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負のスパイラル脱却を狙うオランダ2部
成否分ける再編成後の新フォーマット

大きく再編成される来季の2部リーグ

大きく再編成されるオランダ2部。降格し、来季は2部で戦う大津の所属するVVVなど20チームで構成される予定だ
大きく再編成されるオランダ2部。降格し、来季は2部で戦う大津の所属するVVVなど20チームで構成される予定だ【VI-Images via Getty Images】

 新シーズンからオランダ2部リーグが大きく再編成される。昨季、16チームで終了した同リーグだが、トップクラッセ(オランダ3部)の準優勝チームであるアヒレス29、アヤックスとトゥエンテのリザーブチームが加わる。アイントホーフェン市が認めれば、PSVのリザーブチームも参加することになり、来季のオランダ2部リーグは20チームによって構成されることになる。


 きっかけは今年1月にAGOVVが、3月にフェーンダムが破産し、シーズン途中にリーグから抹消されたことによる。18チームでスタートした昨季のオランダ2部リーグは、17チーム、さらに16チームへと参加チーム数を減らしていく変則的なものとなってしまった。


 収入を減らしたくない各チームは、新シーズンを18チームで始める意向だった。ヨーロッパの多くの国なら3部リーグの上位チームを昇格させればつじつまを合わせることができる。一応、オランダにも“トップクラッセ”という3部リーグがあり、2部と3部の間で入れ替えが行われることになっているが、これは建前。トップクラッセの上位チームは、2部リーグへの昇格を拒むことができる。

アマチュアが独自の文化を築いているオランダ

 トップクラッセは2010年に誕生した、オランダアマチュアサッカー界のトップリーグだ。それまでのオランダはプロリーグ(1部リーグ、2部リーグ)とアマチュアリーグが独立した存在になっており、両者の入れ替えが行われていなかった。つまり、多くの国のサッカー界を支えているピラミッド構造が、オランダにはなかったのである。プロのサッカーチームは、例え2部リーグの最下位になっても3部降格がない、ぬるま湯的な構造になっていた。


 そこを正すため、KNVB(オランダサッカー協会)は、トップクラッセを“セミプロリーグ”として発足させ、2部・3部リーグ間の入れ替え交流を図ろうとした。しかし、KNVBは3部リーグの優勝・準優勝チームへの昇格義務を2015−16シーズンまで先延ばしにした。


 オランダではアマチュアサッカーが独自の文化を築いており、プロリーグへの昇格に意義を見いだすクラブが皆無だった。トップクラッセが発足した10−11シーズンは、準優勝したFCオスが2部リーグに昇格したが、彼らは前年、2部リーグ最下位になって降格した。そして、トップクラッセで優勝したアイセルメアフォーヘルスは昇格を拒んだ。また翌11−12シーズンもスパーケンブルフ(優勝)、アヒレス29(準優勝)が昇格を拒否してトップクラッセに残った。

カットワイクが2部昇格を拒むわけ

アヤックスのリザーブチームも2部リーグへの参加が決定。プロを相手にどれだけのプレーを見せられるのか
アヤックスのリザーブチームも2部リーグへの参加が決定。プロを相手にどれだけのプレーを見せられるのか【VI-Images via Getty Images】

 構成チームが16になったことにより、オランダ2部リーグ側はトップクラッセの12−13シーズンで優勝したカットワイクと準優勝のアヒレス29に「新シーズンから昇格してほしい」と懇願した。彼らに提示された条件は『スタジアムをプロ基準に合わせる必要はない』『選手とのプロ契約は必要ない』『今後2シーズン、エールディビジ(1部)昇格もなく、トップクラッセへの降格もない』という甘いものだった。この条件に「どうせ15−16シーズンから昇格は義務になるんだし、それならば」とアヒレス29は話に乗ったが、カットワイクは断った。


 アヒレス29はトップクラッセ日曜日リーグ、カットワイクはトップクラッセ土曜日リーグである。オランダのアマチュアサッカー界は、どのカテゴリーも土曜日リーグと日曜日リーグに分かれている。この背景には、クラブによっては日曜日を休息日にしたいという宗教的、もしくは慣習的な意味合いもあるのだ。


 ディルク・カイト(フェネルバフチェ)が育った町として知られるカットワイクは、かなり保守的な土地でもある。近年、オランダ2部リーグは毎週金曜日の夜を開催日にしていたが、新シーズンから各クラブが希望する日を優先して試合を開催できる。例えば大津祐樹が所属するVVVは金曜日20時キックオフを希望している。

 カットワイクも土曜日開催を希望すればいいのだが、アウエーの試合となるとそうともいかない。クラブ首脳陣は「われわれは絶対、日曜日に試合をしない。また平日も無理だ。うちの選手たちには仕事もある」と土曜日以外の試合を頑に拒否し、トップクラッセに留まることに決めた。

 逆に日曜日チームが、土曜日に試合をするのは垣根が低い。アヒレス29は新シーズンのホームゲームを土曜日18時45分キックオフで開催しようとしている。

リザーブチームの2部参加の意義

 また新シーズンから、アヤックスとトゥエンテのリザーブチームが参加することになった。フェイエノールトのリザーブチームは経費がかかることを理由に参加しなかった。カットワイクがトップクラッセ残留を決めたことにより、PSVリザーブチームも2部リーグ参加が確実視されているが、ホームタウンのアイントホーフェン市が「市内にPSV(エールディビジ)、FCアイントホーフェン(2部リーグ)、PSV・FCアイントホーフェン女子チーム(ベネリーグ)と3つのプロチームがあるのに、リザーブチームまでプロリーグに参加したら警備の手配ができなくなる」とゴーサインを出してない。

 

 リザーブチームが2部リーグに参加することになったのは、『エールディビジ・ライブ(オランダリーグの独占放映権を持つテレビ局)』の新株主となったフォックスの意向が強い。トップクラブのタレントたちは番組コンテンツとして魅力的なのだ。とりわけアヤックスのネームバリューは大きい。昨季からアヤックスは女子チームを作り、発足したばかりのベネリーグに参加したが、“アヤックス”というブランドはリーグに彩りを添えた。

 リザーブチームはアヒレス29同様、昇格・降格の権利を持たない上、選手たちはトップチームとの掛け持ちも可能だ。そのほか、リザーブチームに与えられた条件は、トップチームで15試合に出場したらリザームチームでプレーできない。23歳以下の選手と16人以上プロ契約しないといけない。オーバーエージはフィールドプレイヤー3人+GK。同じ週にトップチームとリザーブチームを掛け持ちできない、などである。


 来週中にオランダ2部リーグは新シーズンの日程を発表することになっている。もしPSVリザーブチームの参加が自治体から認められないようだと、新加盟チーム探しは時間切れとなり19チームによるイレギュラーなリーグになってしまう。ハーレム(10年破産)、RBC(11年破産)、AGOVV、フェーンダムと破産が相次ぎ16チームまで減ってしまったオランダ2部リーグ。今もなお、いくつかのチームが「あそこは危ないのでは……」と囁かれている。せっかくのサッカークラブが消えていくのを見るのは寂しいものだ。新フォーマットの成功によって、何とかオランダ2部リーグの負のスパイラルに歯止めがかかってほしいものだ。

  

<了>

中田徹
中田徹

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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