術がある選手が増える中でも、監督が自分のようなタイプを置いてくれるのは、勝ちへの執着心を認めてくれているからだと思う。イラク戦でも憲剛さんが出てきた時、自分が変えられてもおかしくないと思った。それでもピッチに立たせ続けてくれた以上、監督の期待に応えるしかなかった」と岡崎は指揮官の信頼に感謝した。値千金のゴールという結果を残してくれた彼に、ザック監督も心から満足したのではないだろうか。