ザック監督「本田の交代は考えた」=W杯アジア最終予選 豪州戦後会見

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W杯出場を決め、サポーターの声援に応えるザッケローニ監督=埼玉スタジアム 【共同】

 サッカー日本代表は4日、2014年ワールドカップ(W杯)・ブラジル大会の出場を決めた。埼玉スタジアムで行われたアジア最終予選のオーストラリア代表戦で1−1と引き分け、世界最速で5大会連続5度目のW杯切符を手にした。引き分け以上で本大会出場が決まる日本は82分に先制を許したが、試合終了間際にPKを獲得。これを本田圭佑が豪快に蹴り込み、同点に追いついた。

 試合後、日本のアルベルト・ザッケローニ監督は「10歳は年を取った気分だ」と、ユーモアを交えながら、苦労して勝ち取ったW杯出場を喜んだ。また、土壇場で価千金のPKを決めた本田については「2つのクオリティーを兼ね備えている」と、その重要性をあらためて強調した。

本田は2つのクオリティーを兼ね備えている

 ジャージ姿で申し訳ない。事情があって(笑)。率直な気持ちから申し上げると、10歳は年を取った気分だ。それでも非常にうれしい。チームの内容的にも非常に良かったと思うし、主導権を握って勝ちにいこうという気持ちと内容で戦ってくれた。オーストラリアは国際的な経験があり、フィジカルが強く、アジアでもトップレベルのチーム。そのチームに対して、こうした戦いができて良かったと思っている。とはいえ、なかなか簡単にいかず、相手が引いてブロックを作る戦い方をしたことでスペースが見つからず、見つかっても向こうのフィジカルに押し込まれる場面もあった。

 前半、特に25分くらいまではウチのペースでチャンスを演出できたと思うが、そこで決めきれず、ゴールにならないと逆にピンチを招く展開になってしまう。本田のペースが少し落ちてきたところで交代を考えたが、空中戦のことなどを考えて彼を外さなかった。結局、栗原(勇蔵)というチョイスで、香川(真司)をトップ下、長友(佑都)をひとつ前の左サイドに持ってくることで、彼のスピードを生かすことを考えた。そこでチームの走力のバロメーターもプラスになったのだが、偶然に近い形でゴールを奪われてしまった。あのゴールは、個人的にはほとんど偶然のゴールだったと思う。リードされてしまったが、それでもチームとしてもあきらめず、またサポーターの皆さんの後押しもあり、相手陣内で迫力のある攻撃を続けることができたことが同点につながったと思う。この試合、もし負けで終わっていれば、それは偽りの結果だったと思う。

――前半途中からカウンターを受けて、後半から少なくなった。ハーフタイムの指示は?(大住良之/フリーランス)

 前半はそういう形だったので、ハーフタイムの段階でその状況になったら、ディフェンスラインを下げて対応しようと具体的な指示を出した。相手の狙いは、フィジカルが強いメンバーで後ろを固めて、ボールを奪った瞬間に前線に出すカウンターの形であったり、サイドチェンジからのカウンターの形だったと思う。ディフェンスラインには、必ずサイドバックのどちらかが残って、センターバック2枚プラス1枚で、3枚の形でリスクマネジメントをすること、あとはビルドアップのところで不用意なパスをしないことを指示した。

――監督の個人的なキャリアの中で、今回の結果はどういう意味があるか。また本田はどういう意味でチームに違いをもたらすことができる選手なのか?(オーストラリア人記者)

 まずは本田について答えると、彼は2つのクオリティーを兼ね備えている。ひとつはチーム内に多くいるのだが、強いパーソナリティーを持っていること。もうひとつは日本人離れしたフィジカルの強さがあり、ボールが収まるということ。記憶に間違いがなければ、彼は12年11月を最後に、今日まで90分間プレーしていなかったのではないか。

 それから監督としてのキャリアの意味というところでは、日本に呼ばれたのはW杯出場権を獲得するためであり、今日それを決めることができた。ただそれだけの話だ。わたしはセリエAでの長い経験もある。その間にUEFAカップやチャンピオンズリーグでも多くの試合を経験することができたし、アジアカップにも参加できた。あとは南米選手権に出場する可能性もあったし、今度はコンフェデレーションズカップ(コンフェデ杯)にも出場する。W杯だけが足りなかったが(出場権を獲得したので)、あとはユーロ(欧州選手権)だけだ(笑)。ただし、参加するだけでは満足できない。このコンフェデ杯とW杯でも、いい戦いをしたいという思いは強い。そのためにも、向上心を持ってやっていきたい。

日本が素晴らしいから、次の仕事先を探すのは難しい

――次の目標はコンフェデ杯だろうが、同じグループにイタリアがいる。どういうメンバーで臨むのか?(イタリア人記者)

 コンフェデ杯の前に1試合W杯予選が残っているので、その試合も大切に戦いたい。そこで考えないといけないのは、20日間ほど選手と一緒に過ごすことができる。自分たちの理想がどこにあるのか、現実がどこにあるのかということは個人的には把握しているつもりなので、理想の姿に向けて課題の修正なり向上なりをしていきたい。

――就任から3年経つが、これまでで一番苦しかった時期はいつか?

 あまり考えたくない(笑)。日本ではとても快適に、いい生活を送ることができている。日本代表(監督の任期)を終えたあと、わたしはどこに行けばいいのか。当然、プロの世界だから、何が起こるか分からないが、日本の長所や素晴らしさを把握した上で、よそに目を向けるのは難しいのではないかと思う。試合後にピッチを一周しながらテクニカルスタッフと話したのだが、これだけのサポーターに囲まれてしまうと、次の仕事先を探すのは難しいと思う。

――今日、W杯出場を決めるまでの2年間で、チームとしてどう成長したか。また監督としてはどう変わったか?

 このチームのベースは、運良く就任してすぐにアジアカップがあったので、そこである程度は築くことができた。当時は、10年のW杯で結果を残したメンバーもいたし、その前の予選でいい仕事をした1つ前のグループもいたが、そこから世代交代を図ったのがアジアカップで、非常に難しい作業ではあった。

 そのころから比べると、今はより縦を突けるボールが多くなったし、相手を飛ばせるようなパスも増えてきた。サイドの使い方もある程度の整理がついたし、以前よりもチャンスを演出できるようになった。しかもピンチに陥らずに、チャンスを作れるようになった。ここ数日、スタッフとも話をしたのだが、わたしが就任してから今日の試合まで、失点に関してはほぼ形が決まっていて、3つがオウンゴールだ。今日の失点もオウンゴールではないものの、似たような感じだと思う。また、数的有利でありながらも、カウンターで失点を食らってしまうケースがある。それでもより多くの得点を取って失点が少ない、バランスのとれたいいチームと言えるのではないか。ただやはり、これだけチャンスを作っているので、ゴールの確率を高めることが今後の課題だと思っている。

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