朝原氏らが解説 桐生と山縣、勝負を分けたのは!?=日本選手権・男子100m総括

構成:スポーツナビ

男子100メートル決勝、10秒11で初優勝した山縣(左)と2位の桐生。ともに10秒0台の記録を持つ二人の勝敗を分けたものとは!? 【野口卓也】

 陸上の世界選手権(8月10日〜18日、モスクワ)の代表選考会を兼ねた日本選手権は8日、東京・味の素スタジアムで行われ、男子100メートル決勝では、山縣亮太(慶応大)が参加標準記録Aを突破する10秒11で初優勝した。日本人初の9秒台突入はならなかったが、今回の優勝で選考条件を満たして代表内定を決めた。
 日本歴代2位の10秒01の記録を持つ桐生祥秀(京都・洛南高)も、10秒25で2位に入り代表に内定した。
 なお、大会5連覇が懸かっていた江里口匡史(大阪ガス)は、予選で敗退した。

 スポーツナビでは、2008年北京五輪400メートルリレー銅メダリストで現在は大阪ガス陸上競技部コーチを務める朝原宣治氏ら識者3人に、今大会の男子100メートルの総括と、夢の9秒台突入の可能性について話を聞いた。

桐生、世界の舞台へ 先輩の山縣から学びを(朝原宣治/大阪ガス陸上競技部コーチ)

 予選の時から感じていたことですが、決勝レースでも山縣の力がひとつ抜けていたなという感じでしたね。桐生については、山縣にどこまでついていけるかなという思いで見ていました。3位は高瀬(慧/富士通)でしたので、結果は順当だったと思います。4位の塚原(直貴/富士通)は、久しぶりに良いところまで戻ってきているなと思いました。
 今回の山縣には飛び出しの力強さ、中間での伸びがありました。桐生のことで注目されましたし、9秒台の重圧もあったかと思いますが、その中で素晴らしい走りでしたね。
 
 期待された9秒台は出ませんでした。(桐生が10秒01を出した4月の)織田記念国際の会場は、トラックの反発もすごいし風も良くて最高のスタジアムなのですが、それと比較すると(今大会の)味の素スタジアムは劣る面もあります。ただ、世界で戦う選手には関係のないことです。最高の条件ではないこの会場で山縣が出した10秒11は、素晴らしい記録だと思います。

 桐生も、織田記念国際の時はもっと走りがのびのびしていました。ただ、今大会の予選で、スタートが出遅れたのを見て、連戦で疲れているのかなと思いました。試合が続くとトレーニングもできませんし、日本選手権にコンディションを合わせるのが難しかったのかもしれません。

 世界選手権の代表に2人とも内定しました。もちろん狙うのは決勝ですが、決勝への壁は大会を追うごとに高くなっています。山縣の調子が良くても難しいです。まずは準決勝に進むこと。最低10秒0台でないと決勝へは行けません。山縣には、度胸、集中力、そして体調を整えてやってきて欲しいですね。
 一方の桐生は、世界の大舞台は初めてでしょうから、先輩の山縣に行動とか勝利に向かっていくためのやり方を学んでほしい。二人は良いライバル関係ですから。

 (教え子の)江里口は今回、記録も順位も両方狙わないといけない状況だったので、イチかバチかでハードなトレーニングを積みましたが、うまくはまりませんでした。山縣と並んで走るようでないと勝負にならないのですが、レース途中でパニックになってしまったようで、走りがバラバラになってしまいました。精神的な弱さだと思います。そこをリセットした新しい江里口を見せたいと思います。

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